山と道の香港行2024

(前編)ランタオトレイルでのハイキング

香港のトレイルやハイカーと出会ったmorimoriポップアップツアー報告
構成/文:三田正明 李生美
写真:三田正明 ドナルド・ヤン
2024.09.17
山と道の香港行2024

(前編)ランタオトレイルでのハイキング

香港のトレイルやハイカーと出会ったmorimoriポップアップツアー報告
構成/文:三田正明 李生美
写真:三田正明 ドナルド・ヤン
2024.09.17

去る6月、山と道は5年ぶりとなる香港でのポップアップショップとイベントを、ULハイキングギアのセレクトショップmorimoriで行いました。

イベントだけでなく、香港の山もハイキングすることができた今回の香港行。現地のハイカーとも交流が進み、非常に有意義だった旅の顛末を、参加したスタッフの座談会でワイワイと振り返りました。

前編となる今回は、香港を代表するトレイルのひとつ、全長70kmのランタオトレイルの一部を歩いた模様をたっぷりの写真と動画をまじえてレポート。香港の「暑さ/熱さ」をどうぞ感じてください。

5年ぶりの香港

三田 6月に山と道として5年ぶりに香港に行ったんですが、今日はそこに参加したメンバーで振り返りをしていきたいと思います。代表の夏目、スタッフのキムとJK、山と道京都店長ジョージ、そして私、山と道JOURNALS編集長の三田という面子でやっていきます。

今回の香港遠征メンバー。後列左から三田、キム、JK、ジョージ、前列の左に夏目。前列右の山と道材木座スタッフ角田はスケジュールが合わず今回の座談会は欠席。

キム 今回の香港は、morimoriというULハイキングギアを扱うセレクトショップで、山と道のポップアップショップとトークイベントを行うために行きましたね。

三田 5年前は今はもう閉店してしまったThe Cave by Mother Outdoor Lifestyleというお店で、今の山と道HLCの前身となった『HIKE / LIFE / COMMUNITY』のイベントをやらせてもらったんだけど、その時に出会ったドナルドという香港のハイカーが始めたお店がmorimoriなんだよね。

JK その後、ドナルドは何度か鎌倉で遊びつつ、初めての山道祭にも遊びに来てくれましたしね。

The Cave by Mother Outdoor Lifestyleでの『HIKE / LIFE / COMMUNITY』の模様。

香港のハイカーと記念写真に収まる夏目。

香港ハイカーとのキャンプでの記念写真。

キャンプ後の朝食でのスナップ。前列左がmorimoriのドナルド。

三田 今回、夏目さんがmorimoriでポップアップをやろうと思った動機はなんだったんですか?

夏目 ドナルドとはね、今の話みたいに5年以上の付き合いがあって、ことあるごとにいろんな話をしていて、そんな彼がリアルショップを持つと聞いた時に、どこかのタイミングで行かないといけないなと。そんな中で山と道製品の取り扱いの相談を受けたんだけど、まずはmorimoriに足を運んでお客様と触れ合わないことには始まらないので、ポップアップをやることにしました。

三田 実際にmorimoriに行ってから取り扱いについては決めようという流れでしたよね。香港は山と道のユーザーも多くて、みんなすごく興味を持ってくれている印象で、それは5年前にも感じたことだけど、またさらに広がって、深まっている印象を受けましたよね。

今回のポップアップのためにmorimoriが作成したポスター。

三田 ジョージ以外のみんなは5年前も香港に行っているけれど、5年ぶりの香港の印象はどうだった?

JK まずはすごく蒸し暑いなと(笑)。それがとにかく記憶に残ってます。全体的には、前回よりも香港のコミュニティに入ることができたこともあって、人の良さをすごく感じました。morimoriのスタッフもすごく良かったし、morimoriに集う人たちもすごく良いなと思いましたね。

キム 今回は実際に香港のトレイルを歩くことができたことがいちばん印象的でした。5年前もフィールドに行きましたけどキャンプのみだったので。

三田 今回はポップアップをやる前に、ドナルドに案内してもらって香港の山を初めて1泊2日でちゃんと歩けたんだよね。

JK 事前に歩けて本当に良かったですね。あれがあるとないでは大違い。

三田 ジョージは海外旅行自体が初めてだったけど、香港に着いたときの印象はどうだった? 

空港を出て5年ぶりに香港の景色と再会。

ジョージ 僕はもっとカルチャーショックを受けると思ってたんですけど、外国からのお客様の多い京都で店に立ってるせいか、意外と普段とそんなに変わらない印象でした。初めての海外とはいえ、意外とすんなり馴染めたというか。人もいいし、何も緊張することなく過ごせました。

キム それは関空からひとりで行ったんじゃなくって、東京に来てもらってみんなで行ったからっていうのも大きいかもしれないですね(笑)。

ジョージ はい。そこはもう本当に皆さんに感謝してます(笑)。

空港のすぐそばがトレイルヘッド

三田 そんな感じで香港に着いて、もうその日から香港メンバーと合流してトレイルに入ったんだよね。

キム 確か空港からタクシーで20〜30分の場所にあるランタオ島の梅窩(Mui Wo)という港町がもうトレイルヘッドのすぐそばだったんですよね。

三田 タクシーに乗ってても、日本の道路じゃなかなかないような急なアップダウンの繰り返しで、やっぱり香港は地形すごく急だよね。今回、香港からはmorimoriのドナルドとアンディとウィルソン、ムービーのカメラマンとしてメンさんとロックさんが参加してくれたんだけど、みんなすごくナイスな人柄だった。アンディは足を怪我してたから一緒にハイキングはしなかったけど、いろいろ物資を届けてくれたり、サポートしてくれたり。

JK 本当に気持ちのいい人たちでしたね。

夏目 スタッフみんなでドナルドを支えて、一緒に何かをしている雰囲気が良かったよね。

三田 まずはトレイルヘッドのすぐそばにあるスーパーで食料の買い出しをしたんだけど、香港のスーパーの印象はどうでしたか?

JK 思った以上に日本の食品が多いのにびっくりしました。

店内は広くはないが品揃えは豊富だった。

購入したものを早速各自パッキング。

三田 どこの棚を見ても日本のコーナーがあったよね。香港は小さい分、自国のものがあんまりないからか、日本や韓国、中国のものが揃っている印象。

夏目 僕の好きな香港のクラフトビールの「ヤングマスター」があったのが良かった。

JK 見つけた時の夏目さん、テンションの上がり方がすごかった(笑)

三田 で、スーパーから歩いてすぐの場所のトレイルヘッドから歩き始めたんだけど、とにかく暑かった。いきなり先が思いやられる感じだったよね。

JK 汗かき過ぎて道中はトイレに行かなかったですからね。

キム これが続くとまずいなと思いましたよね。

ドナルドを先頭に意気揚々と歩き始めるがトレイルはサウナ状態。

三田 1日目はお昼過ぎから歩き始めて2時間ぐらいの行程だったんだけど、それでもシャツが汗でびっしょりになっちゃって。よく「ULだったらメリノを着れば着替えはいらない」なんて自分も言ってるけど、「こんなに暑くて湿度が高いなら着替えがいるな」って(笑)。

ジョージ 僕も京都で盆地の蒸し暑さを散々経験してるんですけど、予想以上でしたね。改めて湿度の高い京都に帰ってきても、香港の比じゃないなと未だに思います。

三田 香港は6月が特に暑い時期みたいね。みんな次に来るなら1月か12月にしろって。で、初日は港から海沿いのトレイルからキャンプ場を目指して歩くルートでした。

キム トレイルはしっかり整備されていて歩きやすかったですね。

三田 階段が石だったりして、日本とは整備の方向も結構違ったよね。

キム 石の階段はイギリス植民地だったときに作られたそうですよ。

斜面はほとんどイギリスの植民地時代に作られたという石の階段だった。

トレイルのオアシスになっていた川で顔を洗う三田。

三田 暑いから、川を見つけたらとりあえず水浴びって感じで。

JK とにかくサウナみたいに汗かくから、川が水風呂みたいでしたね。

夏目 あと、ずっとトレイルに牛糞が落ちてたね。

三田 野生の水牛がいっぱいいて、気をつけてないと糞を踏んじゃいそうでした。あれは昔農業で使われてた牛が放棄されて野生化したらしい。

ランタオ島には野生化したバッファローがあちこちにいた。

香港のキャンプ場事情

三田 2時間ほど歩いて南山営地(Nam Shan Campsite)に無事到着しました。整備されたすごくきれいなキャンプ場だったよね。東屋やベンチ、ファイヤーピットとゴミ箱もあって、しかもタダで使える。

一同汗だくになりながら南山営地に到着!

早速アンディ(右からふたり目)が持ってきてくれたビールで乾杯!

夏目 水シャワーもあって、すごく嬉しかった。

JK あの状況だとシャワーがあるのとないのとじゃ快適度が全く変わりますね。

ジョージ 確かJKと僕は2回ぐらい入ったもんね。

三田 実は香港ってキャンプ場がいっぱいあって、しかもすぐそばを道路が通っててバス停まであるから、みんなよく仕事帰りにキャンプしにきて、次の日はキャンプ場から出勤するって言ってたよね。次に香港に来る時はホテルじゃなくてこういうところに泊まってもいいかもしれない(笑)。

各々テントを設営してキャンプ開始。

さっそく薪を集めて焚き火を囲む。

三田 で、夜は焚き火を囲んでいろんなことを話して、いい夜でしたね。

JK 火があるとやっぱいいですよね。

三田 あと酔っ払うとコミュニケーションもすごく円滑になる。シラフだとちょっと言葉のギャップがあっても、酔っ払うといい感じに話せるというか。

夜がふけ、言葉も国境の壁もなくなっていった。

JK でも夜は寝てるときも結構暑かったですね。

ジョージ 僕もはじめはツェルトをクローズして張ってたけど、寝てる最中に本当に風が欲しくなって。最終的にはタープみたいに広げて張って風を取り込んでました。

ジョージはツェルトをタープのように張って暑さ対策。

三田 あとアリ問題があったよね。

JK 夏目さんの被害がいちばん大きかった。

三田 アリの巣の上にテント張っちゃったみたいになってましたね。

夏目 夜中に目を覚まして、サコッシュを取ろうとすると砂をかぶっていて。それがよく見たら砂じゃなくてアリだった(笑)。

JK いちばん驚いたのが、蟻がビニール袋を食い破って中の食料を食べてたんですよね。

ジョージ 僕が寝てた場所もひどくて、気づいたらもう蟻の巣の中で寝てた(笑)。

JK このキャンプの朝は動画をたくさん回したんで、そちらのYouTubeもぜひ見てほしいですね。

香港の2番目と3番目に高い山を縦走

三田 そして2日目はいよいよメインのランタオトレイルに入って、トレイルの一部を12kmほど歩きました。

キム 香港で3番目に標高が高いサンセットピーク(大東山)と2番目に高いランタオピーク(鳳峰)を縦走したんですよね。

三田 2日目も朝から晴れてて、標高もそんなに上がらないし、その日はずっと暑いんじゃないかと心配だったよね。

JK 標高を上げるまでが本当に蒸し暑かったですね。暑くてカラカラの状態になるのは体験したことあるけど、湿度がこんなに高くて暑いのは初体験でした。陰に隠れても逃げれない暑さというか。

2日目も朝から晴天で先が思いやられるスタートだった。

山の上からも海や街が見える香港の独特な景観。登るにつれてだんだん雲が出てきた。

三田 登るにつれてだんだん雲が出てきて、普段なら山で曇るとがっかりしちゃうけど、この時ばかりは早く雲の中に入って涼しくなりたいって思ってた(笑)。で、途中で入れそうな川を見つけたら、もうドボーンと。

ドボンする夏目。良い笑顔。

ドボンするキム。気持ちよさそう。

ドボンするJK。涅槃の境地。

キム ここは天然の水風呂でしたね。

夏目 気持ちよかったよね。

キム 川があったからこそ暑いのも楽しめましたね。

JK 基本的に夏は川も枯れてるらしいんですけど、ドナルドが1週間前に大雨が降ったから今回こういう水場ができたと言ってました。だからラッキーだったかも。

三田 そしてここから雲の中をサンセットピークに入っていった。標高900mぐらいだけど、やっぱり山の上は涼しくなってほっとしたよね。真っ白々で景色はよくわからなかったけど、頂上付近は広々してた。何かの観測をしているという大学生の女の子たちがいて、「日本から来た」と言ったら、「山と道を着てますね」と言われて。「いやあ、実は僕たち山と道なんです」って(笑)。

キム しかも山と道のパンツも履いてくれていたんですよね。後日そのひとりがポップアップにも来てくれて。

JK 嬉しい出会いでしたね。

サンセットピークで出会った香港の女子大生。左端の子は山と道のDW 5-Pocket Pantsを愛用してくれていて、ポップアップにも来てくれた。

終始霧に包まれていたサンセットピークの山頂。

ジョージ 出会うハイカーはランの人が多かったですよね。

三田 でも全体的に人は少なかったよね。この時期はやっぱ暑すぎて登らないのかも。

キム 上半身半裸のおじさんにも2回ぐらいすれ違いましたね。

JK 衣類もだいぶ乾いてくれて。

三田 でもやっぱりDF Mesh Merinoと100% Merino Lightだと乾く速さもだいぶ違ったね。

JK 全然違いましたね。

三田 1日目に着ていた100% Merino Lightがびしょびしょになっちゃったから着替えたけど、2日目もすぐにびしょびしょになっちゃった。DF Mesh Merinoを着てた人は早くに乾いてたよね。

JK 今回は乾きのスピードを考えると、やっぱりDF Mesh Merinoが正解だったなと思いました。勉強になりましたね。

サンセットピークからランタオピークへと縦走。

今回の座談会は残念ながら欠席の山と道材木座スタッフの角田。

カメラを向けるといつもサムズアップしてくれるmorimoriスタッフのウィルソン。

トレイルからは同じランタオ島にある香港国際空港も見渡せた。

934mの頂上に到達してテンションの上がる一同。

三田 この日ははじめて香港の山に本格的に登れたけれど、みんなの印象はどうでしたか?

夏目 ランタオトレイルは全長70kmあるトレイルで、僕たちが歩いたのはその一部だよね。聞くところによると海岸を歩く場所もあったり、いろんなところを歩けるみたいで。

JK 道中では山の上から街の景色が見えたり、海が見えたり、景色の移り変わりが印象的でした。

ジョージ 遠くに高層ビルが見えるのがすごく新鮮でしたね。あとミミズが大きかった。

三田 さすが熱帯という感じで、虫も全体的に大きかったね。今度はもっと涼しい時期に長い距離を歩いてみたいと思ったな。でも、香港は麓にはキャンプ場がいっぱいあるんだけど、山の上にはテント場がないんだよね。それはちょっと残念だけど、麓のキャンプ場を繋げたら長く歩けるかも。で、ふたつめのランタオピークは香港でも聖地と言われている山らしくて、下りてきてから振り返って姿を見たらすごい迫力で、確かにすげえ山だなと思ったね。頂上からの下りが北アルプスかと思うくらい急だったし。

JK 膝が痛かったです。

三田 標高はそんなに高くないけど、やっぱり香港は基本的に島と半島なんで、山が急だよね。

無事に下山! 後ろの切り立った山がランタオピーク。「鳳峰」という名前だけに鳳凰像が。

やっと海外っぽい観光地が現れて、テンションが上がったジョージ。ランタオピークの登山口にある昂坪(Ngon Ping)は大仏やロープウェイなどもある一大観光スポットだった。

観光客の中で浮きまくる一行。

巨大な大仏に思わずカメラを構える。

ジョージ で、下りてきたら、途端に観光地っぽくなりましたね。

JK ジョージがいちばんテンション上がってたところ(笑)。

ジョージ 一気にね(笑)。

三田 「やっと海外に来たー!」ってね(笑)。

ジョージ 香港をじっくり感じる前に山に入っちゃったから、正直それまで海外に来た実感があまりなかった(笑)。

JK そんな初海外のジョージの様子を収めた動画も作りましたんでぜひ見てください(笑)。

三田 そんなこんなの香港ハイキングでした。次回はいよいよポップアップ編です!

今回のハイキングに参加したメンバー。後列左端がmorimoriのウィルソン、中央がドナルド、右からふたり目がアンディ、前列左端がムービーを撮影してくれたメンさん、左から3人目がロックさん。

morimoriが作成してくれたツアーの動画もぜひご覧ください!