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#4 ノースカロライナでパートナーの家族とターキーとチーズのサンドウィッチを
鎌倉の山と道社員食堂で毎日独創的なお昼ご飯を作るスタッフの寒川奏。イラストレーターとしても活動する彼女がとにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べること……つまりピクニックをすることについて綴るこの連載。
今回は日本を飛び出し、前回も登場したパートナーのニールの家族に会うために、アメリカはノースカロライナ州、アッシュビルへ。ついでにみんなでピクニックもしてきましたとさ。
ピクニックの本場(?)アメリカ事情はどうなっているのか、オーガニック系スーパーマーケットに飛び込んで大調査、というか大興奮してアメリカンデリ仕込みのサンドウィッチにかぶりつきます。
寒川は無事、ニールのファミリーに気に入ってもらえるのか⁉︎ 今回もピクニッキング、はじまりはじまり〜。
文/イラスト:寒川奏
写真:ニール・ククルカ
第3回目である前回はパートナーのニールと我々の愛犬ヤンと共に那須岳へ。連載史上初めてしっかり屋外での調理に挑戦してみて少し懲りた。そして今回行く先はなんとアメリカ! そう、今回、寒川はニール(アメリカ人)の実家に行きます。
しかも彼の実家はノースカロライナ州、アシュビルであり、奇しくもアメリカ3大ロングトレイルのひとつ、アパラチアントレイルに近いのだ! そんなのピクニッキングしないとじゃない?
ということで第4回目のピクニッキング、アメリカ編スタート!
ピクニッキングとは?
ピクニッキングとはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。なぜ私がいまピクニッキングマスターを目指しているかは第1回を読んでもらいたいが、ピクニッキングとは、以下のようなものだと私は考えている。
- 最低1時間のハイクをする(しかし一緒に行く人の体調や体に合わせて、全員が楽しめるハイクにする)。
- 食べることを主眼においたデイハイク。何人かでそれぞれ食べ物や飲み物を持ち寄り、それをシェアして食べる。
- ハイキングの行程はあくまでどこで食べるかが主眼。
- 参加者それぞれがピクニッキングに向けて食料を準備する(なるべく手作りする)ことも非常に重要。
つまり、誰かの家でやる持ち寄りパーティを屋外で、ハイキングを絡めてやるのがピクニッキング?
これはあくまでも私の定義であって、もっと違ってもいいと思う。読者の皆様にも自分のピクニッキングを見つけて欲しい。
ここまで書いたけれど、今回はアメリカに出張特別編でいつもと勝手が違うので、ほぼ普通のピクニックとなってしまったのでそういうつもりで読んでいただけると嬉しい。
土地勘ゼロです。どこに行こう?
アパラチアントレイルまで彼のお家からは車で1時間半程。ついでにアパラチアントレイルも歩いちゃう? などとウキウキ準備もしていたが、9日間ほどの滞在ではそんな時間がないことに気がつき、ピクニックだけを楽しむことにした。
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相談中
ニールファミリーにピクニックに行きたい、少しハイクもしたいという旨を相談してみたら、「マックスパッチがいいんじゃない?」と提案してくれた。
マックスパッチは、ノースカロライナ州とテネシー州の境界にある禿げ山で、周辺の山々の中ではいちばん標高が高いという。その頂上でノースカロライナ州とテネシー州を見渡そうということになった。
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メンバーはニール、ニールパパのギャリー、ニールパパのパートナーのエレノア、そして私の4人。なんだか色々イレギュラーで楽しい〜!
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何を食べよう?
まず今回は、他の国、人の家ということで調理は全面的にやめることにした。ということはどこかで買うしかないわけで。でもどこか適当なところで買うのも私らしくないし、探したい、こだわりたい。ニールとふたりで日本のスーパーのお肉売り場に行った時、こんな話をしたことを思い出した。
ニール「店員さんがその場で提供してくれる、計り売りで好きなだけ買えるお店が日本にはない」
寒川「お高めのお肉やお惣菜などを計り売りしてるコーナーならスーパーによっては時々あるよ」
ニール「違う、そういうのじゃなくて。いっぱいいろんな種類のハムとか、ベーコンとかがあって、欲しいだけ、その場で切り売ってくれるんです」
寒川「そういえば昔アメリカ行った時、ガソリンスタンドでハムとか並べてあって、『サブウェイ』みたいな感じで好きな具でサンドイッチ作ってくれたよ。そういう話?」
ニール「違うけど、そういうのもあります」
寒川「アメリカのスーパーでは『サブウェイ』みたいなことできないってこと?」
ニール「『サブウェイ』みたいにはできないけど、自分で好きな具を買って、パンも買って、サンドイッチを作ることはできますよ。いろんなデリもあるから楽しいよ」
デパ地下のデリが大好きな私にはぴったりの場所じゃないか! スーパーで食材を買って、現地でサンドイッチにすることに決定!
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魅惑のラビリンス、WHOLE FOODS
お家の近くにある『ホールフーズマーケット』というスーパーにやってきた。オーガニック食品がたくさん売られていることが特徴だ。
ニールに「スーパーに放つと最低2時間は帰って来ない女」という印象を持たれている私だが、「このスーパーは4時間ください!」というほどに楽しい。店内に入ると秋っぽいパンプキンスパイスの香りがした。
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10月に行ったため、ハロウィンで盛り上がっていた
プリプリのイチジクやツヤツヤのザクロ、野菜たちがキラキラしている。その隣にはすごい種類の乳製品。もちろんデイリーフリー(乳製品不使用)も潤沢で、選択肢が多すぎる!
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安くはないがおいしそうな野菜たち
さらに進むとすごい種類のクラフトビールが並んでいる。目と脳みそが忙しい! お菓子のコーナー、パンやスイーツのコーナー、あれもこれも食べてみたい。いくら食べても太らない体になりたい。
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カロリー表記するのをやめていただきたい
あまりの情報量にギンギンな私をニールがデリのコーナーに引っ張ってきてくれた。
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ハムコーナーで好きな量をオーダー
寒川「もう無理です。私はいま何も考えることができません。楽しすぎて鼻血が出そうな程なのであなたが選んでください」
ニールがチョイスしたのはターキー、マンステールチーズ、アシュビルのローカルパン屋のパン。そしてサラダコーナーで野菜を詰めた。
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サラダバーが設置されていて好きに詰めることができる
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パンも種類がありすぎて迷う!
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買い物カゴが小さい印象
他にもデリ、チップスやローカルメイドのコンブチャも買って、さあ出発!
グレートスモーキーマウンテン
ハイウェイをクルマで走ること1時間半、マックスパッチの頂上付近にある駐車場に到着した。思っていたより人がいて、思っていたより天気も悪かった。霧に包まれていて何も見えない。
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マックスパッチは自然保護地区に指定されている
ギャリー「霧が濃いね。ここはグレートスモーキーマウンテン国立公園の一部だからね」
そういうことか! 私たちは今「グレートスモーキーマウンテン」の名前の謂れの中にいるのかと思うと、納得と実感で興奮した。
マックスパッチの頂上付近は軽いハイキングもできる約2.4キロのループのトレイルになっており、そのルートの中には山頂も含まれる。その開けた山頂でピクニックをする計画だ。
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1マイル=約1.61キロ
トレイル入り口にはレンジャーが立っていて、案内をしてくれる。右から行く方が急な上りがあるというのでそっちに行くことにした。
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真ん中がレンジャーのおじさん
これがアメリカのトレイルかーと考えながら歩き出す。霧で何も見えなくて、広くて、不安になる。
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迷子のようなニール
私以外の3人の歩みが速い。特にニールのパパ、ギャリーが速い。トレッキングポールを使うことによって、四足歩行のようになっている。あとシンプルに全員脚の長さが私の倍くらいある。小走りで追いかけていく。
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3人になかなか追いつけない
寒川「なんか、家からそのまま来たみたいな人多いね。一応これハイキングコースだよね?」
ニール「ハイキングだから着替えるとか、アメリカはそういうのはないんです。そのまま来る、リラックスでカジュアルなんですよ」
寒川「あなた出かけるたびに服着替えるし、めちゃ悩むじゃん」
ニール「僕はほぼ日本人だから」
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噂の急登が来た。急登というか階段で、そんなに長くもきつくもない。この階段を境に植物が変わった。毛足の長い芝のような植物と、背の低いお花たちの野原になった。相変わらず霧は濃く、景色は何も見えない。
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階段を登り切ったところ。何も見えない。
急に少し開けた場所に出た。どうやらここが頂上らしい。
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私も周りの人たちと変わらず、普段山に行かなそうな仕上がり
なんとなく、きっと霧が晴れたら景色がきれいなんだろうなという場所でピクニックスタート!
今回のピクニックのために日本から持ってきたのはタイベックでできたピクニックシート1枚のみ。朱色のチェック柄と、朱色と黄緑の奇を衒ってしまっている水玉柄の2種類のうち、前者のみ持ってきた。正直4人いるなら2枚持ってくればみんな座れたのになと思ったが、ニールの家族に奇抜な柄を作るやつだとまだ思われたくないのでこれで正解だったと思う。気に入られたい。
風が強くてピクニックシートを広げるのもひと苦労。ザックに背面パッドとして入っていた山と道のミニマリストパッドや、パックライナーも駆使して全員無事着席。
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爆風で人もモノも植物も飛んでゆく
スーパーで買ってきたものを早速シートの上へ。全部広げるとかなりボリュームがあってワクワクする!
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簡易包装が素敵
まずはニールがお手本サンドイッチを作ってくれた。
ニール「このマンステールチーズは日本で売ってないんです。こんなにおいしいのにおかしい。ターキーもコストコでしか見たことがない」
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赤米が入っているふわふわのサワードウブレッド
ニールがアメリカにいた頃の好きなものをチョイスしてくれたらしい。
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おいしい素材を使えば、ソースはいらない?
ニール「まずはお父さんどうぞ。かなちゃん(寒川)は自分で作ってみてね」
ギャリー「いいの? ありがとう」
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渋いパパ
私も強風で飛ばされる野菜をキャッチしながら作ってみる。バターもマスタードもソースも何にもなしのシンプルなサンドイッチ。
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風が強すぎて抱えるように持つ
野菜のみずみずしさ、ターキーの塩気、チーズのコク、パンの旨味のバランスがちょうどいい。特にターキーが脂っこくなくて、薄さもちょうど良くて、いくらでも食べれそう。今回のアメリカ滞在でいちばん優しいものを食べてる気がする。
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エレノア「ふたりはどうやって出会ったの?」
寒川「父の知り合いの会社でニールが働いてて、そこで私が猛アタックしたんだ。」
エレノア「ニールが彼女ができたなんていうからすごくびっくりしたのよ! 日本に行って以来そんな話一切なかったから!」
寒川「変なのに引っかかっちゃったね! おふたりはどうやって出会ったの?」
エレノア「オンラインで出会ってね、彼は最初のデートでひとりで2時間もケン・ウィルバー(現代アメリカのニューエイジの思想家)の話をしてたからどうしようかと思ったけど、そんな彼がかわいかったからこうなっちゃった(笑)」
寒川「2時間も(笑)」
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お互いを知ることができる良い時間。今まではビデオ通話でしかお話したことがなくて、こうして直に会えて一緒にピクニックをしているなんて、本当にすごいことだなあ。
相変わらず風は強いが段々と霧が晴れてきて、景色が見え始めた。みんなのテンションが上がる。
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ギャリー「こちら側がアッシュビル、こちら側がテネシーだよ。向こうの山々も全部見えるくらい、ここは標高が高いんだ。そういえばさっき木製の柵があっただろう?」
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寒川「霧であまりよく見えなかったけど確かに所々にあったね」
ギャリー「あれは昔ハイカーが焚き火がしたくて盗んでしまったから、少なくなってしまったんだよ。レンジャーが立ってるのも、これ以上何か起きないようにだよ」
なんとアメリカサイズな窃盗なんだろう。嘘みたいで笑ってしまった。
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寒川「ニールはピクニックしたことないって言ってたけど、ピクニックって行く?」
エレノア「今はあんまり行かないけど昔は娘たちと時々行ってたわよ。どちらかというとイギリスの文化かもしれないわね」
ふたりにピクニックの楽しさを再確認してもらえたら嬉しいな。
エレノアはパンをあまり食べないらしく、サンドイッチではなくデリを食べると言ってデリを食べていたけれど、ちょこちょこギャリーのサンドイッチを食べてるのがかわいかった。
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私はいつもピクニッキングのための1時間のプレイリストを作ってきている。今回は軽量化のためにスピーカーを持ってこなかったので、プレイリストを流せず1時間がわからない(しかし、きっと密かに楽しみにしてくれている読者もいることを信じて今回もプレイリストを作ってみたのでぜひ活用していただきたい)。
時間はわからないけれど、ちょこちょこつまんでいたチップスもみんな飽きてきた頃なのでそろそろ帰路につこう。
霧が晴れたトレイルは木々も花々もまた違うものに見えた。
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シンプルなピクニックとなった今回。正直、足が悪い人や年齢が上の方と一緒に行くときは、1時間あるかないかくらいのゆるいハイクで十分だと思った。これはこれで、ピクニッキングになったと思う。
一緒に過ごす時間、見る景色をとても大切にできた。アメリカに来てまで「ピクニックがしたいんです」なんて頓珍漢なことをいう息子の彼女、よく皆さん付き合ってくださいました。おかげでニールのことも、彼の家族ももっと大好きになった。
別に私は結婚するからアメリカにまで会いに行ったわけでもなんでもないけれど、もし読者の中に「両家顔合わせ」だったり、「ご両親にご挨拶」的なものを控えてる方がいたならば「ピクニッキング」とってもおすすめです!
次回はどんなピクニッキングにしようかな。もっと山を登ってみたい。道具も少し凝ってみたい。乞うご期待!
![寒川奏](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fwp.yamatomichi.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2021%2F05%2Fa796f6fbf4e38ff19d664b783f551a0e.jpg&w=3840&q=75)
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