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ぼくの台湾歩き旅

#9 日月潭で「歩き旅」の終幕

旅人・佐々琢哉のUL的台湾徒歩旅行
文/イラスト/写真:佐々琢哉
2026.01.23
ぼくの台湾歩き旅

#9 日月潭で「歩き旅」の終幕

旅人・佐々琢哉のUL的台湾徒歩旅行
文/イラスト/写真:佐々琢哉
2026.01.23

世界60ヶ国以上を旅してきた旅人、馬頭琴やカリンバを奏でる音楽家、ローフードやベジタリアン料理の研究家、パステル画家など様々な顔を持ち、現在は高知県の四万十川のほとりで自給自足やセルフビルドの暮らしを送る佐々琢哉さん。そんな彼が、旅歴25年にしてUL化。軽くなった荷物で、2024年に台湾を2ヶ月かけて歩いて旅をしました。

歩き旅だからこそ出会えた台湾の様々な人々や暮らしをめぐる彼のエピソードは大変興味深く、またそんな彼がUL化したら、一体どんなことを感じて、どんなことが起こるんだろう? それが知りたくて、この山と道JOURNALへの寄稿をお願いしました。

今回も、道中で出会った人を訪ねたり、映画のセットのような街を通り過ぎたり、自由気ままな歩き旅を続ける佐々さん。そして台湾のほぼ中心に位置する最大の湖、日月潭に辿り着き、この旅のメインパートである台湾を縦断する歩き旅がひとまず終わりを告げます。

最終回まであと1回の佐々さんの旅に、今回もどうぞお付き合いを。

卓さんとの最高の1日

山からの朝日に目が覚めます。テントの朝は早いものです。

朝靄の中、茶畑の隅っこに張ったテントを畳み、出発。標高の高い山腹の畑を抜けながら、谷底を目指して歩きます。

カーブミラーに映った、自分の姿。早朝、寒くて、持っている衣類全てを着込んでいる。歩き旅中は、車道のミラーが数少ない自分の姿をチェックできる機会でした。

さて、今日は嬉しいことに、待ち合わせがあるのです。

10日ほど前に、嘉明湖登山の山小屋で知り合ったアクの地元を訪ねた際に、アクが紹介してくれたのが卓さん。ちょうどその時は、卓さんは旧暦の正月で帰郷しているタイミングだったのですが、普段は地元よりも北にある場所で中学校の先生をしているとのことでした。

地図で場所を教えてもらうと、なんとこの先ぼくが通る道沿いだったので、「歩いて旅をしているのですが、10日後ぐらいに卓さんが住んでいる町を通りそうなので、訪ねてもいいですか?」と聞いたら、「ぜひ、連絡してください」と言ってくれていたのでした。そんなわけで、昨晩に「明日、卓さんの町に着きそうです」とLINEしたら、「明日の朝にセブンイレブンで待ち合わせしましょう」ということになったのです。運が良いことに、ちょうど明日は日曜日で、卓さんも学校がお休みで時間があるとのことでした。

この先に
会える人がいると思えること

ただそれだけで
足並みも軽快となるのです

段々畑を抜けて、小さな集落を抜けて、川沿いの車道にやっと出ました。舗装されていない土の車道を、黙々と歩いていきます。途中、川に下りられる場所を見つけたので、朝一番の水浴びを素っ裸でしました。やはり川の水は気持ち良いなぁ。昨日の山の空気の浄化作用にもびっくりしましたが、川水のような生きた水に触れる浄化作用もすごいものだな、といつも思います。はぁ、スッキリ!

おっと、久しぶりの沐浴の気持ちの良さにずいぶんと時間を使ってしまいました。「卓さんとの待ち合わせ時間に間に合わなくなってしまう」と、急ぎ足になります。

しばらく歩いていると、まったく車通りのないところに、はじめての車が後ろから走ってきました。すると、車はぼくの脇でスピードを落とし、窓から「乗っていくかい?」と男性のドライバーが声をかけてくれました。

こんな交通手段のない場所を、朝一番にひとりで歩いている姿を気にかけてくれたのでしょうか。正直、「このまま歩きたい」という気持ちもありましたが、「待ち合わせに遅れないようにしなきゃ」という気持ちも後から追いかけてきたので、ひと呼吸置いた後に、「ぜひ乗せてください」とお返事をしました。

朝の空気が心地よく、もう少し歩いていたかった道。

しばらくすると、待ち合わせのコンビニに到着しました。おかげで、待ち合わせ時間よりもずいぶんと早くに着いてしまいました。車に乗せてくれた男性にお礼を言ってお別れをし、店内へ。久方ぶりのコンビニが嬉しく、ウロウロと目移りしながら店内を散策した後に、コーヒーとチョコレートを買って、休憩スペースで日記を書きながら卓さんを待ちました。

卓さんは待ち合わせの時間通りにやってきました。相変わらずの大きな笑顔です。卓さんの笑顔は、なんとも安心した気持ちにさせてくれます。
卓さんの「さあ、温泉に行こう」という掛け声に、「え、温泉があるの?」と歓喜します。これは、最高のサプライズです。あー、温泉入りたかったよ!

笑顔で迎えにきてくれた卓さん。

町から山へ向かって行くと、こじんまりとした温泉街になりました。温泉旅館を通り過ぎながら卓さんは、「ここじゃなくて、とっておきの温泉があるんだよ」と言って、もっと山の上へと車を走らせていきました。途中、卓さんの同僚の若い教師のグループとすれ違いました。彼らも、日曜日にこの温泉街とその先の滝へと散策に来ていたようです。

山の麓の温泉街。ここからさらに登って、山の上のとっておきの温泉を目指します。

ようやく到着した温泉は、半分が洞窟になった露天風呂でした。自然のままの質素なしつらえがとてもぼく好みです。

あ〜、歩き旅の疲れが癒された〜。森の空気や川の水の浄化作用のお話をしてきましたが、温泉の効用というのもすごいものですね。温泉に浸かっただけで、足の疲れが吹き飛んで元気回復! という経験を、四国お遍路の時に幾度となく感じたものです。

洞窟の中にあるような露天風呂。

温泉から上がり、下の温泉街に戻って昼食。どうやら滝に向かって歩いていった先程の若い同僚教師たちと待ち合わせしていたようで、一緒に円卓を囲んでご馳走を頂きました。温泉にご馳走に、もう、最高の休息日です。

昼食後は同僚たちとお別れし、卓さんが近所へドライブに連れて行ってくれました。道沿いには、樹々の花々が咲き乱れています。春爛漫。満開の大きな樹の下では、ご老人たちがゴザを広げてお花見をしていました。その様子に卓さんは車を停め、話しかけ、宴会の輪に入れてもらいました。

地元の方々のお花見に、混ぜてもらいました。

その後も、卓さんの教え子たちがバレーボールや野球をやっているところを見に行って一緒に混ぜてもらったりと、地元の人たちと触れ合う午後を過ごしました。卓さんを見ていると、「本当に人が好きで、誰とでも仲良くお話をできる人なんだなぁ」と思いました。きっと、学校でも生徒たちから親しまれている人気の先生なのでしょう。

卓さんが赴任している中学校にも連れて行ってくれました。校庭から遠くに素晴らしい山並みが見えます。

卓さんの珈琲の焙煎所にも連れて行ってもらいました。本格的な焙煎機が揃っていてびっくりです。近々、奥さんと一緒にカフェを開きたいそうです。頂いた台湾産の珈琲は、びっくりするぐらいにおいしかったです。「歩き旅中にも、こうしたら簡単に飲めるよ」と言って、自家焙煎の豆を粉に挽いてからお茶パックに入れて持たせてくれました。

卓さんの自宅の焙煎場。自家焙煎の珈琲をいろいろとテイスティングさせてもらいました。台湾産の珈琲がとってもおいしかったです。

なんと、その夜の宿も卓さんが手配してくれていました。宿は夜になると登山客の団体で賑わい、どうやらここは、台湾最高峰の玉山(ユーシャン。富士山よりも高い3,952m)をはじめとした登山の起点になっている場所のようです。

もう夕刻となり、卓さんともお別れです。おかげさまで、最高の1日となりました。

宿の夜の時間には、団体の皆さんとしばしテラスの食卓でお話をしました。皆さん、僕が台湾を歩いて縦断している話を聞いて、びっくりしていました。

今晩の寝床は野宿ではなくて、屋根の下、お布団の上。そのことをずいぶん贅沢に感じながら、目を瞑りました。あれもこれも卓さんのおかげです。本当に、ありがとうございました。

映画のセットのような街

朝は、宿の朝ごはんをいただいたりして、宿でのんびりと時間を過ごしました。午前中に何も食べない方が体が動いて調子が良いのですが、せっかくの食事の機会を見逃すのがもったいなくて、ついつい食べてしまいますね…。

食後は、2階のテラスにて、台南からやってきていた女性とお話をしました。彼女は、登山の団体の一員として来ていたのですが、山に行くことをやめて、「今日は1日ここでひとりゆっくりとすることにしたのよ」と言っていました。朝、喧騒が去った後の静けさのなか、何もすることなくこうしてひとり山を眺めながら静かに過ごすのも、なんだか素敵な時間の使い方だなと、彼女を見て思いました。

宿のテラスからの眺め。遠くに見えるあの山が、玉山かな⁉︎

日本好きだという彼女と日本語も交えながら、あれやこれやとお話をしました。最後に馬頭琴の演奏を披露したらとても喜んでくれて、「あなたとお話しできたことが、今日、山に行かないことにした理由だったんだわ」と満面の笑顔でぼくに伝えてくれました。

人との出会いが、その1日を特別なものにしてくれることがあります。自分がそんなひとりになれたことを、嬉しく思いました。ぼくにとっては、昨日の卓さんの存在がまさにそうでした。

宿にいた猫

さあ、そろそろ、ぼくも出発です。

今日は、水里(シュイリー)という街を目指して歩きます。少し遠回りになるけど、卓さんがお勤めしている中学校の前を通っていくことにしました。門の外から校舎を眺め、今頃、卓さんは生徒たちの前に立って授業をやっているのかなと想像します。心の中で、お礼とお別れの気持ちを卓さんに伝えました。

今日は、大きな川沿いの、大きな車道沿いをひたすらに歩いていきます。交通量が多く、脇を車が猛スピードで通り過ぎていくので、なかなか気疲れする行程となりました。

道すがら、たくさんの犬たちにも出会いました。休憩して座っていると、犬の群れが近寄ってきます。人懐っこい犬たちと仲良くなって、「どうしたの?どこ行くの?」と、犬たちに話しかけている自分がいます。ひとり黙々と歩いていたところに、話し相手を見つけた気持ちなのでしょうか。そういえば、先日は犬に噛まれたんだっけなと忘れていたぐらいで、やはり自分は犬が好きなようですね。

屋根に乗って、吠えている犬。どうやって、そこに登ったの?

開けた幹線道路沿いでは、なかなか日陰が見つけられず、アスファルトの暑さに腰を下ろす気にもなれず、休憩も取るに取れない状態で歩き続けました。やっと見つけた農作業小屋の軒先の日陰にて、しばしの休憩をさせてもらいました。

今朝の出発前に、宿のおじいちゃんが持たせてくれた「仙桃」という、はじめてお目にかかる果物をバックパックから取り出して口にしてみると、とろーりとした焼き芋のような、カスタードのようなびっくりの味でした。

「うーん、このねっとり感はまさに南国の味」「日本の風土では、この味は作れないだろうな」などと思いながら、とにかくびっくりする味に感動しました。「仙豆」ではありませんが、「仙桃」のひと粒にとても元気になったものです。

午後も、大きな道路脇を黙々と歩き続けました。途中に「蛇窯」という看板を見つけました。Googleマップで調べてみると、台湾最古の陶器窯の記念館とのことで、見学をすることにしました。なかなかに見事な窯と展示でした。

山の中を歩いてばかりでなくて、たまのこうした観光も楽しいものですね。せっかく台湾まで来たので、文化的な一面もいろいろと感じてみたいですしね。

窯の脇で、台湾人の若いカップルが陶器の体験教室をやっている姿が可愛らしかった。

夕刻に、やっと水里へ到着しました。昨日の温泉での療養にすっかり味をしめてしまい、「街だから、マッサージ屋さんはないものか」とGoogle Mapで探すと、タイマッサージ屋さんがありました。

飛び込みでお店に入ると、とても感じの良い若いタイ人の夫婦と小さな子供たちがお迎えしてくれました。「これは、いい感じ」と直感し、マッサージをお願いすることに。旦那さんのマッサージは、思った通りとっても良かったです。直感が当たりました! うーん、また明日も来たいなー。

マッサージ屋さんを出て、すっかり足取り軽く、街の中心へ宿を探しに行きます。「そうだ!」と思って、「今日は水里までたどりつきました。どこか良い宿はありますか?」と卓さんにLINEで尋ねてみると、「ここが安くてすごくいいよ」とすぐに返事をくれました。

その宿に行ってみると、部屋がひとつだけ空いているとのことで、階上にあるお部屋を拝見させてもらいました。そしたら、なんと、その部屋は畳で、しかも見事な煎餅布団があるではありませんか。おまけに、浴槽まである。まるで、昭和を感じるお部屋。きっと、日本統治時代からの建物なのでしょう。「これは、ぜひ、この部屋に泊まりたい」と、即決しました。チェックインを済ませ、部屋に荷物を下ろしてホッとしたところで、夕飯を兼ねて街へ散策に出かけました。

街灯に照らされた通りは、まるで映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のセットの中にでもいるようでした。細い路地を歩いていると、まるで、タイムスリップしたような気持ちになり、ワクワクと最高に楽しい気分になりました。

昭和の日本を感じるようなこの街が、すっかりと、大好きになってしまいました。

宿に帰って、久々の湯船に浸かり(あ、昨日も温泉入ったか笑)、畳の上でお布団を敷いて、ぐっすりと眠りました。

水里の街の路地裏

朝は、先を急がず、大好きになったこの街を、宿のチェックアウトの10時まで散策することにしました。

街の朝の時間が好きだ
通りに出ると
人々の暮らしの営みが
静かに始まっていくのを感じる
朝市の活気に触れ
自分もここの人々の暮らしに
織り込まれていくような気持ちとなる

小さな路地に出ると、そこでは朝市が開かれていました。

旅先の市では、見たこともない食材に出会うワクワクがあるものです。そして、畑、はたまた海、川、山からの生産者たちが直接売っている姿に触れられることにも、心惹かれます。彼らと交わした一言二言の会話、その手から渡された野菜には物語が宿ります。プラスチックの袋に入っていない生鮮品が山盛りに積まれた姿に、感覚がよりダイレクトに刺激されます。

とにかく、ぼくは、旅先の市場がたまらなく好きなのです。

こうして、旅先の市で食材を仕入れ、自炊するのは、旅のなかでも特別な経験です。

通りの朝市に、心踊らせる。見たことない食材もたくさん。生産者たちの姿が格好良い。

そして、食べ歩きをしながら、朝ごはんをたらふく食べました。

宿に帰って、出発の準備。

朝の光の中、あらためてこの宿はとても大事に使われてきたことを細部に感じました。手入れされながら年月を重ねてきたからこその、美しさを感じます。台湾の地方をまわりながら、日本の古き良き時代、それは自分が生まれる前の戦前を、懐かしんでいる自分がいます。自分が生まれる前のことを「懐かしむ」と言うのもおかしな表現ですが、しかし、なにか、心の奥の郷愁に触れるものがここにあるようです。

旅して、ある場所・ある人に出会って、自分の心の内のこんな場所に立ち帰れる瞬間が尊いです。だから旅は人生にとって意味があるのだろう、そう思います

歩き旅の終幕

さあ、名残惜しくも、出発です。

地図を見ると、なんと、今日は、歩き旅の最後の1日となりそうなのです。つまりは、目標としていた日月潭(リーユエタン)という湖に今日中に到着できそうなのです。

台湾縦断歩行旅と言っていましたが、まあ、時間の許す限りの行けるところまでと思って始めたので、ちょうど半分ぐらいに位置する日月潭をゴールにしようと、旅の途中に残りの日数を考慮して決めたのでした。

この湖は、日本にいた頃から名前を知っていて、行ってみたかった場所でもあるので、「憧れていた場所に、歩いてやってきたぞ」という気持ちでゴールできたらいいなと思ったからです。それは、「最後まで歩き続けたい」という本心を納得させるのに、良い区切りになるだろうとの思いでもありました。

大好きになった水里の街を出発。

地図を見ると、大きな車道沿いを歩かずに、旧道の山道でも日月潭を目指せるようです。なるべくなら、山の中を歩きたいとその道を選んだのですが、途中から大変なことになりました…。その道は、もう、人が歩くことがめっきりなくなったようで、枝や草に道が塞がれている箇所ばかりで、ひたすら藪漕ぎばかりの行程となってしまいました。

藪漕ぎを続けた先に、やっとの思いで、山の頂上に辿り着き、眼下に日月潭が現れました。「やったー!」と、ずっと目指していた場所を目にして感動し、もうひと踏ん張りと己を励まします。

しかし、山道はなかなかに険しく、さらに道に迷い、想定よりもかなり時間がかかってしまいました。

やっと、やっとの思いで、山から湖畔沿いの車道へと合流し、日月潭の湖畔までたどり着きました。しかし、最終ゴールとして設定している湖畔沿いの街へは、まだまだ数時間かかりそうです。ちょっと気が萎えそうになっていますが、まあ、頑張って歩くしかありません…。

湖の水面を見ながら、「一度、水浴びができたら、リフレッシュして、残り最後を頑張って歩ききれるだろうに」と思いながら、水際に下りられる場所を探しながら歩きました。ぼくは、とにかく自然の中で水を見つけると、とにかく浸りたくなってしまう性分のようですね。それは先にも述べた通り、自然の生きた水を浴びると、「リフレッシュ」という言葉通りに元気になることを体感しているからですね。

しかし、こんな目の前に湖があるのに、水際まで下りられる場所がなかなか見つからずに、無念な気持ちが募っていきました。そして、ずいぶんと歩いた先にやっと場所を見つけて水浴びをしたのだけど、澱んでいてあまりきれいな場所じゃなく、思い描いていたような「スッキリ」とはいきませんでした。まあ、しょうがないと、再び歩き続けます。

最後の数時間は、もう、真っ暗な中、ヘッドライトをつけながら火事場のクソ力で歩きました。いつもだったら、途中でもうどこかの茂みにテントを立てているところですが、もう少しでゴールなので頑張って歩きたい気持ちが勝りました。そして、ゴールをした暁には、宿を取ってシャワーを浴びて、レストランでおいしいものを食べるぞ!と、祝杯気分を味わいたかったのです。

そして、遠く対岸に見えていた湖畔の街の灯りが、だんだんと迫ってきました。

街の入り口には大きな大きなビルのホテルが立ち並び、そこから先のネオン街へは、まるで異次元の世界に入っていくような気持ちとなりました。これまでの秘境のような山奥の湖畔の真っ暗な道から、突如として現れた煌びやかな街に、すっかりと面食らってしまいました。

人気の観光スポットとは聞いていたけど、ずっと山中を歩いてきた自分にとっては、あまりの異世界にびっくりです。こんなに有名な観光地だったからこそ、ぼくも日本にいた頃からその名前を聞いたことがあったわけですね…。

暗闇をずっと歩いてきた先に、突如として現れた湖畔の街のホテルの灯り。

まあ、とにかく、ゴール! やったー!

宿をとって荷物を下ろします。UL装備と言っても、やはり1日中背負っていた荷物を下ろせると、ホッとします。ご飯屋さんがどんどんと閉まりだしている時間だったので、シャワーを浴びてすぐに夕飯へ。表通りの繁華街から裏通りに行ったところに、おばあちゃんがひとりでやっている良い感じのご飯屋さんを見つけて、念願のゴールの祝勝の夕飯をたらふく食べました。宿への帰り道に、コンビニのスイーツも買ったりなんたりして。

正直、日月潭のあまりの観光地ぶりに「なかなか馴染めないな〜」と思いながらの最後の晩となり、思い描いていたゴールの感動は味わえませんでしたが、まあ、しょうがない。これもまた、想定外の旅のひとつとなりました。「馴染めないな〜」は、「きっと、一人旅じゃなくて、それこそ友達、恋人、家族と一緒にここを訪れたら楽しくて素敵な場所だろうなぁ〜」という気持ちの裏返しの言葉です、きっと…。

ということで、これにて台湾歩き旅もおしまいです。

旅の地図に残った、残り半分の道。また、ぜひ、台湾に帰ってきて歩きたいものです。四国お遍路の時も道中を楽しみすぎて、1回では終わらずに、翌年に続きから歩いて1周したのだったっけ。

四国お遍路も2回に分けたことで、2回目は、1回目の経験があるから、荷物にしろ、旅の道を見つけていく感覚にしろ、アップデートした状態から旅を仕切り直せたのがよかったのです。さあ、もう一度台湾を歩くとしたら、今度は、どんな旅になりますでしょうか。

日月潭のあとの残りの台湾滞在の日々は、いわゆる観光をしたいと思っています。台南は古い街並みが残っていて、ご飯もおいしいと聞くので楽しみです。台中ではsamplusのヘクターの兄弟のコーさん家族にも会いにいく予定ですし、ヴィパッサナー瞑想センターへも奉仕に行く予定です。世界中のヴィパッサナー瞑想センターを巡るのも、ぼくの旅の楽しみのひとつなので、台湾のセンターもぜひ行きたいと日本から申し込みをしていたのです。あ、そして、帰国直前には、旅の最初に台北でできたお友達と約束をした、彼のお店でのライブコンサートを台北でします!

こうしてぼくの「台湾歩き旅」は終わりましたが、次回は最後にもう1回、旅のまとめとして、ぼくのはじめてのUL歩き旅の気づきや、台湾の人々から学んだことを振り返っていきたいと思います。

佐々琢哉

佐々琢哉

1979年東京生まれ。世界60カ国以上の旅の暮らしから、料理、音楽、靴づくりなど、さまざまなことを学ぶ。2013年より、高知県四万十川のほとりへ移住し、土地に根ざした暮らしを志す。2016年にはローフードのレシピと旅のエッセイ本『ささたくや サラダの本』を刊行。2020年夏からパステル画を描き始め、2023年にはそれまでの旅を綴った『TABIのお話会』、四万十の日々の暮らしの風景画の作品集『暮らしの影』を自費出版する。