日本のロングトレイル68本

2023.12.08

山頂を目指すだけがハイキングではありません。垂直方向だけでなく水平方向に歩いたっていい。長い距離を歩いているうちに景色は移り変わり、歴史を垣間見るような史跡に触れ、人々と出会い、歩く旅のなかに「物語」が生まれていきます。

そんな風に、歩く旅の醍醐味を味わえるロングトレイル。「トレイル」とはいうものの、必ずしもすべてが未舗装路でなくたっていい。風光明媚な景観を味わうだけでなく、舗装路で集落や古い町並みを繋ぎ、その地域の歴史、文化、生活に触れることで旅情を楽しむこともできるのが魅力です。巡礼の道、修験道、生活古道など日本ならではの道も含めて、日本全国にあるロングトレイルを紹介します。

北海道エリア

摩周屈斜路トレイル

全長:50km
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北海道の道東エリア、阿寒摩周国立公園内にあるトレイルで、摩周湖と屈斜路湖のふたつのカルデラ湖を渡り歩く。近くには藻琴山や摩周岳など景観の良い山もあるがそれらは通らず、青く透き通る湖のほとりから火山がつくり出す美しい景色を眺めながら、ゆったりと歩くことのできるルートだ。ルート上には野湯や湖畔のキャンプ場、食事に立ち寄れる温泉街もある。高低差が少なく、町や駅近くでの補給もできるため、ロングトレイル初心者におすすめだ。

北海道ならではの大きな空と変化に富んだ景色、アップダウンが少なく歩きやすいトレイルは、他にない魅力だと思います。最も美しいビューポイントは選べないほどたくさんありますが、思い出に残ったのは穴を掘ったら温泉が出る屈斜路の砂湯でのキャンプ。星が湖に映って宇宙にいるみたいで、それを湖畔を掘って作った足湯に浸かってみた景色は忘れられません。川湯温泉にある酒屋さん「にしざわ商店」は、暑くて汗をたくさんかいて歩いている時に現れるオアシス。冷えたビールが沁みました。(HLC北海道アンバサダー 峠ヶ孝高)

北海道自然歩道

全長:4,286km
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日本には全国に長距離自然歩道*がある。そのひとつ、北海道自然歩道は2003年から整備が始まり、計画されている総距離は4,585km。1本の道ではなく複数のルートが北海道全土にあり、全23の路線で構成されている。現在歩くことのできるルートは多くないが、開通しているルートでも天然林主体の森林や湿原、防風林、広大な牧場や畑といった牧歌的な風景など、北海道ならではの自然を味わうことができる。北海道では、里山や住宅街にもヒグマの目撃情報があり、車道や街が近い遊歩道であっても注意したい。

*昭和45年(1970年)に整備が始まった東海自然歩道を皮切りに、環境省が計画し、各都道府県が整備・管理を行っている。現在は全国に10本。北海道、東北、中部北陸、首都圏(関東ふれあいの道)、近畿、中国、四国、九州、そしてみちのく潮風トレイルも別名を東北太平洋岸自然歩道と呼ばれ、これらのネットワーク化された長距離自然歩道に含まれている。

東北エリア

みちのく潮風トレイル

全長:1,025km
都道府県:青森県、岩手県、宮城県、福島県
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2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興に寄与するために環境省が主体となり整備、2019年6月に全線開通した。青森県八戸市蕪島から福島県相馬市松川浦までの太平洋沿いを震災の痕跡に目を向けながらも、漁港や町に住む人々との交流、山海の幸を楽しみながら歩くことが復興にもつながるだろう。ルート、トイレ、水場、補給スポット、食事処などハイカーに役立つ情報を掲載した『Hiking Map Book』や『Data Book』、オンラインマップやGPXデータも用意されており、情報や施設が充実している。また、2023年にはみちのく潮風トレイルの福島県新地町のルートからいわき市までの道のりを繋いだ約200kmの「ふくしま浜街道トレイル」が開通し、みちのく潮風トレイルと合わせて約1,200kmのロングトレイルとなった。

ちょうどいい距離感で共存する里山と街を行き来しながら、三陸の自然を存分に感じられるトレイルです。アップダウンが続く里山を抜け、リアス海岸のウィルダネスを感じつつ、「夜は街で一杯」なんてことができるのも魅力のひとつです。ルートが一部重なっているふくしま浜街道トレイルは、地震と原発の両方の被害に見舞われた福島の今が感じられます。開通したてでルート情報しかありませんが、『Data Book』があるみちのく潮風トレイルとは違い、自分で見つけていく楽しさがありました。(山と道スタッフ 角田)

関東エリア

ぐんま県境稜線トレイル

全長:約100km
都道府県:群馬県
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群馬と新潟、長野の県境にある稜線を繋いだ山岳ロングトレイル。日本でも有数の未舗装路率が高いロングトレイルで、みなかみ町の土合から嬬恋村の鳥居峠まで、標高2,000m級の険しい登山道をゆく。ルートは谷川エリア、三国・四万エリア、野反湖エリア、草津志賀高原エリア、万座・鹿沢エリアの5つに分かれており、谷川連峰の馬蹄形や主脈といった縦走路を含む等、国内のロングトレイルのなかでは難易度が高く山行の経験値が求められる。エスケープルートの少ないエリアもあり、十分な計画・準備と体力を持って挑みたい。草津志賀高原エリアや万座・鹿沢エリアは周辺に温泉地が多く、トレイル前後に名湯を楽しめる。

常陸国ロングトレイル

全長:約105km(2023年現在)
都道府県:茨城県
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茨城県の県北エリア6市町にわたって里山や山麓、観光名所を巡るみち。2026年の全線開通を目指して整備・延伸中で、全長は約320kmとなる予定だ。「茨城県北ロングトレイル」として発足したが、名称変更により現在は「常陸国ロングトレイル」と呼ばれている。里山と侮ることなかれ、細かいアップダウンや急登も待ち構えている。テーマに「里山・地域・環境」を掲げており、里と山を繰り返しながら、最終的には周回コースとなる。この新しいロングトレイルを整備する有志の集い「協力隊」は公式ウェブサイトから誰でも登録でき、トレイルが生まれる過程に自ら参加しながら、新しくできていくトレイルを歩き繋いでいくのもロングトレイルの楽しみのひとつになるかもしれない。

標高500m以下の里山とはいえ、里山特有のアップダウンが続くので歩きごたえは十分なはず。2021年から部分的に開通し、まだ全セクションは開通していませんが、滝や海岸線など特徴的なエリアも歩くこともできます。里山ならではの人との交流も魅力的なトレイルなのでぜひ歩いてみてください。(山と道材木座店長 前原)

関東〜中部〜関西エリア

東海自然歩道

全長:1697.2km
都道府県:東京都・大阪府・京都府・神奈川県・山梨県・静岡県・愛知県・岐阜県・三重県・滋賀県・奈良県
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東京「明治の森高尾国定公園」と大阪の「明治の森箕面国定公園」を結ぶ、1都8県2府に及ぶ壮大なロングトレイルであり、全国の長距離自然歩道の第1号。東海自然歩道の構想は遡ること50年以上前、1969年(昭和44年)に当時の厚生省国立公園部の担当者がアメリカのアパラチアントレイルの視察をしたことがきっかけだという。国立・国定公園内から整備がはじまり1974年に完成し、その際に江戸時代に整備された五街道のひとつ、江戸から京都までの「東海道五十三次」の現代版であると謳った。日本におけるロングトレイルの草分け。歴史が産んだ道とは異なるものの、古戦場や歴史残る名勝地、宿場町への立ち寄りなどの歴史探訪もふんだんに楽しめる。

関東に住むハイカーにとって、東海自然歩道は身近な存在だと思う。私がいつも歩く高尾や丹沢、富士山周辺でも、東海自然歩道の標識を頻繁に見かける。たまに足を伸ばす京都や三重など、全く意図せず出かけた山域で標識を見かけ、ここもルートの一部なのかと驚かされることもある。全長約1700kmという長大なトレイルで、全ルートを踏破した人は多くないと思うが、それでも関東、東海中京、関西などルート沿いに住む多くのハイカーがこの自然歩道に親しんでいるのではないか。初めて箕面の森に行った際、風格ある起点の石柱を見て、ここから高尾までトレイルがつながっているということに感慨を覚えた。いずれ通しで踏破してみたいルートである。(山と道ラボ 渡部隆宏)

中部エリア

信越トレイル

全長:110km
都道府県:長野県、新潟県
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西は斑尾山から東は苗場山まで連なる全長110km。ロングトレイルを日本に広めてきた第一人者である作家、故・加藤則芳氏が発起人となり、開通まで尽力した。日本に長距離自然歩道はあったものの、アメリカをはじめとする海外ロングトレイルのような文化の醸成や継続的な運営管理の組織づくりを目指したモデルケース的なトレイルだ。豪雪地ならではのブナの原生林、初夏には鮮やかな新緑、秋には彩り豊かな紅葉、秘境と呼ばれる秋山郷の集落などの魅力が詰まっている。指定テントサイトが整備されており、信越トレイルクラブ加盟宿へ宿泊すれば最寄りのトレイル入り口まで送迎してくれるサービスもあるなど、人々が歩く旅に一歩踏みだすための様々な工夫がなされている。

苗場までの延伸前の10年前に歩きました。また今年の11月には長野駅からのあまとみトレイルから続けて歩く形で斑尾から希望湖までの1セクションのみ歩きましたが、公式サイトの情報の充実や道標やテント場の整備も進み、格段に歩きやすいトレイルになっていました。そんな所にもこのトレイルを定着させていくための運営団体の継続的な努力を感じます。延伸前は距離も短く、同じような標高が続き景色もあまり変わらないので、正直ちょっと退屈な面もありましたが、延伸後はいったん山を下りて秋山郷を通過したり、苗場山に登頂したりと大きく魅力が広がり、さらに斑尾山の起点で繋がるあまとみトレイルも歩くことでよりバラエティ豊かな景色や自然が楽しめる本物のロングトレイルになったのではないかと思います。(山と道JOURNALS編集長 三田正明)

美ヶ原高原ロングトレイル

全長:45km(しののめの道も含めると約90km)
都道府県:長野県
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長野県松本市の美ヶ原を中心に、苔むす森林とアルプスの展望を望む稜線で構成されている。全長45kmと距離は短いが、八ヶ岳中信高原国定公園にある高山帯はアップダウンがあり歩き応えは十分だ。起点と終点を山麓で繋ぐサブルート「しののめの道コース」も合わせて歩くことで1周することができる。里山に始まり、美ヶ原エリアに足を踏み入れると視界を遮るものがない広大な稜線となり、南北アルプスや富士山、八ヶ岳など360°の絶景が続く。アクセスは良くないが山麓には複数の温泉地があり、松本の市街地にも足を運びやすい。ただ、ルート上に幕営地や宿がないため、今後の整備や案内に期待したい。近隣には美ヶ原から霧ヶ峰まで続く全長38kmの「霧ヶ峰・美ヶ原 中央分水嶺トレイル」もあり、さらに霧ヶ峰の先には八ヶ岳連峰も続いているので、トレイルとトレイルを足し合わせた旅を計画してみるのも面白いだろう。

7月下旬頃に北八ヶ岳 麦草峠をスタートし、美ヶ原高原ロングトレイル と一部コースが重複する霧ヶ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイルの大門峠〜八島湿原〜和田峠〜扉峠〜山本小屋までを繋いで約52kmを1泊2日で歩いてきました。このルートの印象はとにかく気持ちが良い場所が多いことです。ヨーロッパのアルプスを彷彿させる美ヶ原の風景をはじめとする景色は、とにかく見どころ満載で疲労も感じないくらい歩くのが楽しいトレイルでした。テント場がないのでトレイルからは少し外れますがキャンプ場を利用すると良いと思います。キャンプ場の方も親切でロケーションも良くおすすめです。(山と道材木座スタッフ オウジ)

関西エリア

熊野古道

全長:総計約1,000km
都道府県:和歌山県・三重県・奈良県
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和歌山県紀伊半島にある熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)へ向かう霊場を結んだ参詣道。ユネスコ世界遺産に登録されているエリアを含み、外国人の人気も高い日本が誇る歴史あるロングトレイル。高野山と熊野本宮大社を結ぶ「小辺路」のほか、「中辺路」「大辺路」「伊勢路」「紀伊路」と熊野三山を結ぶ修験道信仰の道「大峯奥駈道」など6つのルートがある(熊野古道のルートは5つとし、大峯奥駈道は紀伊山地の修験道とする説もあり)。熊野三山を参詣すること「熊野詣」といい、平安時代には多くの参詣者が中辺路を通って本宮大社、速玉大社、那智大社を参って京の都に戻る往復約600km、約1ヶ月の旅程を歩いたという。それぞれのルートに魅力があり、歴史に思いを馳せて歩きたい。

古く参詣道として栄えた熊野古道。中でも小辺路は1,000m以上の峠を3度も越えながら、山間の素朴な集落を幾度となく通過します。四季折々の営みを感じながらの山行はタイムスリップしたような感覚を覚えますが、中でも果無集落の美しい里山の風景は見所のひとつです。また、修験道としても有名な大峯奥駈道は神仏習合の深いかかわりでできた歴史があり、歩いていると背筋が伸びるような感覚になりますし、避難小屋では護摩を焚きお祈りをする人と会うこともありました。険しい稜線に突然現れる釈迦ヶ岳の釈迦如来像は、どうやってこんなところに建てたんだ! と愕然とするほどの迫力。山上ヶ岳付近の苔むした神秘的な森にも心奪われます。熊野本宮や玉木神社はもちろんですが、修行場や祠など見所を挙げればきりがありません。熊野本宮から近くには、川湯温泉や湯の峰温泉など名湯もあるので、旅の疲れを癒すのにもってこいです。(HLC関西アンバサダー 中川裕司)

京都一周トレイル

全長:132.7km(京北コース含む)
都道府県:京都
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京都の市街地を囲む山々を繋いだ約84kmの東山・北山東部・北山西部・西山コースと京北地域の周回コース約48.7kmからなる総距離132.7kmのトレイル。京都の一大観光地である伏見稲荷大社や嵐山、苔寺、比叡山、鞍馬、大文字などを通過するが、一方で山中には観光客であふれる市内の賑やかさから想像もつかない静かな自然が広がり、樹林帯や清流、街を見下ろすビュースポットもある。多くの登山口が、街からすぐにアクセスできる点も魅力のひとつ。バスなどの交通網も充実しているため、市内に宿を取り、寺院巡りやグルメを楽しみつつ歩くことができる。

初めて京都一周トレイルを通して歩いたのは2022年の初夏、ノンストップで往復150kmあまりを歩くという酔狂なイベントだった。伏見桃山駅をスタートし、酷暑の中で東山・北山・西山をめぐり終点の苔寺(上桂駅)で折り返し、同じルートを逆走して伏見稲荷大社にゴールするという行程で、所要40時間ほど。この過酷な経験のおかげで、トレイル上のさまざまな名所が鮮明に脳裏に焼き付いている。京都一周トレイルは道標も明確で、観光地の多くを網羅する敷居の広さがある一方、素朴な町並みやワイルドな自然といった素の京都を楽しむことができる奥深さも魅力だ。特に北部エリアなど、公共交通機関では行きにくいような場所にある名所をトレイルを通って効率的にめぐることができるのはハイカーならではの特権だと思う。(山と道ラボ 渡部隆宏)

中央分水嶺・高島トレイル

全長:80km
都道府県:滋賀県
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中央分水嶺とは、日本を日本海側と太平洋側を二分する稜線、分水嶺(分水界)のこと。日本列島を貫く分水嶺のうち、滋賀県の高島市にある山道が高島トレイルで、古くは荷物の運搬や暮らしのなかで使われていた道を整備したという。トレイル率が高く、景観の良い稜線からはびわ湖や若狭湾が見え、植生豊かな森林ではありのままの自然を味わえる。距離80kmに対して累積標高は8,000m前後と言われ、水場も少なくハードなルートだ。避難小屋や指定テントサイトはなく、テント泊する場合には近隣のキャンプ場あるいは林道・車道脇が推奨されている。若狭湾で水揚げした鯖などの海産物を背負って京都まで運んだという福井から京都までの鯖街道(全長約70km)と交差するため、高島トレイルと繋いで歩くツワモノもいる。

南に琵琶湖、そして北に日本海を望みながら歩く美しい稜線は四季を通じて楽しめて、琵琶湖越しに昇る朝日も美しく、雄大なスケール感を味わえる関西屈指の人気山域です。セクションごとに区切って気軽に歩くこともできる一方で、総距離80kmを繋いで全踏破しようとすると表情は一変、アップダウンも激しく木々をかき分けるような「山の本来の姿」のなかを歩くことになります。植生が豊かな上に歴史深い側面もあり、個人的に非常に心に残るトレイルとなりました。自然、文化、地形など多様な山の表情を楽しみつつ、更に続く「日本の背骨」とも言われる中央分水嶺を京都または福井方面へと歩みを進めてみるのも面白いかもしれません。(山と道京都スタッフ ジョージ)

中国・四国エリア

山陰海岸ジオパークトレイル

全長:230.9km
都道府県:京都府、兵庫県、鳥取県
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コンセプトは「海をわたり、街をつなぐ」。山陰海岸ジオパークは、ユネスコ世界ジオパークに認定されており、奇岩、洞門、断崖絶壁、砂丘など独特な海岸地形を楽しめる。27のセクションに分けられており、各コースには電車やバスでアクセスできる最寄駅が設定されている。海岸線を歩くロングトレイルはみちのく潮風トレイルなど複数あるが、日本海側を歩く山陰海岸ジオパークトレイルは太平洋側とはまた一味違ったダイナミックさが魅力だ。やはり日本最大級の海岸砂丘である鳥取砂丘は見どころのひとつだろう。

石鎚山系ロングトレイル

全長:80km
都道府県:愛媛県
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標高1,500mを超える山々が連なる愛媛県と高知県の県境を東西に繋いだ四国初のロングトレイル。東赤石山から笹ヶ峰、伊予富士、瓶ヶ森と続く。赤石山系の険しい岩稜帯から熊笹のなだらかな平原が広がる瓶ヶ森の雄大な景色、そして日本百名山のひとつでもある鎖場を有した西日本最高峰の石鎚山の迫力など、飽きることのない変化豊かな10セクションから成る。

石鎚ロングトレイルは、四国の屋根として東西に延びるパノラマトレイルです。岩稜帯、広大な笹原、ブナの原生林など変化に富んだ道のりで、眼下に瀬戸内海や太平洋を望むことができるのも魅力。赤石山系は、個人的に四国でいちばんと言っていいほど大好きなエリアです。アルペンムード満点の岩稜帯越え、絶景を望む西赤石山、歴史漂う銅山峰でのテント泊等とにかく最高! 瓶ヶ森から見ることのできる、西日本最高峰石鎚山の神々しい姿は世界レベルの美景だと思います。(HLC四国アンバサダー 菅野哲)

四国八十八箇所巡り

全長:1,400km
都道府県:徳島県、高知県、愛媛県、香川県
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ロングトレイルと呼ぶか否かは賛否あるかもしれないが、世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステーラは「巡礼路」と呼ばれ、世界有数のロングトレイルである。そして日本の巡礼の道と言えば、四国八十八箇所巡り(お遍路)である。人間には88の煩悩があり、四国霊場を88ヶ所巡ることにより煩悩が消え、願いが叶うといわれている。お遍路を順にすべて歩くことを「通し打ち」と言い、40〜50日かかると言われている(セクションハイクのように区間ごとに歩くことを「区切り打ち」と呼ぶ)。四国八十八箇所を巡る人をお遍路さんと呼び、白衣・袈裟や笠を身につけ、杖、念珠を携行し、お経を読んで御朱印をいただく。また、お遍路さんに見返りを求めずおもてなしをする「お接待」という独自文化があり(食べ物や宿の提供等)、奇しくも海の向こうの文化であるトレイルエンジェル(アメリカのロングトレイルで物心両面でハイカーをサポートする人々のこと)に通づるものがある。

以前、雑誌の取材で数日だけ遍路道を歩きました。でも、天気はあいにくの雨。これでは良い記事が作れないと気分が落ち込み、晴れないかと願うもののずっと雨は降り続けました。でもお寺を何ヶ所も巡りその度に御堂で般若心経を唱えるうちに、もう記事がどうなろうが受け入れよう、この雨を受け入れようという気持ちになってきました。するとさっきまでの落ち込みがどこかに行き、不思議と平静な気持ちで雨の国道をどこまでも歩いていけるような気分になりました。その時、そもそも自分がお遍路で美しい景色を見たり楽しい思いをしようとしていたことが間違いだったということに気づきました。遍路道はあくまで巡礼の道であり、修行の旅なのです。たった数日の旅でしたがその経験は自分の中で大きく残っています。やっぱ遍路道はヤバい!(山と道JOURNALS編集長 三田正明)

九州・沖縄エリア

国東半島峯道ロングトレイル

全長:135km
都道府県:大分県
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峯道とは、僧侶が180余りの霊場を険しい山々を経て歩く、10年に一度行われる伝統的な荒行「六郷満山峯入行(ろくごうまんざんみねいりぎょう)」の道のり。その峯道をベースに、トレッキングやウォーキングの醍醐味を味わうことのできる登山道や遊歩道を加えて歩きやすく整備されたのが国東半島峯道ロングトレイルである。岩や巨石に彫られた迫力ある磨崖仏や鬼が一夜にして積み上げたといわれる石段、修行を想起する鎖場、岩に埋もれるように建つ五辻不動、仁王像など、寺と神社が共存した神仏習合ならではの独特な雰囲気を醸し出すが、山麓では世界農業遺産に認定されているのどかな田園風景が迎えてくれる。ルート上に幕営地や宿はないため、スルーハイクするには近くのキャンプ場や宿泊施設を利用する必要がある。

九州自然歩道

全長:総計3,000km都道府県:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
九州自然歩道フォーラム  九州自然歩道ポータル

「やまびこさん」の愛称で親しまれる九州自然歩道は、日本で2番目(1980年)に開通した長距離自然歩道。九州7県をぐるっと一周するようにルートが引かれてる。大きく二分すると西ルートと東ルートがある。阿蘇や九重、霧島連山といった人気の山々だけでなく、地元の人々に愛される自然公園に散策路、里山、渓谷、船を使って無人島「野崎島」に渡って島を南北に往復するコースもあり、ピークハントだけでは味わえない旅が待っている。全線開通から長い年月を経て、一部では道標の老朽化や通行困難な箇所などもあり、関連団体や有志によって再整備が行われながら、保持されているのも特徴のひとつ。各県のルートを踏破するか、全ルート踏破するとそれぞれ踏破証や記念ワッペンを手にすることができる(有料)。

起点の福岡の皿倉山から大分の九重連山まで歩きました。山だけではなく一般道も多く含み、街と山を繋いでいきます。観光名所や温泉街、道の駅も通るのでロングトレイルならではの「旅」を感じられます。九州屈指の有名な山域も歩きますし、今ではほとんど歩かれていなさそうな荒れた藪の道などもあり、飽きることがありません。そして何より「人」。歩いている間に多くの人の優しさに触れました。「頑張ってね」とお菓子やコーヒーを頂いたり、極寒の夜に家に泊めてくださる方もいました。歩いたこと以上に出逢った人たちとの思い出の方が強いかもしれません。人との出会いもロングトレイルの醍醐味です。山だけでなく旅するように長く歩きたい方におすすめです。(山と道京都スタッフ あやなん)

世界自然遺産 奄美トレイル

全長:総計550km
都道府県:鹿児島県奄美諸島
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奄美群島にある奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8島全14エリアの奄美群島をつなぐ自然歩道として2021年に開通。島間は船で移動する必要があり、一線で繋ぐスルーハイクとは異なるが、日本で唯一の複数の島を巡るアイランドホッピング形式のロングトレイルだ。絶滅危惧種の希少な生物が生息する奄美大島と徳之島は世界自然遺産に登録され、固有の生態系を有する秘境が多く存在する。亜熱帯の森、マングローブ原生林、珊瑚礁の島、南国の花々、青く輝く海、白い砂浜、など南の楽園ならではの魅力がある。島によっては海辺に無人の野営場もあるが、ハブが生息する島では、必ずキャンプ場あるいは民宿などを利用し、十分に用心したい。

ハブがいないと言われている沖永良部島セクションを3泊4日で歩きました。知名町と和泊町に小さな市街地がありますが、それ以外は何もなく、ただひたすら青い海を眺めながら海岸線をぐるりと一周歩きます。岬で一息つくとウミガメが泳ぐ姿が見られ、干潮時には一面の珊瑚礁に出会い、水平線を赤く染める夕日の美しさには言葉を失いました。2泊は浜辺の無人野営場。もう1泊は村のご夫婦に声をかけられ一緒に潮干狩りをしたのち、立派な家に泊めていただき採れたての海鮮をご馳走になりました。「よーりよーり」は、奄美の方言で「ゆっくりゆっくり」という意味。温かい島の人々と触れ合いながら、日常を忘れてゆったり島時間を楽しみながら歩くのがおすすめです。(山と道JOURNALS編集部 中島英摩)

その他の日本のロングトレイル

本記事を作成するにあたり、全国のロングトレイルを全力でリサーチしました。開通したばかりのものから、整備中のもの、歴史街道、古道まで……日本にこんなにもロングトレイルがあったとは、驚きです。編集部が調べた日本のロングトレイル一覧を掲載します。ぜひ次の旅の参考にしてください。「こんなのもあるよ!」という情報があればお寄せください。

※山と道JOUNALS編集部調べ。公式ウェブサイトが消滅しているものや、更新が見られないものは除外しています。古道や街道については、山道や峠越えがあるものを選定しました。

トレイル名をクリックすると各トレイルのウェブサイトにジャンプします

日本全土
JAPAN TRAIL(計画・整備中)

北海道
ニセコロングトレイル(計画中)
屈斜路湖カルデラ外輪山トレイル(整備中)
天北トレイル(計画中)

東北
ふくしま浜街道トレイル(220km)
会津トレイル(計166.6km)
岩手山 八幡平 安比高原50kmトレイル(50km)
東北自然歩道-新奥の細道(一部開通-総計4,369km)
白鷹丘陵トレイル(整備中-31km)
蔵王国定公園ルート(一部開通)
むつONEトレイル(250km)
羽州街道(497km)
あおもり松前街道(120km)
会津銀山街道(72km)
栗駒山麓ジオトレイル(整備中)
磐梯 吾妻 安達太良ボルケーノトレイル(整備中)

関東〜中部〜関西
中山道(534km)

関東
南房総ロングトレイル(35km-最長100km予定)
首都圏自然歩道(1,803km)
大山街道田村道(約70km)
秩父三十四所観音霊場(約100km)

中部
富士箱根トレイル(43km)
富士山ロングトレイル(150km)
茶の道ロングトレイル(43km-最長100km)
スノーカントリートレイル(307km)
あまとみトレイル(86km)
浅間・八ヶ岳パノラマトレイル(37.8km-最長120km予定)
南アルプスフロントトレイル(整備中-70km予定)
霧ヶ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル(38km)
塩の道トレイル(120km)
金沢トレイル(44.9km-最長70km予定)
ふくいSATOYAMAトレイル福井平野周遊・戦国ロマンコース(61km)
信飛トレイル(計画中-115km予定)
名田庄トレイル(整備中)
中部北陸自然歩道(4,091km)

関西
おおさか環状自然歩道(300km)
ダイヤモンドトレール(45km)
比良比叡トレイル(約55km)
近畿自然歩道(3296km)
西国三十三所(約1000km)
古座街道(80km)
淡路島ロングトレイル(計画中)
鯖街道針畑越ルート(72km)

中国
伯耆国ロングトレイル(65km/35km)
とっとり横断ロングトレイル(144km)
中国自然歩道(2,295km)
広島湾岸トレイル(293.8km)
萩往還 (53km)
大山道ロングトレイル(計画中)

四国
四国自然歩道(1545.6km)

九州
霧島・えびの高原ロングトレイル(計画中)

JAPANESE/ENGLISH
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