HLC関西・四国
1泊2日ミートアップハイキング報告

2024.09.12

現在、日本各地に台湾を加えた8つの拠点で活動を行なっている山と道HLCでは、ULハイキングが繋ぐコミュニティ作りを目指して日々、様々なプログラムを行なっています。このHLC Reportでは、そんな活動の内容をシェアしていきます。

今回は、2024年6月1ー2日に徳島県神山町で実施したHLCとして初のエリア共催プログラム『HLC関西・HLC四国 1泊2日ミートアップハイキング』をHLCスタッフの日野藍が取材。当日はHLC関西・HLC四国から各10名ずつの参加者が集い、神山町を拠点に活動する「神山ハイキングクラブ」の協力も得ながらキャンプとハイキングでワイワイと交流しました。

HLCの中でも特に元気と言われる2エリア。ハイカーが集まると、どんな化学反応が起こるのでしょうか? 


取材/文/写真:日野藍

キャンプとハイキングで交流!
ミートアップハイキング

始まりは乾杯から

HLC四国のメンバーとHLC関西のメンバーが山を越え海を越え橋を渡り徳島で大集合。会場は、徳島県神山町の標高1,000mにある「四国山岳植物園 岳人の森」。神山町をベースに活動する「神山ハイキングクラブ」推薦のキャンプ場だ。1日目はここでテント泊、2日目は近くの雲早山(くもそうやま)へハイキングをして交流を深める。

山と道HLC関西アンバサダーの中川裕司と四国アンバサダーの菅野哲の開会の言葉の後、早速乾杯! みんなで焚き火の準備をして、キャンプスタート。はじめましての人ばかりだったけど自己紹介だけでもみんな面白く、ハイカー同士共通の話題で打ち解けるのも早い。すごい。場全体が一気に混ざり合っていく。

山と道HLC四国アンバサダーの菅野哲(左)とHLC関西アンバサダーの中川裕司(右)。

かんぱーい! マイカーの人、名古屋から駆けつけた人、徳島でサーフィンをしてから来た人、バイクで来た人とここに辿り着くまでも各自それぞれ。

合同キャンプの風景。エリアをミックスさせたグループで車座になってお喋り。ちなみに、同じシェルターがひとつもなかったようで、たまたまだろうけど面白かった。

歓談中。それぞれのULハイキングやローカルの話、お酒や食べ物の話で盛り上がる。

ULライフ研究集団「神山ハイキングクラブ」

そして、ここ神山で活動する「神山ハイキングクラブ」について、そのメンバーであり山と道HLCプロジェクトディレクターでもある豊嶋秀樹から紹介があった。

「ここ神山はまち全体に光ファイバーが敷かれ、IT企業のサテライトオフィスの誘致もしてて、最初にお話のあった神山在住の真鍋太一くんの会社のオフィスもあります。彼とは別のプロジェクトで知り合って『神山でULハイキングをテーマに何か面白いことができたらいいね』という話になり、ULハイキングの考え方や方法論を彼らのビジネスとか働き方とかライフスタイルと掛け合わせて探っていこうよという観点で活動しています。ULハイキングの面白さは、衣食住全部をミニマムにした状態で背負って自由にいろんなところに行けることだから、まず「ULハイキング的衣食住」をやってみようってところから活動はスタートしました。第1回目はエナジーバーのワークショップ。健康的でおいしいものを作ろうと地域の方も交えて行いました。今回作ってきたのでぜひ試食してみてください。」

「第2回目は『住』としてタイベックでタープを作り、第3回目は『衣』としてそれぞれで日帰り用のバックパックを作りました。そして新たな展開としては、神山の『神山まるごと高専』の授業として生徒さんたちとULハイキングの方法を、生徒たちの生活に置き換えて考えてみるような授業を行いました。こんなふうに、最終的には衣食住の試みを山歩きに活用する、ULハイキングを研究する会、活動体として活動しています。」

ULハイキングを「衣食住」のカテゴリーで実践し、ハイキングだけでなくライフに応用できること、また、それをここにいるような仲間たちと一緒に深められるのはすごくハッピーなことだなと聴きながら私は考えていた。

神山ハイキングクラブの成り立ちや活動についてプレゼンする豊嶋。

添加物を用いず体になるべく負担をかけない、豊嶋さん自作エナジーバー。

おいしい! レシピ知りたい! と皆さんにも大好評。

ULハイカーの視点で開発されたHIKER’S GINも神山ハイキングクラブでの発案から始まった。同クラブ所属のショーゴさん。

豊嶋さん、原澤さんのお話に、参加者の皆さんは時おり「ほー」と関心しながら聞き入っていた。

「軽っ!」HLC関西のななこさん。実際に豊嶋さんが山で使い破損したタープをアップサイクルしたナップサック。もともとの構造やパーツが活かされ下のコードでレインウェアやスリーピングマットを装着できる。重さは37gで、日帰りハイキングには全く問題なかったそう。

ULハイキング談義でお互いを知る

キャンプでは、参加者の皆さん同士もULハイキングや山の話で大盛り上がり。いくつか会話に耳を傾けてみた。神戸から来た三枝さんは、10年来のお友達とここで偶然会うというミラクルが。

「今、アルパイン系の山のスクールにも行っていて、ULハイキングの考えといいとこ取りをして自分のスタイルを作れたらって思ってます。」

そのお友達のかなさんは元看護師で、たくさんの方の人生の最期を見届けた経験から、「足るを知る」を自然と考えるようになったといいます。

「今や、生きること=ULハイキングですね。ハイキングで背負う重さは13kgから3kgになりました。何が必要か、何が好きか。人生の終わりになればなるほど、いらないモノのことを考える時間はないなって。」

三枝さん(左)とかなさん(右)はHLC関西から参加。

同じくHLC関西のプログラムから参加し始め、岡山への転勤を機にHLC四国のプログラムにも参加するようになったサントーさんは、それぞれのHLCについて感じていることを語ってくれた。

「HLC関西はやっぱり評判通りアンバサダーの中川さんがええ感じにスパルタで、四国はPRACTICEプログラムに参加したメンバーのLINEグループが今も動いてて人の繋がりが強かったりと、それぞれに良さがありますね。」

全国各地にも山旅に行くサントーさん(中央)。関西・四国でおすすめのトレイルは「全国屈指のトレイルやと思います」と剣山ー三嶺(徳島県)の縦走路を挙げてくれた。

参加者で唯一バイクで(しかも奈良から!)参加のヤマさんは、日常から離れて歩くことに集中できるソロハイキングが好きだがHLCに参加するメリットも感じているそうだ。

「ULハイキングをひとりで深めるのには限界があって、中川さんや山と道京都店のスタッフからアドバイスをもらっています。『フロアのあるテントやったらグランドシートはいらない』とか、HLCはひとりやと気づかんことを教えてくれる場所ですね。」

ヤマさんおすすめの山は奈良の大峯奥駈道や八経ヶ岳。厳かな雰囲気の山に惹かれるそう。

みんなの兄貴分、HLC関西から参加ながらHLC四国アンバサダー菅野とも交流のあるちっちさんの軽やかなライフスタイルも素敵だった。

「体を動かすんが好きで、大阪から京都までの片道50kmを毎日自転車通勤してます。千里川、淀川、桂川沿いは気持ち良くて。今日ももうひとりの参加者と徳島でサーフィンして来たで。HLCはいろんな人と知り合えるから楽しいし、こういうワイワイ系のプログラムは特にええなと思いますね。」

普段は企業の管理職を務め、メンバーをハイキングに連れて行ってもいるというちっちさん。

東かがわ市在住の多田さんはランも趣味で、家から60km走ってきたらしい。

「地元では毎週1回、家の裏山を山仲間と走ってて、ランのコミュニティが作れたらええなって思ってます。今日みたいな場もすごく楽しくて、勉強になります。ここにも来てる妻のよーこちゃんとはトレランの大会で知り合ったんですけど……(以降、馴れ初めの話。ラブラブなご夫婦で羨ましかった!)」

左から、よーこさんと多田さん。夜が更けてさらに交流は盛り上がった。

宴は進み、焚き火の炎に照らされた顔を見て、どちらからの参加者かわからない、まあどっちでもいいか、と思えるほどにすっかり打ち解けた。ULハイキングという同じ話題で心を交わすことで場が一体感を帯び、みんなが神山の自然に溶け込んだような不思議な気持ちになった。

爽やかな翌朝、多田さんはコーヒーをひいて、みんなにふるまってくれた。近くを軽く走ってきた人、岳人の森を散策した人、けん玉を披露する人。みんなそれぞれのいい朝時間が流れる。

2日目はローカルの雲早山へ

そして、翌日は雲早山ハイキングへ。何台かに乗り合わせたクルマを少し走らせる。トレイルは滝、鉄塔道、トラバースありとバリエーションに富んでいた。あちこちでおしゃべりに花を咲かせながら、まぶしい新緑の黄緑色を背景に進んでいく。山頂はガスっていて、神山ハイキングクラブのショーゴさんは「徳島沖の海や山並みを見てもらえなくてちょっと残念」と言って、すぐ「まあ皆さんに僕らの活動する場所に来てもらえただけでよかったです、また来ていただけたらな」と結んだ。

雲早山ハイキングの行動時間はそう長くない。さすがULハイカー、サコッシュ、ウエストポーチ、トートバッグなど軽装の人が多かった。

軽い装備で会話をしながら軽快なハイキング。やっぱりノリの良さ? HLC関西勢は元気なポーズをいっぱいくれた。

雲早山の山頂にて集合写真「HLC〜!」。ガスってても楽しい。

神山町のお菓子で小休憩。こんなところからもローカルを感じる。

「寒くなんかないで!」メンバーを待って停滞中でも元気なコンビ。

混ざり合ったコミュニティ、感じた手応え

下山後、解散のあいさつ。「このメンバー同士で、四国と関西をまた行き来してもらえたら」。

あたたかなムードの中、締めのあいさつをする両アンバサダー。

HLC発足から数年が経ち、ようやくコミュニティが育ってきたタイミングで行われた今回の共催プログラム。四国アンバサダーの菅野も当初は心配もあったものの、予想以上の盛り上がりに顔をほころばせていた。

「ハイキングも参加者同士で話して助け合いながら楽しくできたし、本当に最高でしたね。なんせ関西チームは、ノリがやばい(笑)。楽しくノリよく場を引っ張ってくれて、四国の参加者の皆さんを引っ張ってくれました。『きんにくん(中川の愛称)』は、ハードなプログラムを運営する「鬼軍曹」と言われながらもチームをまとめて、すごく楽しいコミュニティを作ってる。羨ましくもあり、ご一緒させてもらってすごく楽しかったです。」

続いて関西アンバサダーの中川も共催プログラムから感じた手応えを語った。

「みんなが和気藹々と混ざっていくのを見ていて幸せな気持ちになりました。何で今まで開催してなかったんやろうって思うくらい。HLC関西・四国両方のプログラムに参加してくれてる方もいてたし、関西と四国は距離も近いのでこういうプログラムはまた企画したい。テツさん(菅野)は昔からの仲やけど、ピースフルで、みんなに慕われてるなってすごく感じました。自分としても山道具屋の先輩で、いい兄ちゃん的存在です。」

菅野(左)と中川(右)。おつかれさまでした!

参加者の皆さんからも、「自分にとって定番の山を違う地域の方は知らず、逆もまた然りで面白かった。行きたい場所が増えました」(HLC関西・ヤマさん)「前日夜から車で乗り合わせて行くと四国もかなり行きやすいから、もっと来たいですね」(関西・ヨダマキさん)「紹介してもらったトレイルバーを作ってみたい」(HLC関西・橋本さん)「関西はショップ巡りをしてばかりでしたが、六甲はさっそく歩いてみたい」(HLC四国・らうさん)というこれからのハイキングを楽しみにする声や、「目指したいと思えるかっこいい大人に出会えた」(HLC関西・ヒデキさん)というハッピーな声も聞かれた。

後日談だが、HLCでの共催プログラム、今年度は続いて8月3ー4日に『HLC東北・HLC北関東1泊2日ミートアップハイキング』が山形の蔵王で開催された。宴会好きのHLC東北、ギア談義に花咲くHLC北関東と、それぞれの個性が発揮されつつも、ハイカーひとりひとりが出会い、いくつものつながりが生まれ、ミートアップハイキングがもたらすコミュニティの可能性を感じることができた。

HLCはせっかく各地にあるんだから、もっといろんなミートアップができればいいなあ。ここまで読んでくれた皆さんも、機会があればぜひその一員になってみてほしい。これまでに開催されたHLCのミートアップは、街で行う交流会がメインのもの、今回のようにキャンプやハイキングを絡めたものがあるが、また違う形のものも生まれるかもしれない。参加すれば、きっとこれまでに体感できなかった世界の広がりがあるはず。

最後に、このプログラムの様子は映像でもお届けしているので、ぜひご視聴を!

日野藍
日野藍
山と道HLC情報発信担当/フリーランス編集者・デザイナー。 愛媛県在住。高校時代の部活は応援団。田舎を出たくて関西に進学し、デザイン会社のディレクターとして東京や大阪で働く。2014年にUターン後は地元西条市の広報担当を7年務め、まちの魅力を知るために登った石鎚山をきっかけに山にハマる。地域と人に興味があり、2023年の山道祭では地元コーディネーターとして協力。同年四国のアウトドアがテーマの雑誌『YON』を創刊。好きな人たちをクリエイティブで応援しながら、四国を軸足とした様々なエリアでの体験を仕事や暮らしに取り込んで日々を楽しんでいる。
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