#1 大楠山で両親とサンドイッチとエナジーボールを
山と道インスタグラムのストーリーズをチェックしてもらっている方なら、鎌倉の山と道大仏研究所の社員食堂として毎日おいしそうなお昼ご飯が出されているのをご存知かもしれません。そこで辣腕を振るっているのが、このJOURNALSでも『重い女が軽くなる』と題してULハイキング入門記を連載していたスタッフの寒川奏。多い時には30人前にもなるお昼ご飯を日々臨機応変に即興的に作り出すその手腕には日頃からスタッフ一同大変お世話になっていますが、途中コロナ禍もあり、『重い女〜』連載は尻切れ状態に…。
ともあれ、せっかくの彼女の画文と料理の腕前をもっとこのJOURNALSでも発揮してもらおうじゃないか! と、今回から新たな連載を始めることにしました。お題は「ピクニッキング」……とはなんぞや? に、ついてはぜひ本文を読んでいただきたいのですが、とにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べることについて綴っていきます。
しかも今回は彼女と非常〜に縁の深い豪華ゲストも登場して、これからもっと楽しくなっちゃうこと間違いなしだ!
文/イラスト:寒川奏
写真:大竹ヒカル
ことの始まり
ピクニッキング。それはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。ことの始まりはこの山と道JOURNALSの三田編集長との会話だった。
「俺、昔こんなの作ってたんだよね。」
そう言って見せてくれたのはかつて『マーマーマガジン』という雑誌で三田編集長が書いた「ピクニッキング教書」という数ページの漫画だった。三田さんのピクニッキングへの愛と熱がこもった、熱い数ページ。ピクニッキングとは何か、何をするのか、楽しみ方、その全てが描かれていた。なんだこれは! 楽しそうだ!
三田 その当時、オレゴンのポートランド行ったら、公園とかいろんな場所にあるピクニックエリアの案内版に「PICNICKING ARIA」って書かれてさ。「ピクニッキングって、バックパッキングとかバイクパッキングみたいじゃん!」って思って、自分でも「ピクニッキング」という新たなアクティビティをでっちあげてみたくなったんだ。で、当時連載していた『マーマーマガジン』で、大好きな『メイベル伯爵のバックパッキング教書』のパロディとして俺の考えたピクニッキングのハウツーを無理やりマンガで書かせてもらったんだよね。だから内容は100%俺の妄想なんだけど。
寒川 いや、私にはなぜ今までこの世にピクニッキングがなかったのか不思議なくらいしっくり来てます。楽しいしかないじゃないですか!
三田 寒川さん、せっかく食にも精通しているんだし、ピクニッキングやってみなよ。このバトンを受け取ってほしい。君には令和のピクニッキング・マスターになってもらおうじゃないか。
こうして私はピクニッキング道を極めることになった。
ベイビーピクニッカー
ピクニックってそもそもなんだ? ハイキングの時にご飯作って食べてるのはピクニック?お花見もピクニック? まずはピクニックとはなんなのかを調べた。
「自然豊かな場所に出かけて、あらかじめ詰めて運んだ食べ物をそこで食べること」(出典Wikipedia)
なるほど。あらかじめ食べ物を用意して持っていくことが定義とされているようだ。ここにハイキングを掛け合わせる。さらにこの山と道JOURNALSで連載するからには、UL(ウルトラライト)ハイキング的要素も入れる。ULの方法論でパッキングを軽量にし、普通のピクニックでは行けないような場所に出向き、おいしいご飯と飲み物でピクニック。つまりそれがピクニッキング⁉︎ これだ! これをやっていくんだ!
そこで大事になってくるのは、誰と、どこで、どんな時間を分かち合いたいかだろう。その分かち合った時間がまたその人との絆を深めてくれる。
私のピクニッキング、やってやろうじゃん!
寒川奏のピクニッキング
初回である今回、父と母を誘ってみた。家族でピクニックはたまにしていた記憶があるが、いつも父と母が用意してくれていたので、今回は私が楽しませたい。
家族ピクニックでのいちばんの思い出は私の9歳の誕生日。今はなき油壺マリンパークにみんなでローストビーフサンドイッチをたくさん作って持っていった。ひとつだけローストビーフが3枚も入っているサンドイッチがあり、じゃんけんをすることになったが勝ち取った父は私にくれた。すごくおいしくて、ローストビーフも、油壺マリンパークも、ピクニックも、この日に起こったことの全てが大好きになった。今日は父と母にも思い出に残る時間を過ごしてほしい。
場所選びは膝の悪い母を中心に考えた。横須賀市の西の外れにある大楠山という私たち家族が昔から慣れ親しんでいる山の広場だったらギリギリのところまでクルマで入れるため、膝が悪い母にも優しい。ハイキングというよりも散歩程度となってしまったけれど、これでいいのだ。だって苦しい思いしてまでやるものではないもの。みんなが楽しくなくちゃ意味がない。
天気はいまいちだが、このぐらいの方が快適かもしれない。ツワブキの葉を摘んでコップを作ったり、花見をしながらグッドピクニッキングスポットを探す。
いい感じにひらけた平な場所を見つけたので、セッティングスタート。自作のシートを広げて、その上にサンドイッチと飲み物、スピーカーを並べた。両親はハンモックをセット。ド派手なピクニッキング現場の出来上がり!
待ってました!ご飯の時間!
本日のメニューはクミンのサワードウブレッドサンドイッチ。中身は発酵にんじんラペとリコッタチーズと生ハム。私のピクニッキングにおいて食べ物は非常に重要で、今年還暦を迎える父、糖尿の気がある母、軽くさっぱりと食せることを意識してみた。食で私なりの親孝行なのだ。
もしも全てが失敗してしまったり、なんのやる気も起きない時はお店で買ってしまうのもアリ! 重要なのは楽しむこと!
デザートにはシンプルで美味しいエナジーボール。
好きな人たちとだらだら、幸せだーっ!
この日のために作ったちょうど1時間のプレイリストを流しながら、激うまサンドイッチを食べたり、話したり。
寒川父「食べやすいね。美味しい。大きいから食べられるか不安だったけどぺろっと行けたよ。」
寒川母「パンも焼いたんでしょう? すごいじゃん!」
父母からお褒めの言葉をいただきとても嬉しい。ここで「アウトドアライフアドバイザー」という仕事を生業としているアウトドアのプロである父、寒川一からせっかくなのでおすすめのピクニック道具を聞いてみる。
寒川「父ちゃんのピクニック道具は何?」
寒川父「ハンモックでしょ! 乗ったら椅子もいらないし、持って食べたらいいからレジャーシートもいらないじゃん。」
寒川「シートを囲むのがピクニックでしょ! わかってないなあ〜。母ちゃんは?」
寒川母「やっぱり私は食事、それもランチが中心にあると思うから、ピクニックバスケットかなあ。」
寒川「確かに! 私もそれは考えたんだけど、手に持つのはやっぱり動きづらいなあと思って今回はバックパックなんだ。ピクニッキングのバックパック、何か作ってみようかなあ。あっ。この曲知ってる?」
寒川父「『地下鉄のサジ』かなあ。」
寒川「違います!正解は「ぼくの伯父さん(ジャック・タチ映画のサウンドトラック」でした。あと父ちゃん、それは地下鉄の「ザジ」ね。「サジ」だと地下鉄にあるスプーンの話だから。」
家族での取り止めのない話以上に楽しい、幸せな時間なんてあるだろうか? 幸せすぎてちょうど1時間のプレイリストが短く感じる。ただの広場だったその場所は、気がつけばくつろげる最高のピクニッキング場所になっていた。
ピクニッキングのパッキング
さて、ここで私のピクニッキング装備をご紹介。
ピクニックが目的なのであまり持っていくものは多くない。しかし、やはりゆったりとした時間には暖かな飲み物が必須と思い保温水筒を持っていったのが重かった。あくまでもあらかじめ詰めて持っていくというピクニックの定義にしたがってみたのが仇となった。これはピクニックではなく私のピクニッキングなので次回から工夫しよう。
そして今回のこだわりはレジャーシート。ピクニックといえばチェック柄のレジャーシートであると私は思う。しかしあれはウールだったりヘビーな素材でできていることが多い。ということでULハイキングでお馴染みのタイベックシート(防水透湿する不織布)にチェック柄を描くことにした。
父からは「全く心が休まらない色、不安を感じる」と不評だったけれど、遭難中にピクニックをすることになったらくつろぎつつ助けも呼べてて一石二鳥じゃんと私は思う。
バックパックは山と道のMINI2で挑んだ今回。容量がトゥーマッチだった印象がある。中がスカスカでハマりが悪い。もっと容量の小さなバックパックで次回は挑みたい。なんならナップサックでいいのでは。
せっかくタイベックシートで軽くしたのに水筒で重くなってしまった今回。でも楽しかったのでオッケー! 次はどこで、誰と、何を食べようかな? もっと楽しくなっちゃうこと間違いなしだ。
【続く】
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