【GALLERY】
2018-2019年の冬の山と道

INTRODUCTION

2018年の冬、山と道はスタイリングに再び『Brown by 2-tacs』の本間良二氏を招き、フォトシューティングを行いました。その写真はすでに各製品ページに反映されていますが、2018年夏のフォトシューティングに続き、またこの『JOURNALS』でまとまった形で披露させていただきます。

今回、モデルを勤めていただいたのは八ヶ岳の麓でレストラン『Dill eat,life.』を営む山戸浩介・ユカ夫妻。実は数年前からモデルをお願いしていたのですが、なかなかお互いの都合が合わず、今回、ようやく実現に至りました。

撮影を行った昨年の初冬から季節はすっかり春めいてきてしまいしたが、日々心のこもった料理で客をもてなし、休日には四季折々の山で楽しむふたりのライフスタイルや、Dillのある八ヶ岳山麓の冬の美しさが写真から伝わったらうれしいです。

また、本間氏には撮影時の様子を綴ったエッセイも書き下ろしていただいています。ぜひご覧ください!

NOTE

本間良二

キミはDillに行ったことがあるかい?

僕はない。八ヶ岳界隈の話になると、いつも誰かが口にするDillというレストラン(正式には『Dill eat,life.』という)。

「Dillおいしいよねぇ」と、また誰かが合の手をいれる。僕はアゴに手をあてて、黙ってその会話を聞いている。盛り上がる会話…盛り上がる会話…盛り上がる…

「嗚呼、俺も行きてぇ! Dillに!」

そんなある日、山と道の夏目さんから一通のメールが届く。今回の撮影モデルはDillの山戸夫妻にしたい、さらに一泊してDillで夕食も、という内容だった。

あら? いい感じ。すぐさま僕はDillの料理を想像した。もしかしたら、前菜はディルの山盛りのサラダかもしれない。「好きな香草だけど山盛りはちょっとなぁ…」と、無駄な心配をしつつ八ヶ岳へ向かった。

よく晴れて空気の乾いた気持ちのいい朝、少し早く着いたので車の中でゆっくりしていると、窓をコンコンと叩く音。Dillの山戸浩介さんだった。

「おはようございます。コーヒー淹れたんで、よかったら中に入りません?」と嬉しい言葉。Dillの外壁には薪が積み上げられているが、あまり見たことのない節が多い薪だった。「割るの大変そうだなぁ」と思いながら、木の種類を聞いてみるとスモモの木とのこと。

薪焚人は知り合いのつてをフルに使って、薪を確保する。きっと、この薪も知り合いの農家さんのつてで手に入れたものだろう。その農家さんは、もうご高齢で引退をしてしまったのだろうか。それとも、ただ単に近所に生えていた木が強風で倒れただけなのだろうか。こんなちょっとした風景から、つい余計なことを想像してしまう。

なかに入ると、薪ストーブの家特有のいい香りがする。薪ストーブは『VERMONT CASTINGS社(バーモントキャスティング)』の中でも小ぶりのサイズの『INTREPID II(イントレピットⅡ)』。Good Choice!!!

ブーツがきれいに並んでいた。これはスタイリング用に夫妻の自前のシューズを見せてくださいと、僕が前もって頼んでおいたからだろう。

よく手入れがされていたので、そのことを話すと、「これは浩介がやってくれたんです。私はいつもそのまんまで…」と、少し照れながら笑う山戸ユカさん。

わかる、わかる。男って靴を磨くの好きだよね。ちなみに、我が家も僕が靴磨き担当だ。

夏目さんと撮影を担当する三田くんが到着して、少し打ち合わせをしてから早速撮影をはじめた。ロケ場所は二人がいつも散歩している場所や、お気に入りの場所を案内してもらった。

ユカさんは歩いている途中、絶えずなにかを拾っていた。

「よく二人で散歩に出かけるんですけど、ユカはいつもなにかを拾っていますね。それを家に持ち帰ってリースなんかを作るのが好きで…あれは彼女がいつもやっている遊びなんです」と、浩介さんが話してくれた。

この言葉を聞いたとき、僕は浩介さんとユカさんの間には、互いが尊敬し合う、とてもいい関係が築かれている気がした。

自然が大好きな山戸夫妻はシーズンにはクライミングを楽しみ、ランチ営業のあとにも近くの山へハイキングに行く。お店のデッキからは迫力のある南アルプスが望めて、山好きにはたまらない景観だ。

しかし、実際にこの場所で商売をするには、きっとたくさんの苦労があったと思う。それでも、二人はこの場所を選んでやっぱり良かったと思っている。(ちゃんと聞いたわけではないけれど、二人の顔を見ればわかる)。

都会のような無限に拡大し続けようとする経済社会の中では、この豊かな自然が有限であることをつい忘れがちだ。山戸夫妻は経済を求めるよりも、限りある時間のなか、限りある自然を満喫し、その場所で小さな商いをする人生を選んだ。

別にどちらの人生が正しいか、誤っているかを問おうなどとは、ことさらに思ってはいないが、山戸夫妻の顔つきが明らかに都会の人間の顔つきとは違い、僕には眩しくみえた。

これからの将来、日本にもっとこういう場所が増えてきたら、日本全体が楽しくなるに違いない。いや、もしかしたら本当に楽しいのは、実践している当の本人たちかもしれない。

そして、そのライフスタイルの根底にあるものは、真っ当なスモール・ビジネスであると再確認できたことを嬉しく思った。

そう、僕たちはもっと、自由になれる。

本間良二

追伸

あ、そうそう。夜のご飯はとてもおしかったです(ディルの山盛りサラダは出ませんでした)。ごちそうさまでした。

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GALLERY

Photographer
Masaaki Mita
Stylist
Ryoji Homma
Model
Yuka Yamato
Kosuke Yamato
Directer
Akira Natsume
Special Thanks
Daiki Nozawa
Dill eat,life

*記載のない製品はすべてスタイリスト私物です。

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  • 三田 正明

    三田 正明

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    フォトグラファーとしてカルチャー誌や音楽誌で活動する傍、旅に傾倒。 多くの国を放浪するなかで自然の雄大さに惹かれ、自然と触れ合う方法として山に登り始める。 気がつけばアウトドア誌で仕事をするようになり、ライター仕事も増え、現在では本業がわからない状態に。 アウトドア・ライターとしてはULハイキングをライフワークとして追い続けている。 取材活動のなかで出会った山と道・夏目彰氏と何度も山に行ったり、インタビュー取材を行ったり、酒を酌み交わしたりするうちに、いつの間にかこのようなポジションに。 山と道JOURNALSを通じて日本のハイキング・カルチャーの発展に微力ながら貢献したいと考えている。

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