河戸 良佑
独学で絵を描いていたら、いつの間にかイラストレーターに。2015年にPacific Crest Trail、2017年にContinental Divid Trail、2019年にAppalachian Trailをスルーハイク。アメリカで歩きながら絵を描いていたので、トレイルネームはスケッチ。
インスタグラム アカウント: Ryosuke Kawato(@ryosuke_iwashi)
79g
¥12,000 +Tax
はじめに
わずか78gの、これまでにないほど極薄・超軽量のシャツを作りました。
通気性に優れたパーテックス・カンタムエアは濡れても瞬時に乾き、衣服内に外気が循環しやすいフィッティングは炎天下も快適。一方、襟には立てて留められる独自のギミックを設け、強風時や寒冷時は首元を寒さから守ります。
ベースレイヤーやミドルレイヤーの上に着ればウインドシェルに、素肌に着て袖をまくればTシャツ代わりにと、変幻自在の使い方が可能です。
2021年モデルよりサイズを見直し、よりゆったりとしたシルエットになりました。
カラーバリエーション
スペック
Made in Fukushima, Japan
Material:
Pertex Quantum Air (100% NYLON) 48g/㎡
Weight:
69g(Size XS)
79g(Size S)
84g(Size M)
88g(Size L)
94g(Size XL)
Size:
UNISEX | XS / S / M / L / XL
制作ノート
夏目彰(山と道)
年を取るにつれ、普段の生活でシャツを着ることが多くなった。そうなると、山でもシャツが着たくなってくる。
メリノウールのベースレイヤーに超軽量のウインドシェル、もしくは透湿と通気に優れたレインシェルという組み合わせが、ウルトラライト・ハイキング的には正しい選択だろう。だが、いつも同じ格好で山に入っていても飽きてしまうし、ハイキングはもっと自由でよいと思う。というか、そう考えることにした。
ともあれ、いざ山で自分がどんなシャツを着たいのかを考えてみると、山での機能性や安全性を考えてメリノウールのベースレイヤーを選んできた自分としては、それよりも快適性や性能が劣るものをわざわざ着たいとは思えなかった。
Illustration: Jerry Ukai
普通の化繊100%のシャツは暑そうだし、ウールに比べれば臭くなるだろうし、魅力的に思えなかった。また、アウトドアブランドのものに多い過剰にデザインされたシャツもあまり好きではなかった。
そうして、メリノウールなど数種類の素材でシャツの試作をはじめたのは、2年ほど前だろうか。当初は単に「山でシャツが着たい」という理由からはじまったもの作りではあったが、数十回に及ぶ試作と変更を得て、山の行動着としてのシャツの機能性も見えてきた。
まず、シャツは織物なので、カットソーのようなニット生地に対して耐風性・耐久性に優れている(ただしこのUL Shirtはその極薄さゆえに、耐久性が優れているとは言い難いが)。少し大きめのサイズを選べば服の中で空気がまわり、行動中の熱気も換気しやすい。さらに暑ければボタンを全て開いて熱気を外に出すことができるなど体温調節機能にも秀でているし、襟を立てれば首もとの紫外線対策にもなる。
素材に関しては、当初の本命であったメリノウール100%のシャツはさすがに快適な着心地に手応えを感じたが、試作で用いていたものは重量200g/m²と決して軽い生地ではなかったため、秋から冬にかけては問題は無いが、夏にはやはり暑く感じた。ウール好きの自分としてはそれで進めたいという気持ちも強かったが、どこか心の中で、すっきりと「これだ!」という答えを得られなかった。
メリノウールの他にも数種類の素材でシャツの試作を進めるうちに、山と道のAlpha Anorakの表生地に採用している生地重量が50g/m²と軽量なパーテックス・カンタムエアを使うことを思いついた。それまではウールやバンブーなど天然繊維にこだわっていたが、軽さに特化するなら化繊100%でも良いかもしれないと思い始めたのだった。
この素材でシャツを作りたいと考えたときに、はじめに想像したのは、上半身裸で山を駆け巡るランナーやハイカーの姿だった。上半身裸で行動するのは気持ち良いが、山道具を作る自分としては、山の強烈な紫外線や風は大丈夫なのかと気になってしまう。
けれど、シャツであれば、これらの問題点はクリアできると思った。山で必要な機能を満たしつつ、裸感覚で着れるシャツ。極薄で軽量なカンタムエアであれば、まさに山を裸で行動しているような着心地のシャツを作れるのではないかと考えた。
でき上がった試作品は予想通り劇的に軽く、手にとった多くの人が驚いた。まさに「天女の羽衣」のような軽さ(古いたとえ話で恐縮だが、着てみればわかるはずだ)だった。
唯一、気になったのは消臭性だった。ナイロン100%なのでウールやバンブーのような消臭性は期待できない。山で臭い服を着て行動するのは避けたかった自分としては危惧していたが、そんな問題は、実際に試作品をテストしていくなかで杞憂であることがわかった。このUL Shirtは軽量性だけでなく、「超速乾」という魅力も備えていたのだ。
洗ってもタオルと一緒に絞るだけで大半の水気が飛び、干さなくとも着て歩いていれば乾いてしまう。これなら旅の途中に川や水場に遭遇したらさっと洗い、そのまま着て歩き続けることができる。
もちろん、極薄生地ゆえに耐久性は必ずしも優れているとはいえない。生地が薄いぶん汗もあまり吸ってくれないし、これ1枚で稜線で風雨に晒されたら、危険な場合もあるかもしれない。ある意味、UL Shirtは長所と短所がはっきりとしたトリッキーな道具(衣類)であり、無条件で万人に勧められるものではないことも事実だ。
けれど、僕はこのシャツを着るたびに、暑い太陽が照りつける長い長いトレイルを歩いていくことを想像する。そんな想像を共有できる人には、絶対にお勧めだ。
ロングトレイルからのレポート
山と道JOURNALSで『コンチネンタルディバイドトレイル放浪記』を連載していただいたトレイルネーム”Sketch”こと河戸良佑さんが、総距離3500kmに及ぶアメリカのアパラチアントレイルを2019年にスルーハイクした際、開発中だったUL Shirt(Short Sleeve)を使用していただきました。以下は河戸さんが1600kmほど歩いた時点でのレポートです。
*山と道JOURNALSでは現在、河戸さんのアパラチアントレイルの旅のレポート『臭くて暑くて底抜けに笑うアパラチアントレイル』を連載中です。
写真提供:河戸良佑(以下同)
①使用状況
アメリカのロング・ディスタンス・トレイルのアパラチアン・トレイルで約3ヶ月間、ほぼ毎日使用。歩行距離は1600kmほど。
②良い点
アパラチアン・トレイルはジメジメと蒸し暑く、常に衣服は汗で濡れ、泥で汚れている。
ある時、小川のほとりで休憩をした際、ほとんど汗でできていると言ってもいいほどグジョグジョになったシャツを川で軽く洗って絞り、木に干しておくと、休憩が終わる頃には既に乾いていて、サラリとした袖に腕を通すことができた。
また、このシャツは畳むとメガネケースに入りそうなほど小さくなり、あまりにも軽量なので、「これは嵩張るが持って行くべきかどうか」などと悩む必要が無い。いつもバッグに忍ばせ、何か体を動かす機会があろうものならば、サッとこのシャツを羽織り、次の瞬間には駆け回っている、そんな無邪気な人に私はなりたい。
③気になる点
濡れると肌に張り付き、ときおり引っ張られるような感覚があるのが少し気になる。ずっと全身が濡れ続ける環境には向かないだろう。
今回のハイクにおいては、傘との組み合わせがとても良かった。天気が崩れ始めたら傘をさし、雨がやんだら傘をたたんでそのまま歩く。すると濡れていた箇所も体温ですぐに乾いてしまう。
④その他雑感
3ヶ月間ハードに使用して、破れ・ほつれなどはなかったが、バックパックのショルダーベルトに付けたスマートフォンを入れるポーチのベルクロとのスレにより、生地表面が損傷してしまった。
気になる人はバックパックを背負う前にスレが起こりそうな箇所を点検しておくのも良いのかもしれない。
独学で絵を描いていたら、いつの間にかイラストレーターに。2015年にPacific Crest Trail、2017年にContinental Divid Trail、2019年にAppalachian Trailをスルーハイク。アメリカで歩きながら絵を描いていたので、トレイルネームはスケッチ。
インスタグラム アカウント: Ryosuke Kawato(@ryosuke_iwashi)
機能とデザイン
わずか78g(Size S)。Tシャツよりも軽く、着ていることを忘れるような着心地です。
その要因は、高強力ナイロン糸を高密度で織り上げ、生地重量約50g/m2と軽量ながら高い生地強度と通気性を持つパーテックス・カンタムエアにあります。
UL Shirtのユニークさは、幅広い状況に対応可能な汎用性にあります。それを可能にしているのは、極薄・超軽量素材のパーテックス・カンタムエアと、「シャツ」というベーシックなデザインです。
袖をまくって半袖シャツのように着用したり、ベース/ミッドレイヤーと組み合わせてウインドシャツとして着用したり、1着で様々な活用方法が可能です。
袖を上腕までまくっても窮屈でないため、素肌の上に直接着用し袖をまくればTシャツ感覚で着用できます。
下に半袖のベースレイヤーを着用した状態で前を開け袖をまくれば、一気に換気して体をクールダウンできます。
長袖のミッドレイヤーの上に着用すれば、一般的なウインドシェルのように活用できます。
たたむと手のひらに収まるほどコンパクトになります。シワがつきにくくどんなポケットにも入るので、山行時や旅行時の着替えとしても非常に有用です。
強風下や肌寒い早朝や夕暮など、山では首元を保温したいと思う場面は多いです。そこで山と道オリジナルのギミックとして、襟を立ててボタンで留められるようにしました。非常にシンプルなデザインですが保温や防風の他、首の日焼け対策にも有効です。
濡れても絞るだけでほぼ乾いてしまうので、トレイルでも気軽に水洗いできます。
上図はUL Shirtと各社の主要なベースレイヤーや山と道のメリノウール、一般的な綿のシャツ等と脱水15分後の生地内の水分率を比較したものです。水分率は低いほど速乾性が高いと言えますが、UL Shirtの脱水15分後の水分率1.5%はほぼ乾いていることを示します。
UL Shirtは速乾性に特に優れたキャプリーン・クールライトウェイト・シャツには一歩及ばぬものの、一般的な高い速乾性能を持つ化繊素材のベースレイヤーに比べても大幅に水分率が低いことがわかります。
たたむと手のひらに収まるほどコンパクトで軽量なUL Shirtは、ベースレイヤーの上に羽織るウインドシャツとしても、下山後の着替えとしても活躍します。
素材のパーテックス・カンタムエアはさらりとした肌触りで、優れた速乾性能や通気性と相まって快適な着心地を保ちます。
下山後に鎌倉「VANAVASA BEER+GALLEY」で一杯。
シャツの素材として多く用いられている織物は、縦糸と横糸を組み込んだ構成のため織り目がタイトに詰まっており、ベースレイヤーで一般的に用いられる編物と比べ、同重量の同素材であれば防風性が高く、乾燥がはやく、耐久性に優れる等の特徴があります。
その上で山と道ではシャツの機能性の本質を、織物ならではの防風性の高さと、前開きボタンが付いていることで換気性が良く、衣服内に外気が循環しやすいことと捉えました。
そこでスナップボタンを採用することにより素早い開閉を可能にし、さらにワイドなフィッティングとすることで高い換気性を確保しました。
袖には腕の動きを妨げないよう、アームホールを脇下に向かって広く取ったピボットスリーブを採用。襟は台襟を廃した開襟状の平折襟にすることで首に熱がこもらないようにすると同時に、襟裏にボタンを配置し、強風時には襟を立てて留めて風を凌げるようにすることで、幅広い温度域に対応しました。
台襟のない開襟型の襟は暑い時も首元に熱がこもらず、Tシャツのような感覚で着ることができます。
スナップボタンで行動中もスピーディな開閉が可能です。
袖は腕の動きを妨げないよう、アームホールを脇下に向かって広く取ったピボットスリーブを採用しました。
裾両脇にスリットを入れ、後ろ身頃を少し長く取りました。袖の剣ボロにはボタンを設けず、袖をまくりやすくしました。
背面にはタックを入れより腕を動きやすくしました。またフックなどにかけられるよう、ループを設けました。
素材
急変する天候や激しい気温の寒暖差、突風や強烈な日差しなど、過酷な山の環境では、通気性と防風性という相反する特性を高い次元で両立することが求められます。UL Shirtに採用したパーテックス・カンタムエアは20デニールで織り上げ、超軽量ながらも優れた強度と通気性を持ちます。
Material:
Pertex Quantum Air 48g/㎡ (100% NYLON)
20d x 20d Ripstop
C6 DWR(耐久性撥水)
Spec:
引裂 JIS L 1096 D(ペンジュラム法)
たて0.9kg よこ0.8kg
引張 JIS L 1096 A(ストリップ法)
たて35.6kg よこ30kg
通気 JIS 1096 A(フラジール形法)
33cc/(㎠・s)
Pertex® Quantum Air from Pertex on Vimeo.
サイズについて詳しく
Size | XS | S | M | L | XL |
---|---|---|---|---|---|
体重/Weight kg |
42~53 | 51~61 | 59~69 | 67~78 | 76~85 |
胸囲/Chest cm |
78~84 | 80~88 | 84~95 | 92~102 | 100~110 |
Size | XS | S | M | L | XL |
---|---|---|---|---|---|
着丈/Length | 67 | 70.5 | 72.5 | 75 | 77.5 |
肩巾/Shoulder Width | 44 | 47 | 49 | 52 | 56 |
身巾/Body Width | 55.5 | 60.5 | 63 | 67 | 72 |
裾巾/Hem Width | 51 | 56 | 58.5 | 62.5 | 67.5 |
袖丈/Sleeve Length | 52.5 | 58 | 59 | 60.5 | 62 |
袖口巾/Sleeve Opening | 9.5 | 10 | 10.5 | 11 | 11.5 |
2021年モデルよりサイズを見直し、よりゆったりとしたシルエットになりました。
・XS/S/M 身巾でぐるり4cm大きくなりました。
・L 身巾で6.0cm大きく、着丈を0.5cm長くしました。
・XL 身巾で10.0cm大きく、着丈を1.0cm長くしました。
ご注意
UL Shirtの素材パーテックス・カンタムエアは、硬い素材と擦れることにより毛玉と糸の引きつれが発生することがあります。
毛玉と引きつれがとくに起きやすい状況とその対処方法について、下記にまとめましたのでご参照ください。
下記は現状、山と道が把握している毛玉と糸の引きつれが発生している事例です。ともあれ事例により状況は様々で、同様の状況で必ず毛玉と糸の引きつれが起こるわけであはありません。
ベルクロやハードメッシュなど、
表面に凹凸があり固いものとの接触や摩擦
バックパックのショルダーベルトやヒップベルト、シートベルトなど、
同じ箇所に繰り返しかかる接触や摩擦
汗などで生地が湿った状況では損傷がさらに起きやすくなります。
引きつれ
生地を軽く引っ張りながら、引きつれが起きている方向に伸ばして下さい。それでも戻らない場合は低温モードのアイロンで当て布を当て、生地を伸ばすように整えて下さい。
毛玉
身生地を一緒に切らないよう注意しながら、毛玉取り機で生地表面の毛玉をカットしてください。ただし、ナイロン糸はフィラメントという長繊維のため、毛玉を取ると糸が切れ、生地強度が低下したり、生地に極小の穴があいてしまう場合があります。またライター等で軽く炙り、毛玉を溶融させて潰す方法もあります。毛玉周囲を固めるため更なる引きつり防止になりますが、炙りすぎると生地に穴があいたり、溶解部分周辺が硬くなる可能性もあります。
上記ご理解の上、処置はご自身の判断で行ってください。
毛玉と糸の引きつれが顕著に現れた状態です。この状態はショルダーストラップに取り付けられたドリンクホルダーのベルクロ部分が生地と擦れて起きたと推測されます。
引きつれが起きている方向に手で引っ張り伸ばした状態です。引き連れは目立たなくなりましたが、そのぶんやや毛玉が目立ちます。
当製品1点のみご購入の場合、配送料のお得な日本郵便の「ゆうパケット」が利用できます(沖縄県・離島を除く)。
送料:350円
他製品を含む2点以上ご購入の場合は佐川急便で発送します(沖縄県、離島のお客様はヤマト運輸で発送します)。
送料:550円/1,000円(沖縄県)
ご購入後、製品のサイズが合わなかった場合は、交換対応をいたします。交換に際し以下の内容をご確認のうえ、SUPPORTページ「キャンセル・返品・交換について」よりお問い合わせください。
山と道ではすべての製品の修理を受け付けています。穴あきやパーツ補修、経年による劣化など、修理のご相談はSUPPORTページ「修理について」よりぜひお気軽にお寄せください。