「呼吸する繊維」と呼ばれる和紙とナイロンを掛け合わせ、山と道のトレイルシャツの新たな選択肢として登場したKami Shirt。
UL Shirtをさらにしのぐ軽さと、汗をかいても蒸れにくく、すぐに乾き、臭いを吸収してくれる特性を持ち、「化繊 vs 天然」という二項対立を超えた新たな次元に到達したその機能と特徴を知るには、やはり作った人に話を聞くのが一番!
ということで、山と道JOURNALの三田正明を進行役に、Kami Shirtの開発に携わった山と道の渡部隆宏と松本りん、素材となる和紙とナイロンを組み合わせた和紙ナイロン「KJF-PPX(カジフペーパークロス)」を開発されたカジレーネの新井秀樹さんと沖野大志さん、両者の仲を繋いでくれた瀧定名古屋の猿渡祥さんに集まっていただき、この全く新しい生地と製品の開発の背景を大いに語ってもらいました。
どの物作りの現場もひとつひとつ話を聞いていけば、きっとそこにはどれもたくさんの苦労や苦難や、人々や物語があるもの。ではKami Shirtの物作りの向こう側には、一体どんな人々がいて、どんな物語があったのか? ぜひ刮目してください!

左から猿渡祥さん(瀧定名古屋)新井秀樹さん、沖野大志さん(カジレーネ)渡部隆宏、松本りん、三田正明(山と道)
はじめて和紙とナイロンを組み合わせたKJF-PPX
三田 山と道JOURNALの三田です。今回、山と道でKami Shirtという新製品を発売するにあたり、これはその名の通り、和紙とナイロンを組み合わせた「KJF-PPX(カジフペーパークロス)」という素材で作られたシャツなのですが、このKami Shirtを説明するには、それを作られた方々に直接お話を伺うのが一番だろうということで、この生地の開発に当たったカジレーネさん、そこと山と道を繋いでいただいた瀧定名古屋さん、製品の開発に関わった山と道の各スタッフでの鼎談の場を設けさせていただきました。そもそもこの製品が作られたきっかけは、瀧定名古屋さんからKJF-PPXを紹介していただいたことに始まっていると聞いているのですが、どんな経緯だったんでしょうか?
猿渡 瀧定名古屋の猿渡です。僕たちは繊維専門商社という立ち位置で、国内外含め色々なサプライヤーさんの中から、僕たちが自信を持って出せるものを選定し、それをいかに訴求しながら世の中に出していくかという、間を繋ぐような仕事をしています。僕たちの会社はどちらかというとファッションの生地を売る会社で、アウトドアは後から始めたのですが、そんな中でカジレーネさんの「合成繊維×天然繊維」という、普段やらないようなものをやっていこうという中で和紙という素材があり、面白いなと思ったのが始まりです。そこから色々お話をして、僕はその良さをいかに外に出すかという流れでこの和紙ナイロンの企画がスタートしました。

猿渡祥さん(瀧定名古屋株式会社マーケット開発室 室長)
渡部 山と道でリサーチと開発を行っている渡部です。アウトドア素材の展示会を瀧定さんが催されていて、そこで和紙ナイロンを紹介されたんですが、山と道でもちょうど天然繊維と合成繊維の良さを掛け合わせたような素材を探していたところだったので、「これなら新しい物作りに使えるかも」と思いました。
三田 山と道で採用しているKJF-PPXはびっくりするほど軽くて、他にはないような薄さなんですが、かなり「攻めた」生地ですよね。
猿渡 ファッションの方に見せると「薄くてペラペラだ」となってしまうのですが、そこを山と道さんにキャッチしていただけたのが大きいかなと思います。
三田 和紙とナイロンの組み合わせというのは他にないものなんですか。
新井 カジレーネのテキスタイル販売部の新井です。和紙とポリエステルの組み合わせはあっても、ナイロンと組み合わせたのはこのカジグループが初めてではないかなと思っています。

新井秀樹さん(カジレーネ株式会社テキスタイル販売部 部長)
三田 組み合わせるのは一般的な洋紙ではなく、和紙でなければいけないんですか?
新井 洋紙は主に木材のパルプから作るんですが、短い繊維をプレスして固めているんです。それはインクがにじまないようにそういう技法を使ってるんですが、和紙の場合は完全に固めずに、ある程度長い繊維を絡めてる感じで、その間に隙間が生まれるんですね。今回、我々が使っているのは手漉きではなく工業用和紙ではあるんですが、技法はほぼ一緒なので、その隙間から通気することで、「呼吸する繊維」と呼ばれるような和紙の特性が生まれるんです。もし、洋紙を原料に使っていたら、ゴワゴワして肌には当てられないような生地になるんじゃないかと思います。
渡部 「隙間がある」っていうのが重要なんですね。
新井 そうだと思います。

山と道でリサーチと製品開発に携わる渡部隆宏と素材開発を担当する松本りん
三田 そもそも、なぜ和紙とナイロンを組み合わせようと思ったんですか?
新井 和紙を糸にするのは、撚糸(ねんし)という、繊維を束ねてねじり合わせて撚りをかける工程が必要なんですが、そこで我々の得意とする糸加工とマッチするのではないかと考えました。また、カジグループはナイロンを扱うことが多いので、和紙と極細のナイロン糸を組み合わせたら、より柔らかい、面白い生地ができるのではないかなっていう思いもありました。
渡部 逆に言うと、これまで存在してたポリエステルと和紙の組み合わせっていうのは、硬かったり重かったりしたんですか?
新井 そうですね。どちらかというと和紙っていうと硬い・重いといったネガティブなイメージがあったので、それを払拭できないかと考えました。カジグループは非常に細いナイロンを作るのが得意なので、和紙も今までよりも軽量かつ柔らかい物作りに挑戦しようと。
新たに機械を開発して実現した細い和紙糸
松本 山と道で素材開発を担当している松本です。カジさんは合繊(※合成繊維の略で、化学繊維の総称)をずっと扱ってきた中で、天然繊維、その中でも和紙に着目したのはどういう理由ですか?
新井 先ほどもお話した通り、我々はナイロンのような繊維の長い「長繊維」を扱うのが主な会社で、一方で綿やウールといった天然素材は繊維の短い「短繊維」なんです。でも和紙は天然繊維なんですが、コウゾ(楮)やミツマタ(三椏)といった広葉樹が原料で、繊維長が長く長繊維に似た性質を持つことから、ナイロンと組み合わせやすいと考えたんです。
三田 ここまで細い和紙糸を作れるのは、カジさんだけだとお聞きしました。
新井 和紙の糸は、間伐材をロール状の和紙にして、それをスリッターと呼ばれる機械でスリット状にして糸を作っていくんですが、そこでスリッター機を新しく開発、製造することによって、今まで2mmくらいが限界だったところ、0.9mmまで細いスリットにすることに成功したんです。

和紙ナイロンの原料となるロール状の工業用和紙。これをスリッター機で幅0.9mmのスリット状にしてナイロンと組み合わせていく。

和紙を近くで見ると、確かに裏が透けて「隙間がある」ということがわかる。
新井 量産でも、この和紙を細くスリットすることって本当に難しいんですよ。今まで2mmとかだったのを0.9mmっていうのはね。スリット後に糸が切れることもあるし、スリットする刃の定期的なメンテナンスも必要で、メンテナンスにも時間もコストもかかる。そんなことも考えると、やっぱり生産性は良くないし、新たにオーダーを取ってこないことにはそれも動かない。生産するにも量が少ないとまたすぐ糸が切れたり、刃が悪くなったりとかあるんで、なかなか難しい素材なんです。
渡部 試作の時は、最初はブツブツ切れちゃったりみたいな感じだったんですか?
新井 切れて何回も機械止めてみたいなことの繰り返しでしたね。
沖野 カジレーネ テキスタイル開発部の沖野です。僕らもオペレーターが常に付きっきりでいるわけではないので、ポチっとボタンを押したらずっと動き続けるところで、ここが勝手に止まってくれたらいいんですけれども、例えば和紙のシートがプチンって切れたら全部また繋ぎ直さないといけなかったりとか、色々そういった面で試行錯誤だったり、どうやったらいいのかなっていうのは現場の方たちが考えてやっていただいたっていうところは大きいです。

沖野大志さん(カジレーネ株式会社テキスタイル開発部 係長)
松本 でも、スリッター機をカジさんのグループ内で開発したっていうのはすごいですね。機械を扱える会社がグループ内にあるっていうのが。
新井 そこは強みですね。カジグループは1934年に梶製作所という繊維機械を作る会社から始まっていて、もともと繊維にまつわる機械を作るのが得意な会社なんです。
三田 他の素材でもカジさんでしかできないようなものがあるんですか?
新井 あります。あります。機械を改造して、他ではできない物作りができたり、そのようなものは結構ありますね。
沖野 織り以外にも編みの機械もあるんですが、そういったところでも梶製作所の技術が盛り込まれてますし、織りの技術の部分でも梶製作所が治具を作ったり、織れないものを何かアタッチメントを付けて織れるようにしたりとか、グループの力として、機械からもの作りしてるっていう部分はあります。
ナイロンは「生き物」
三田 カジレーネさんには以前も山と道スタッフで工場見学に来させていただいて、糸が作られる現場を見せていただいたんですが、びっくりすることだらけでした。「ナイロンは生き物だ」というお話だとか。
新井・沖野 そうですね。

カジレーネ グループにマシナリー事業、加工糸事業、テキスタイル事業、製品ブランド事業、カーボンワイヤー研究開発事業の5つの事業があり、グループで繊維の糸作りから機織り、製品作り、さらにそれらを作る工業機械まで自社開発できる、正に北陸の繊維産業をリードする存在。特にナイロンなどの合成繊維を得意としてその可能性を広げる活動を行っている他、工場に公園やレストランとショップなどを併設し、産業観光施設を目指した「カジファクトリーパーク」も運営する。

過去の工場見学で見させていただいた「エイジング」と呼ばれる行程。「ナイロンは生き物」と言われるほどわずかな湿度の違いで仕上がりに大きな変化が出るため、工場内は常に一定の温度・湿度に設定されており、生糸を1本ずつ伸ばして室温と湿度に馴染ませる時間がいる。広大な工場に何万本ものナイロンフィラメント糸が1本ずつ張られ、ゆっくりとエイジングされている光景に一同驚愕。

「整経」と呼ばれる数千〜数万本のナイロンフィラメント糸を生地幅に合わせて並べ、「ビーム(大きなドラム)に巻き取る経糸(たていと)を織るための準備工程。単に「巻き取る」とはいえ糸の張力を揃え、乱れなく均一に並べ、必要な長さや本数を計算して整経していく。これまで紡績産業がどれだけの研究と研鑽を重ねてこの製法にたどり着いたのだろうか。すべての繊維がこうした技術の結晶の上に成り立っているのだということに言葉を失う。

その後、整経の終わった経糸を、織機の「綜絖(そうこう)」の穴に通す「リーチング」という作業と、綜絖に通した糸を、さらに筬(おさ)と呼ばれるクシ状の部品に通す「ドローイング」という工程があるのだが、ここは1本ずつ人の手で通していく必要があり、職人技が要求される。
三田 「ナイロンなんて」っていうとアレなんですが、そんなデリケートなものだというイメージが全くなかったので、あんな大変な工程を経ないと糸にならないんだと驚きました。
新井 ナイロンの場合は調湿管理が一番重要になってきますんで。
三田 今回もそうですよね、和紙ナイロンの糸は冬の時期にしか生産できないと聞いたんですが、その湿度とかの問題ってことですか?
新井 湿度とか静電気とか、その辺も結構重要になってきますので。静電気が起きて糸が切れたりするんで、それが起こらないような環境を作らないといけないんです。
沖野 ですが、そういった対策も梶製作所さんにも相談しつつ静電気対策をいま行っていて、僕たちとしてはオールシーズン生産できる体制を整えながら、いつでもオーダーいただけたらいいなとは思っています。
三田 それができるのも、やっぱカジさんだからこそなんですか?
沖野 ここは弊社ぐらいだとは思ってはいますが、特にナイロンの工場さんってやっぱり1年中同じ温度、湿度に保たないと品質のブレが生じるんですよね。で、特に冬場ですと乾燥して静電気が起きて糸が切れたりもしますし、品質面において例えば生地に仕立てた時に筋が出たり、染めるとムラが出たりとか、そういうのが細かい温湿度で響いてくるので、ちゃんとナイロンの設備を扱っている工場じゃないと作れないと思います。ポリエステルは別にそんな細かいケアをする必要ないんですけどね。でも、僕らはその道ではなくて、やっぱり僕らにしか作れないものっていうところでナイロンの方がオリジナル性も出せますし、その中でも僕らは軽くて丈夫なものを作りたいという思いがあって、日頃から生地開発に当たっています。
三田 軽くて細い糸はやっぱり技術力が必要なんですか?
猿渡 中国などからも出てきてはいるんですが、実際織ってみるとブレがあったり、そこは日本の技術力がすごく高いです。かなりの確率で、有名なブランドで細番手ってなると日本のサプライヤーさんが絡んでると認識してもらっていいぐらい、やっぱりこの北陸産地が中心ですね(※北陸地方は合成繊維の日本有数の産地になっている)。
三田 そうなると、実はカジさんが絡んでる、みたいな(笑)。
猿渡 さっき言った撚糸の部分や、細番手の糸のケアとか、いろんな工程がありますし、独自でできるっていうのはカジさんの強みです。それが詰まっているのが、この和紙の生地なのかなって。
三田 まだそこだとメイドインジャパンの優位性があるんですね。
猿渡 そのフィールドでは絶対あると思います。

現場経験が活きた素材開発
三田 沖野さんはこのKJF-PPXの開発にはどの段階から関わられてたんですか?
沖野 和紙に関して言えば導入時からです。僕自身は和紙を作る方ではなくて、織物の生地の企画だったり、実際には現場にも入って和紙の糸を自分で触って物作りしてた側でした。
三田 工場の実際の生産現場にも入っていたんですか?
沖野 そうです。企画もその時自分で考えさせてもらってて、どうやったらその強度が強い生地になるかだったり、織りやすいかだったりみたいなことを考えながら設計して、実際にも現場にも入って実際自分の目で見ながら、どんなふうな生地かなっていうのを手に取って考えてましたね。
三田 やっぱり企画にも現場経験って大事になってくるんですか? さっきのお話のようなトラブルが、小さいものから大きなものまで、多分いっぱいあるわけじゃないですか、現場をある程度分かってないと開発もできない世界なんでしょうか。
沖野 僕自身は10年ぐらい現場にいて、いろんな設備の機械の生産ラインに入らせてもらってから、開発営業の方に来させてもらいました。初めて触る糸って、実際ものを見ないと本当に良いのか悪いのかが分からないこともあるんで、そこは現場経験がすごい活きた素材開発だったなって思います。
三田 中でも開発で苦労した点というと、先ほどのスリットにする工程以外ではどの辺ですか?
沖野 僕ら生地を作る上だと、企画の方でも密度などのバランスの調整に苦労しました。あとは後加工の方でも、当初は汗耐光(※紫外線と汗の複合作用による染色堅牢度)の数値が良くなかったので、そこは加工場さんにも協力いただきながらそれをクリアできるような染料や手法を考えていただいたり。なので、各工程ですね(笑)。各工程で何かしら問題に直面しましたけど、全てクリアすることができたっていうところです。
三田 確かになんでも初めてのものを作るっていうのは、そりゃ大変ですよね。
新井 やっぱり時間かかります。

渡部 今回その工程によって産地と言いますか、工場さんを分けられて加工されていますが、その辺りの背景を教えていただけますか?
沖野 織りはここからすごく近い工場さんで織っています。うちはウォータージェット織機が多いんですが、それと和紙とは相性が悪いんです。そうなってくるとエアジェット織機っていう選択肢になって、それができるのはやっぱり北陸の産地だよねっていうところで、協力をお願いしています。でも、北陸の合繊工場さんだと、合繊だけ染めるんだったら大丈夫なんですが、天然繊維が入ってると、設備上それができるものがないということで、ウールの世界的産地で天然繊維に強い尾州産地の加工場さんにお願いをしています。
猿渡 生機(きばた)をここで作って、染めはわざわざ尾州の、愛知県の方で染め加工してもらってるっていう。
新井 北陸一貫ではちょっと難しいですね、やっぱり。
三田 なるほど、深いですね〜。素人考えだと、カジさんなんてものすごく大きな会社だからなんでもできそうなのに、なんで外に出してるんだろうみたいに思うけど、そういった繊維業界の裏側って分からないじゃないですか。
新井 そうですよね。
正直、「軽い方は選ぶなー!」と思っていた
三田 そうやってできたこの和紙ナイロンなんですけど、最初に戻って、なべさん(渡部)は初めて見た時はどういう印象でしたか。
渡部 最初に見せてもらった時、比較的これより厚手のしっかりしたものと、こちらと2種類があって、当然、山と道としては軽い方を試すんですが、猿渡さんからは「軽い方はアウトドアウェアの強度としてどうなんだろう」みたいなことを言われて(笑)。
猿渡 正直、「軽い方は選ぶなー!」と思ってました(笑)。「厚い方を選べー!」って。軽い方はさっき言ってた糸が切れやすいという問題もあって、機械を回している間は人も付けなきゃいけないし、量産もやったことないっていうリスクもあって、「厚い方選べー!」とずっと思っていたら、軽い方が選ばれた(笑)。で、そこからカジさんと「どうする?」っていう話ですよ。山と道さんなら、軽い方を欲しがるんだろうなとは思っていたんですよ。だけど量産するのは大変そうだなと思いながら、話がトントン拍子に進んで。
渡部 布帛(ふはく)生地なんでシャツを作ろうという話になり、私と山と道代表の夏目もサンプルを作ってテストさせてもらったんですが、着用感にハイテクを感じたんですよ。消臭性も調湿性もあって、風も防ぐからウインドシェル的にも使える。いろんな場面で使えるし、アウトドアの用途にも合うし、天然の良い着心地を越えたところにある着心地。それをきちんと打ち出していきたいなと思って、開発にもドライブがかかりました。
三田 まさか軽い方が最初に生産されるとはという感じですか?
猿渡 本当に(笑)。太い方だったらある程度量産体制も読めてたので、できればそっちおすすめしてなんとか着地したかったんですが。でもカジさんの方でもわざわざ設備まで作られて、この細番手のものを世に出したいというお気持ちがあったので、だからそこからは必死ですよ。

松本 まだ生地を量産してない段階でこっちが採用を決めちゃったから、探り探りでしたよね。もともとカジュアル用途で考えられていた生地をアウトドアで使うとなると求められる強度も変わってきますし。
猿渡 試験の方法もちょっと違うんですよね。
松本 やっぱりアウトドアで使う以上、要求がどうしても高くなってしまうところもありつつ、「和紙で天然素材だから限界はあるのもわかってます………でもね」みたいな(笑)。
猿渡 「でもね」でしたね(笑)。
松本 そのせめぎ合いですよね。




遂に完成したKami Shirt。2026は(左から)Navy、Brown Sugar、Pine Green、Blue Grayの4色を展開。
他のトレイルシャツにはないKami Shirtの特徴
渡部 Kami Shirtは結構ガンガン行動する方に使っていただきたくて、私も山のレースでこれを着用して、ウィンドシェルだと汗かくと中が蒸れちゃって脱ぎたくなるんですけど、Kami Shirtは汗を吸ってくれるので、ずっと着ていられるんですよ。で、風も適度に防ぐので、世の中になかったカテゴリーだなって。他の天然 x 合繊のものは重かったり、乾きにくかったりするものも多いんですけど、これだけ軽くて速乾というだけで違いますね。
三田 山と道だとバンブーポリエステルを素材に使用したBamboo Shirtも天然 x 合繊なんですけど、それともまた違う性格ですよね。
渡部 あっちは堅牢で、気にせずガンガン使うって感じで、こっちのガンガンは汗かいて、アクティビティ自体が激しいものに使っていただける感じですね。
三田 山と道だとUL Shirtとも違います?
渡部 UL Shirtはポリエステルなんで堅牢で安心して使える感じですね。ただ撥水なので汗を吸いません。一方でKami Shirtは汗を吸うんで、ベースレイヤーとして素肌に着れる点も違いますし、UL Shirtも軽いですけど、Kami Shirtの軽さは異次元ですね。
三田 確かにこんなに軽いシャツは味わったことがないですよね。皆さんはどうですか? 出来上がったものを見ると。
新井 早く発売されて着てみたいですね。
猿渡 僕らも速乾性あるとか口では言うんですけど、そうやって体感してまではそこまでやれてないので。逆にそういうお言葉をいただくと、自信を持って提案というか、和紙っていいよなって、再度確認したって感じです。

こうしてようやく完成したKami Shirtのための和紙ナイロン。超軽量・超速乾で吸湿性もあり、和紙由来の消臭機能も備える。
新井 やっぱりこうやって世に出たことによって、他、いろんなお客さん、一般の消費者たちが見て、いいものだなって問い合わせが来て、またどんどんこの和紙のマーケットが広がっていくなと、その辺も楽しみだなと思ってます。
沖野 アイテム的にはシャツだけで展開してくイメージですか?
渡部 今のところはアイデア次第だとは思いますけど、トップスでは別にシャツ形状に限らず、ウィンドシェルなんかも考えられますね。サンフーディみたいなものとか。
これぞメイドインジャパン
三田 りんさん(松本)的にはどうでした? 生地ができてからの製品化のプロセスって、山と道側として結構苦労したところだと思うんですけど。
松本 そうですね〜(笑)。私は担当が素材開発なので、やっぱり素材のところで、さっきも言った堅牢度の問題だったりとか。あと、やっぱり強度のところで、「滑脱抵抗(かつだつていこう)」っていう縫い目の裂けやすさと、「引き裂き強度」っていう生地が裂かれる時の強度が、どっちかを強くするとどっちか弱くなっちゃうトレードオフの関係で、すごい微妙な調整なんですよね。そこを猿渡さんを通じてカジさんにご相談して調整してもらうんですけど、なかなか微妙なラインで。試験反ではうまくいっても、量産は本当に大丈夫なのか。生機の染める前の状態だったら大丈夫だったけど、染めてみたらなんか弱くなっちゃって、なぜだろうとか。そこが和紙もそんなに実績がない中でやっていただいてる難しさもあって。でも、今お話を伺って、自分が思っている以上に難易度高いなと思いながらも、量産の品質は見ていかなきゃいけないし……。
猿渡 かなりプレッシャーがかかってますね(笑)。
三田 また世に出てからも思ってもみなかったことが起こったりしますからね。
松本 でも新しいものを開発するってそういうことだなって思うんで、やっぱりそれで見えてくるところをクリアして、より良いものになっていくといいなと。一緒にお願いしたいですね。
沖野 一緒に、ですね。
猿渡 そうですね。これ、染色も難しいんですよね。りんさんからも「汗耐光堅牢度をもっと向上させるために、この染料だったらどうですか?」みたいなこと言われて。「染料指定までしてくるか!」と思いましたけど(笑)。
一同 (笑)

猿渡 結論それを使ったかっていうとちょっと別のお話なんですけど。そういうのもあり、僕は間を繋ぐ以上はこちら側の意見もあるし、こちら側からも意見あるので、ちゃんと落とし所を見つけながらやっていきたいなと思っています。今もうちょっとで量産上がると思うので。
松本 楽しみですけど怖いです(笑)。
一同 ねえ(笑)
松本 だから、お客様にはぜひこのストーリーを知ってもらった上で購入いただきたいですよね(笑)。
三田 カジさん的にはこういう山と道の無理難題みたいなの、びっくりされた部分もあったりしたんですか?
沖野 でもやっぱり求められているところは、本当にそこに達しないとダメなんだろうなっていう。妥協しないってすごく僕も大事だと思ってはいるんですけど。そこに僕ら物作りしてる側からすると、そこを達成できるように考えながらやっていく良い機会ですし、チャレンジさせてもらってありがとうございますっていう気持ちです。
新井 厳しさがなかったら良いものはできないしね。本当にもう産地間を飛び越えて物作りをした、「これぞメイドインジャパン」という生地なので、世界にも発信してほしいですね。
三田 なるほど。なんかちゃんとオチがついたような(笑)。
猿渡 新井さん、最初から考えてました?
新井 今、思いつきました!
一同 (笑)












