雪山へようこそ
#3 野上建吾(UL Ski Hiker)

2023.11.27

雪の山は特別です。そこは日常とはまったくかけ離れた別世界。山はぐっと深く、美しくなり、神々しさを増します。ともあれ、厳しさや危険も増すのも事実なので、憧れや行きたい気持ちはあっても、二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか。

そこで雪山へのハードルを少しでも下げようと、それぞれに雪山を楽しむ山と道のスタッフや関係者の方に雪山の魅力と楽しみ方を語ってもらうと共に、彼ら彼女らの雪山装備を紹介してもらうこの企画。3人目にしてひとまずの最終回となる今回は、日本のULハイカーの古参であり、”UL Ski Hiker”としてSNSNote等で活発に情報発信も行われている野上建吾さんです。

「ULスタイルでのスキーハイキング」という独自のスタイルを追求する野上さんだけに、装備もツェルトの二重張りや化繊インナーシュラフのビビィとしての活用、独自のスキーシステムの構築など創意工夫の嵐! ただ単に軽量な道具を使うだけでなく、自分なりに改造したり使いこなしてこそULなのだ、という原点を思い起こさせてくれます。装備一覧のキャプションの隅々にまで目を通していただければ、きっと様々な発見があるはずですよ。

取材/文:三田正明
写真:大竹ヒカル 三田正明

「雪山 × スキー = 羽が生える」

僕は出身が新潟県の南魚沼市なんですけど、家の目の前にも裏にもスキー場があるような環境で生まれ育ったんで、物心つく頃からスキーを履いて雪で遊んでました。学校でもクロスカントリースキーの授業があって、スキーを履いて校庭をぐるぐる回るっていうのが冬の体育で。シーズンに何回かスキー遠足があって、要は近所のちょっとした丘とか森にクロカンスキーで行くんですけど、それがすごく楽しかった。なので小学生の時にはスキー場から山の稜線を繋いで隣のスキー場に行ったりとか、バックカントリーの真似事みたいな遊びをもうしていました。大人になっても同じようなことをしていますね(笑)。

それから大人になり、レコード屋とかDJとか夜の世界の仕事をしていたんですけど、30代後半で新潟に帰ってきてもう1回スキーとか山で遊ぼうかと思った時に、ちょうどULハイキングの文化が情報として入ってきたんです。自分は雪山も得意だし、スキーも技術が備わってたんで、ULとスキーを合わせたら人と違うことができるかなって思って、4月の残雪期にスキーで縦走しようと信越トレイルに行ったんです。でも、最初はこてんぱんにやられて(笑)。普通に道標とか全部雪の下で全く道もわかんないし、途中で雪崩にも遭遇して、びっくりして下山して野沢温泉で温泉入りました。でも山の中で5泊くらいして、そういう遊びがおもしろいなと思って、それからのめり込んでいきました。

4月の立山。雷鳥沢キャンプサイトから雄山方面へ向かう。(写真提供:野上建吾)

残雪期の信越トレイルはようやく4回目のチャレンジで全部歩けたんですが、やっぱり最初に失敗したから楽しかったんじゃないかな。1年目ですんなり歩けてたら、「こんなもんか」で終わってたかも。いろんな課題があったけど誰も教えてくれないし、いろいろ自分で調べて工夫して、ギアも改造して。たぶんそのときに創意工夫する癖がついたんでしょうね。それが自分のスタイルになっていきました。

たとえば厳冬期に山に入って連泊するとなると、1泊だけだったら別に装備が濡れても下山すればいいだけだけど、2泊目ってなると寝袋やテントが結露で濡れたりすると乾かさなきゃいけないので、そこをどうしようかなってことでツェルトを改造して、床を取り払ったツェルトと二重にして張ってます。要はダブルウォールのツェルト(笑)。内側の方が結露するので、床を取り払ったツェルトを夜寝る前にセットして、起きたら結露した内側のツェルトを外すと外側のツェルトはサラサラに乾いてるので、朝起きて着替えたりする時もストレスがない。僕にとっての雪山はこういうことをいろいろ実験する場所で、雪山じゃなかったらここまで突き詰めないし、良い学びと実践の場になってると思います。

ツェルトをスキーとストックで張り、内部には改造した内張用のツェルトをセットしダブルウォールに。(写真提供:野上建吾)

雪山の魅力は、やっぱり自由さだと思います。そこにスキーが加わることによって、本当に羽が生えたみたいな感じでさらに自由になる。板の上に乗っかっていれば新雪の上でも沈まないし、普通の人が行けないような場所にも2本のスキーを履いてればどこでも行けちゃうので、いろんな旅の計画が立てられる。せっかくスキーができる人だったら、ぜひバックカントリーに挑戦してみてほしいですね。

こちらも立山。雷鳥沢から見える奥大日岳。その向こうには日本海。(写真提供:野上建吾)

あと僕が言いたいのは、雪山はそんなにハードル高くないよっていうことです。たぶん都会の人がイメージしている雪山って北アルプスとか八ヶ岳みたいなイメージだと思うんですけど、僕が暮らしてる越後の山々は標高が2000mいかないぐらいで、工夫すれば持ってる装備で十分だし、危ない場所もそんなに無いですから。ULに興味があったら宿泊装備は持っている人が多いだろうし、それこそ3月以降を選んでちょっと雪山で1泊してみようみたいな感じで、越後であればまずは平標山とか谷川岳周辺で遊んでもらえたらいいかなと思いますけどね。信越トレイル周辺も冬遊びに行く場所としてはすごくいいです。あとは僕が小学校のときに遊んでたように、別に山に行かなくても、雪さえあればその辺の丘とか河原とかでも雪遊びができます。そういうことも伝わるといいな。

山に行くとスキーで宿泊装備を担いでる人をよく見るんですけど、やっぱちょっと大きすぎて、そんなにたくさん背負う必要あるのかって思っちゃうんですよね。僕らULをちょっとかじってる人たちは、もうちょっと荷物を小さくできるじゃないですか。そうするともっと山やスキーの楽しさが広がるので、やっぱり軽量化ってすごく大事だなといつも思っています。

UL Ski Hikerの雪山装備

この装備で行く雪山:谷川岳主脈縦走路
ベースウェイト*: 5.95kg

*食料・水・燃料などの消耗品、及びスキーやシェルなど行動中に身につけるものを除いた装備の重量

今回は平標山から仙ノ倉山〜万太郎山〜谷川岳と繋ぐ主脈縦走路の3月以降のスキー縦走を想定しています。冬にそこを繋ぐのは無理かなぁと思っていたんですけど、夏に万太郎山の周辺の草刈りを手伝った時に、頂上から仙ノ倉山の方を見たら、あそこを滑って降りて、またこの万太郎山を登り返せばこのルート歩けるじゃないかということに気がついて、昨シーズン挑戦しました。スキーをやってなかったら行けなかったし、そういうルート取りも発見できなかったですね。この装備は厳冬期仕様ですけど、3月中旬くらいになれば景色も良いし天気も安定してるし、もっと牧歌的に旅ができます。

①スキー板:ファクション/エージェント3.0
「これはパウダーでも残雪期でもオールラウンドに滑れる板です。もっと長い縦走とかであんまり滑り要素がないときは、さらに軽いやつを持っていきます。シールの取り外しをしやすいよう、先端に切れ込みを入れて改造しています」
②スキービンディング:マーカー/アルピニスト12
「ブレーキレスのツアー用ビンディングで軽量化しています」
③ハードシェルジャケット:ラブ/クローマGTXジャケット
「ゴアテックスで生地のいちばん厚いモデルを使ってます。やっぱり厳冬期だと耐久性という意味でもこれぐらいの生地の厚みは欲しい」
④ハードシェルパンツ:ラブ/クローマGTXパンツ
「シェルジャケットとお揃いのパンツです。完全にスキー用でビブタイプなんで腰回りも暖かいです」
⑤スキーポール:ブラッククロウズ/デュオフリーバード
「2分割できるタイプで、ツェルト設営時に分割して4本のペグとしても使用します。これはツェルト泊をする上でマストアイテム」

①バックパック:クラックス/AX30
「バックパックはスキーを取り付けられる機能が必要なので、アルパイン系のザックを使っています。これは30Lで最初は小さすぎて使いこなすのに苦労したんですが、テントに入ってから使うものとか硬いものを全部寝袋の中に入れるんですよ。それをギュッと押さえつけるとデッドスペースがなくなる。これは小さいバックパックにいかにパッキングするかっていう中で考えついた手法です。それと道具を小さいものに変えたり削ったりしたら、食料もアルファ米とかなら2泊分までは入るようになりました。こうしてギュウギュウにパッキングすると、背負い心地も良くなります。あと50°ぐらいある急斜面でシールを脱いだりギアを付け替えたりするときにザックを下ろして作業するために、斜面に刺したアックスなどに引っ掛けられるようカラビナを付けてます。これはマストですね」
②スキーシール:ポモカ/フリープロ
下記「UL SKI HIKER’S TIPS」参照
③スキークランポン:マーカー
「これはスキーにつけるクランポン。アイスバーンをトラバースするときとか、硬い斜面を登るときとかに必要です」
④クランポン:ぺツル /レオパードLLF
「これもアルミの軽量タイプ。上信越県境エリアならアルミクランポンで十分です」
⑤ヘルメット:ペツル/シロッコ
「軽いから行動中もストレスなし。厳冬期でも問題なく使えます」
⑥アイスアックス:ペツル/ライド
「アルミ製でペツルでいちばん軽量で、春スキー用です。鉄製じゃないけど僕が行く山域はそんなに硬い氷もないし、厳冬期でも僕はアルミのタイプで十分だと思います」
⑦ゴーグル:スワンズ/ヘリXED
「バッテリー駆動で発熱する曇らないゴーグル。『地獄のような環境でもこれさえあれば冷静さを保てる』ということで『地獄ゴーグル』と呼ばれてます。天候が悪化したときにゴーグルが曇らなくて視界が保ててることと、手が暖かいことは本当に安心感に繋がるんで、そこは妥協はしない方がいいです」
⑧サングラス:CHPO/ヘンリックサングラス
「普通のサングラスはスキーで滑走すると風が入ってきちゃうんです。これはよくスキーの人が使うタイプで、普通のメーカーが作ると3万円ぐらいするけど、これは北欧のブランドで5000円ぐらいで買えます。安価だけど何の問題もないです」
⑨ビーコン:マムート/バリーボックス
「僕は装備も公開してるんで、持ってないとこのSNSの時代に『持ってないの?』って言われちゃう。だから使わなくても一応持ってます」
⑩3点セット:ホイッスル、温度計、タッチペン
「行動中の『三種の神器』。必ず持参します。特にスマホは、画面に湿った雪がつくと指が反応しずらくなるので、タッチペンがあると手袋のまま使えるし、地味に便利」
⑪ブーツ用補強タング:パワーライド/ベーシックハード
「滑走時にスキーブーツに装着。トリミングして軽量化しています」
⑫スキーブーツ:フィッシャー/トラバースカーボン
「ハイク重視の軽量タイプ。幅が広くて、可動域も広くて歩きやすく、BOAシステム採用で着脱もしやすいです。でも滑走時には頼りないので補強タングを取り付けます」

①テント:ファイントラック/ツェルト2ロング + ツェルト1
「内張をセットできるように内部に6か所のタイアウトを取り付け、二重化することで外部との温度差10℃を実現しました。内張のツェルト1の方は換気性能アップのため床面と換気口の庇はカット。結露で濡れた場合は翌朝内部で取り外します。ふたつ合わせても600g程度なので、それでダブルウォールにできるなら軽量。設営も普通に土の上に建てるより雪の上でスキーを使った方が速いです。僕はツェルトは厳冬期にスキーと組み合わせて使うために作られたものだと理解してます(笑)」
②スタッフサック:シートゥサミット/ウルトラシルスタッフサック3L
「ツェルトはふたつ一緒に大きめのスタッフサックに入れてます」
③ピーボトル:ナルゲン/フォールディングカンティーン1.5L
「要はおしっこを入れるボトルなんですけど、やっぱり雪山でテントに入ったら絶対外に出たくないじゃないですか。でも、やっぱり寝る前と起きたときに必ずするので。昔からこういうものはあって、実際使ってみたら、もう無しではテント生活できなくなりました。これ1.5Lあるんで3回分ぐらいはできます。特に立山でベースキャンプ張って籠ってる時とか、嵐で2日間外に出れないこともあるんですよ。そういうときに活躍します。このナルゲンは特にピーボトルに最適な形状をしてますね」
④スリーピングバッグカバー:OMM/コアライナー改
下記「UL SKI HIKER’S TIPS」参照
⑤スリーピングマット:サーマレスト/プロライトエイペックス
「以前はダウンマットを使ってたんですけど2回、山の中でパンクしちゃって。そのリスクヘッジという意味で、中にスポンジが入っていてパンクしても最低限の暖かさを保てるインフレータブルマットのプロライトを使ってます。中でもエイペックスはいちばん厚いモデルです」
⑥スリーピングバッグ:ハイランドデザイン/ウインターバック
「文句の付けようのない撥水ダウンの冬季用シェラフ。スリーシーズン用に比べると重いけど、寝袋が暖かければもう何もいらない。寝袋の軽量化は愚かです」

①クッカー:トークス/Tiポット550NH
「1泊なら最小サイズのストーブセットで可。長期縦走時は燃料節約のため、ジェットボイルに変更します。カトラリーは山に行く前にコンビニに寄るんで、その時にもらう割り箸で十分。でもたまに忘れることがあるんで、一応スプーンをファーストエイドキットの中に入れてます」
②保温コジ―:自作
「アストロフォイルで自作しました。クッカーを火から下した際にすぐにコジーに入れれば置き場所に困らないし手でも持てます」
③ストーブ:BRS/3000T
「1泊なら充分な機能。中華製で壊れやすいなどと言われがちですが、自分のは壊れたことないです」
④ガス缶用スタビライザー:ジェットボイル/スタビライザースリットツキ
「雪をどんなに整地しても水平じゃない場合が多くて、ストーブを何度か倒してから持つようにしています。僕のテントは穴だらけです」
⑤ライター&ファイヤースターター
「ビックのライターとバックアップのかれこれ13年くらい使っているファイヤースターター」
⑥ナイフ:100円均一のセラミックナイフのブレード部分
「100均のセラミックナイフの刃の部分、手でパキッと折れるのでここだけ持っていきます。あまり切れ味が良くないから裸で持ってても大丈夫」
⑦保温ボトル:テンピーク/超保温ボトル530ml
「元々ニトリの保温ボトルがすごく性能が良くて、それをOEMで作っていたのがここの会社なんです。山専用ボトルでも6時間後で78度ぐらいだったかな? これは6時間経っても80度以上保てるんですよ。しかも2000円台で買えます。保温材を巻いてありますが、これは性能よりも気分ですね」
⑧水筒:プラティパス2リットル
「これはもうほんと予備で、厳冬期だとあんまり使わないです」
⑨シャベル:ミゾー/チタンスコップ
「シャベルはアックスに連結できるミゾーの古いもの。最近でも類似の製品はたまに見かけます」
⑩プローブ:アルバ/プローブレース240
「僕はひとりで誰もいない場所に行くから人を助けることもないんですけど、一応マナーとして持ってます。でも実は大きなメリットがあって。フレームの無いバックパックの背中に縦に入れてあげると、フレームの代わりになる。硬いものが背中に1本あるだけで、だいぶ違います。これは実際にやってて効果があると思ってます」
⑪手ぬぐい
⑫ファーストエイドキット
「ファーストエイドの中身は過去に必要だったものやこういうのがあったら良かったと思うものは全部持つようにして、また事例が増えたら追加していくみたいな感覚です」
⑬ヘッドライト:ペツル/ビンディー
「夜間行動はしないのでこれで十分」
⑭マット用電動ポンプ:フレックステイルギア/タイニーポンプ
「唯一の贅沢品。空気入れてる間に他の作業ができるんで、1回使ったら手放せなくなりました。マイナス10度を下回ると動作しないっていう話があったんですけど、全然大丈夫です」
⑮モバイルバッテリー:アンカー/パワーコア10000
「主に電熱ゴーグル用なので常時ジャケット内に収納。携帯やライトの充電にも使うので大きめの容量を選んでいます」
⑯トイレットペーパー:キッチンペーパー
「濡れてもぐちゃぐちゃにならないんで、僕はもう10年ぐらい山でのトイレットペーパーとしてキッチンペーパーを使ってます。あと枚数管理もできるので、どれぐらい使うか把握できるのも良いです」
⑰スキー用ワックス
「パンツのポケットに常時収納しています」
⑱スタッフサック:ダイアグナル×ペーパースカイ/カメラシェルター
「これは元々はカメラ用のレインカバーなんですけど、その余計な部分をカットして使っています。スタッフサックだと開け閉め面倒だけど、これはワンアクションで広げて中のものが取れるので楽。予備グローブや小物類を収納しますが、就寝時は衣類を詰めて枕としても使っています」

①ウィンドジャケット:ラブ/ボレアリスジャケット
「これは製品カテゴリー的にはウィンドジャケットじゃなくてソフトシェルなんですけど、防風性も高いです。−10°Cぐらいでも行動中はこれとOMMのコアプラスフーディーだけで、稜線での暴風時とか滑走するときだけハードシェルを着ます」
②オーバーグローブ:テラノバ/トップバック
「防風用の超軽量防水ミトン。常時ポケットに収納してます」
③グローブ:ラブ/ツリーライングローブ
「メインのレザーグローブ。滑走用です」
④予備グローブ:ファイントラック/エバーブレスウィンタートレイルグローブ
「グローブは必ず予備が必要です。あとハイクアップの時もこれを使います。これ薄いけど保温材入りだし、手のひらはちゃんと革になってるんで、スキーで使っても大丈夫。もう最高すぎて、1回なくしたけどもう1回新しく買いました。残雪期だったらこれだけでも全部OK」
⑤インナーグローブ:ワークマン/メリノウールインナーグローブ
「とにかく安価。これで十分です」
⑥VBL対策グローブ:ビニール手袋
下記「UL SKI HIKER’S TIPS」参照
⑦防寒着:アークテリクス/ニュークレイFLジャケット
「化繊ダウン。休憩時にシェルの上から羽織れるようにワンサイズ大きいのを選んでます。天然のダウンだとやっぱり行動中に着れないんで、僕は化繊に全部統一してます」
⑧バラクラバ:丸正ニットファクトリー
「新潟のローカル企業が作っているバラクラバ。肌触りが良くて気に入ってます。厳冬期は常時着用します」
⑨靴下:モンベル/メリノウールスノースポーツソックス
「ふくらはぎまで覆えるメリノのロングソックス。安くて良いです」
⑩保温ソックス:OMM/コアスリープソックス
「就寝時用。プリマロフトアクティブ使用で全然臭くならないとこも気に入ってます」
⑪つま先用ダウン:むさしの山荘/つま先ダウン(ペア)
「すごく寒くなるとやっぱりつま先が寒くなるので持っていきます。吉祥寺に「むさしの山荘」さんっていう老舗のアウトドアショップがあって、そこのオリジナルです」
⑫ベースレイヤー:OMM/コアプラスフーディー
「プリマロフトアクティブ素材で、以前は必ずパジャマ的なものを持って分けてたんですけど、これ全然臭くならないし快適なんで、寝るときも行動するときもずっと着ています」
⑬タイツ:山と道/Light Alpha Tights
「ポーラテックアルファダイレクト素材で、これも行動時も就寝時も常時着用します。以前、他のメーカーの同じようなタイツを履いてたらすぐ破れちゃったんですけど、これは大丈夫」

UL Ski Hiker's Tips

①OMMコアライナーを改造してスリーピングバッグカバーに

「ー10°Cぐらいになると、どんなにテントの中が暖かかったとしても自分の湿気で寝袋が結露して濡れちゃうんですよ。たぶん生地の裏側が結露するんですけど、もうこれは絶対防げなくて。当初は化繊の薄いキルトを寝袋にかぶせて使ってたんですけど、やっぱりちょっと重いし嵩張るんでどうしようかと思っていた時にこれを見つけて。製品のそのままだと寝袋は入りきらないけれど、フロント部分を切ってキルトみたいに改造したら入るようになりました。なので写真は天面と底面を逆さまに置いている状態で、実際に使用する時はフード部分を顔に被せてビビィみたいにして使います。でもビビィと違って通気性がある生地なので、寝ているときの呼気も全部外に出してくれて凍りつかないところも良いです。基本的には結露対策として行っていますが、当然保温力もアップしてくれます。表面には霜がつきますが、翌日ちょっと風にさらしてあげればすぐ乾くし、これは本当に良い。最高です」

②ビニール手袋+使い捨てカイロでホカホカに

「いつもジャケットのポケットにビニール手袋を入れてるんですが、めちゃくちゃ寒くなったら貼るタイプの使い捨てカイロを手首に貼って、その上からビニール手袋をして手袋を重ねて、手に汗をかいても手袋が濡れないようにして使います。いわゆるベーパーバリアライナー(編注:体とインサレーションの間に湿気を通さない膜を設けることで体の出す湿気を膜の内側に留め、ほど良く蒸れさせることで保温性を高めると共にインサレーションを乾いた状態に保つ技術)の進化形ですね。あんまり運動量がないときにベーパーバリアライナーをしちゃうと逆に冷えちゃうんで、使い所が難しいんですけど。この方法なら手首で暖まった血液が循環してくれるんで、体中ポカポカになります」

③パックご飯の省エネ調理方法

「雪山でもこの小さいクッカーとストーブを使うようになったのは、最近パックご飯の新しい調理法を知ったから。お湯を150mlくらい沸騰させて、その上にパックご飯の蓋に十字に切り込みを入れて逆さまにして置いて、5分ほど蒸すと食べられるようになるんです。それにはこのくらいの大きさのクッカーがちょうどいい。パックご飯の底面にも切り込みを入れて、その上に同じく蓋に十字に切り込みを入れたコンビニのパックの惣菜なんかを乗せるとおかずも一緒に加熱できます。長期縦走時は燃料節約のため、ジェットボイルに変更します」

④板とシールを改造してスピーディに着脱

「普通はスキーからシールを剥ぐときってスキーを脱がなきゃいけないんですけど、スキーの先端に切れ込みを入れて、シールも山岳スキーレースに使われるタイプの装着部に改造して、スキーを履いたまんま取ることができるようにしています。山岳スキーレースってスキーで走って競技するスポーツで、その選手たちが使っているスキーはこういう切れ込みが入ったタイプなんです。けど普通は入ってないので、自分で切り込みを入れました。でも、スキーに切り込みを入れるのは緊張しますね(笑)」

UL Ski Hiker推薦!
雪山初心者おすすめルート

「スキーハイキングを想定していますが、それぞれ普通の雪山登山としてもお奨めのエリアです。いずれも積雪が落ち着く3月以降が適期です」

①春の立山1泊2日(北アルプス)
行程:富山側=立山駅~室堂ターミナル、長野側=扇沢駅~室堂ターミナル
初心者レベル★

皆さんご存知の立山室堂周辺は毎年4月15日から入山が可能です。雪山初心者が最初にチャレンジする場所としてこれ以上インフラが整った山域は他にありません。お好きなスタイルで自由に楽しんでください。営業小屋はもちろん、ランチやカフェ利用ができる場所も多数あり、温泉も入りたい放題です。テント泊は雷鳥沢キャンプサイトで可能です。予約なども要りません。人もたくさんいるので何かと安心です。

②平標山1泊2日(新潟県)
行程:平元新道~平標山の家~平標山
初心者レベル★★

一般的にはヤカイ沢を詰めて山頂に至るのが積雪期の定番ルートですが、平標山の家の避難小屋を経由するなら平元新道の林道を進み、登山道左側の尾根から取り付くルートをお奨めします。尾根筋は風が強い反面、雪が風に飛ばされているため降雪時でもラッセルが楽です。可能なら冬季開放された避難小屋で1泊し、周辺の景色を楽しみたいですね。滑走は小屋から少し三国山方面に進んだ先にある岩野沢上部を楽しめます。人の多い山頂周辺とは異なり、このエリアは人も皆無で快適なツリーランが楽しめます。BCスキーではなくスキーハイキングですのでメローなルートをご紹介。

③尾瀬ヶ原/2泊3日(群馬県)
行程:尾瀬戸倉スキー場前~富士見下~富士見峠~長沢新道~尾瀬ヶ原
初心者レベル★★★

夏場は人で溢れる尾瀬エリアですが、GW手前の残雪期は人の気配がほとんどありません。それでも鳩待峠から至仏山に至るルートはトレースがありますが、より静かに山を楽しみたいなら戸倉スキー場前から富士見峠を経由し、尾瀬ヶ原に至るルートがお勧めです。最初から雪の上を歩けるのでゲートから3時間程度のロード歩きが前提となる鳩待峠ルートよりも雪上移動を楽しめます。もちろん帰りは滑って戻れます。尾瀬ヶ原に出たら是非イグルー(かまくら)作りに挑戦してみて下さい。ベースキャンプを設営すれば周辺に鎮座する至仏山、景鶴山、平が岳、燧ケ岳など、この時期ならではの山々とじっくり向き合うことができるでしょう。尾瀬沼を越えて桧枝岐村に抜けるルートもお奨めですよ。

JAPANESE/ENGLISH
JAPANESE/ENGLISH