山と道

重い女が軽くなる。
26歳UL入門記#3
雨の道志でキャンプしてみた。

この春(2021年)、新たに60歳のベテランから23歳の新社会人まで、男性、女性、既婚者、未婚者とバラエティに富んだ個性豊かなスタッフが加わり、一段とパワーアップ(?)した山と道。なかでも、面接時に提出したテキストとイラストの魅力を買われて採用されたのが本稿の主役の26歳青髪女子、寒川奏でした。

ともあれ、山と道が標榜するウルトラライト(UL)ハイキングはおろか、アウトドアもまだ素人同然の寒川。ならば、そんな彼女がULハイキングに入門していく様を研修がわりに記事化していけば、新人教育と原稿作成が同時に行えるではないか! と閃いた山と道JOURNALS編集部。「まあ、彼女なら面白いの書いてくれるっしょ」と、子を千尋の谷に突き落とす獅子が如く、とりあえずUL修行の道へ送り出したのです。

#3となる今回では、雨のキャンプ場へキャンプに出かけた寒川。ULスタイルでのキャンプをするつもりがクルマで向かったのが仇と出て、装備が肥大化しあまりULとは言えない結果に…(ULあるある)。ともあれ、今回もファニーなイラストと余計なカミングアウト付きのサービス精神満点な内容になっておりますよ!

イラスト/文:寒川奏
写真:寒川奏、ニール・ククルカ

山と道新人スタッフの寒川奏(さんがわかなで)です。皆様よろしくお願いいたします。

私はイラストを描いたり、鎌倉の某ワインバーでワインを注いだり、こうしてときどき文章を書いたり、色々やっている26歳の女です。

知識経験のないベイビーハイカーな私のウルトラライト(UL)入門記。今回は雨キャンプに挑戦! 学んだことを活かせたのか、活かせてなのか、駄文ではありますが、ぜひ最後まで温かい目と心で読んでやってください。

テント設営ができる=モテる

前回、山と道HLCのプログラム『山と道のULハイキング入門』でウルトラライトハイキング(UL)について学んだベイビーハイカー寒川。実践あるのみなのでどんどんハイクとキャンプに行こう。

キャンプをする上で私はひとりでテントを立てることができないという弱点がある。今までのテント設営、片付けでは周りの人たちがちゃっちゃか全てをやってくれていた。私のできることといえば片付け後のテント場にペグの抜き忘れやゴミがないかなどを確認するくらいだった。私だってサッと設営してサッと片付けられるようになりたい。きっと家出する時だって役に立つスキルなはず。

初めての彼氏のスウェーデン人とも一度キャンプをした。そこはスウェーデンでいちばん大きな野原。ひとり用のテントをささっと立てる様子にとてもキュンキュンした。ふたりで満点の星空を見ながら肩を寄せ合って眠った。とてもいい思い出だけれど彼には実は他に彼女がいた上に数年後にトランスジェンダーを告白し、彼は彼女になっていた。この思い出がテント設営のかっこよさを伝えるのにいい例かはわからないがこうやって書いていくことで私の心は軽くなっている。

長くなってしまったが、そういうわけで今回はキャンプ場にキャンプに行くのだ。今回も彼と二人で向かう。

仕事後にキャンプに向かうため、夜20時以降でも受け入れてくれるキャンプ場を探しまくった。ほとんどのキャンプ場のチェックイン受け入れが17時ころまででなかなか見つからない中、道志の森キャンプ場を発見。このキャンプ場はいつでも設営してOK。受付に間に合わなかった場合は、翌日に巡回スタッフが受付をしてくれる。ここしかない!

前回の反省を生かしていくつかギアをリニューアルした。1点目はバックパックを「子泣き爺」みたいに重かった前回のアレから山と道MINI2へ変更。ビビィ(シュラフカバー的なもの)は両親に返却してしまったので「100均」のエマージェンシーブランケットをダクトテープで筒状に繋げ合わせてそれらしいものを自作。俗に言うMYOG(Make Your Own Gear)をしてみた。

そしてレインウェア。ちょうど山と道のUL All-Weatherシリーズの販売が開始され、私はUL All-Weather Long HoodyとUL All-Weather Pantsをゲットしていた。このUL All-Weatherシリーズは通気する新素材を使用していて、雨だけではなくてさまざまな状況下で使える優れものなのだ。そして天気は雨予報。これは楽しみ。ああっ、はよ使いたい!

クルマに運んでもらうべからず!

キャンプ場まではクルマで行くことにした。これが失敗だったと今は後悔している。どんなに小さいクルマだってある程度の積載量がある。この積載量に私は甘えてしまった。「テントはすぐ使うしザックに入ってなくてもいっか! クルマに乗るし!」「靴はどうしよう? とりあえず思いつくものは持っていっとくか!(3足トランクへボーン!)」といった具合に実際に自分で持つと考えるととても重くて持てない重量になってしまった。どうしたら軽くなるかあんなに考えてパッキングしたのに台無しじゃないか。しかしこれが甘えだということに気づいたときには私たちは東名高速のど真ん中。もう遅いのだ。

クルマへの甘えを反省するも、途中で寄った海老名サービスエリア名物のメロンパンが予想外に美味しく「もう持ってきたものはしょうがない! 楽しまないともったいない!」と開き直って楽しむことにした。

さあ、テントをたてよう!

真っ暗な道志の森キャンプ場に到着。小雨の中テント設営開始。早速UL-All weather Long Hoodyが活躍。雨が気にならないし何故か私が着るとファニーで楽しい。

今回は新たに購入したテントを使う予定だったが配送が間に合わなかったため、山と道が研究用に所有しているハイパーライトマウンテンギアのディリゴ2というテントを貸し出してくれた。このテントはふたり用で794gと超軽量! DCFファブリックという軽くて強くて雨も弾く超優秀な素材で作られている。DCFファブリックはそのハイスペックさとなかなかのお値段で有名。そんな超高級テントを贅沢にもこんなペーペーが使わせていただく! 汚したくないけど雨だし泥不可避! 「弁償」の2文字が心を掻き乱すけれど予習した設営ビデオを思い出しながらテントを広げる。

まずは4隅のペグを打つ。「雨で地面が緩まって打ちやすいのでは?」という期待も虚しくしっかり硬くてなかなか入らない。道具を使用して打つも時間がかかってしまう。「やっと打てた! さあ次!」と見渡すと残りの3つはすでに彼が打ち込んでいた。早い…。筋肉と経験の差を感じる。

このテントは2本のトレッキングポールを支柱にして立たせる仕様。まずはテントの金具部分にトレッキングポール先端をはめるためにポールのキャップを外すのだがこれがなかなか取れない。ポール先端をはめるテント側の穴が小さいため、ポールのキャップが外れていないとその穴にはめられず、テントを立てれない。もはや歯を使って外そうとしていた私の横で彼は新たなパーツを作り出していた。持っていたロープをナイフで15cmほどにカットし、先ほどのテント側の穴に通し輪を作る。新たな穴ができた! キャップを外さずともポールを立てることができた。脳の筋肉と経験の差を感じる。

ひとりでここに来ていたらと想像する。なんとか時間をかけてペグを打てたとしても、次はストックのキャップの時点で歯が折れて泣きながらクルマで寝るだろう。なんなら私のことだからクルマの鍵だって失くしかねない。今は学ぼう、そういう時期だ。

彼の力をまたも大部分で借りながらテント設営完了。というかこのテントとても工程が少なくて簡単に張れる。軽くするっていうことは作りをシンプルにするっていうことでもあるのかもしれない。シンプルものをシンプルに使えばハイクも早くて軽やか、スタイリッシュだ。とか言いながらひとりでは立てられてないんですけど、それは一旦置いておきましょう。またいつか持ってきます。

焚き火+美味しいもの+好きな人と一緒=最高!

雨が弱まってきた。焚き火の時間。鉄製の焚き火台は割と重いのでこのためといえばクルマできた意味はあったと思う。5分とかからず火をつける彼。私はあと3年後かな…。持ってきたマシュマロを焼き、膨らんできたらダークチョコレートを乗せて、もう少し焼く。チョコレートに照りが出てきたらビスケットで挟んで豪快に食らいつく。コツは火に近づきすぎず絶妙な距離を保ちながらゆっくり、ゆっくり焼くこと。最高に旨い。サービスエリアで牛丼とメロンパンを食べたがこの大好きなスモアサンドも3個ほど食べた。体のUL化という前回掲げた目標はこの激うま脳みそとろけフードの前では無力だ。

MYOG(Make Your Own Gear)の成果

勢いよく上っていた火は落ち着き、いいオキ火になってきた。ゆらめく熱を見つめてたら眠くなってきたのでそろそろ寝よう。自作したビビィを使う時が来た。彼から借りた-4℃まで耐えられる寝袋にさらにビビィは暑いかもしれないのでに足元は閉じず熱を逃がせる仕様にしてみた。山と道のUL Pad 15+の100cm(厚み1.3㎝)とMinimalist Pad(厚み0.5㎝)を繋げたスリーピングパッドの上で、さあおやすみ!

深夜3時。ガシャガシャうるさくて寝れん…。テント内で音が跳ね返ってよりうるさくなるし、テントの生地のテカリを反射させて目にもうるさい。隣で寝ている彼も薄く起きている。「動かないぞ!」と決めて寝ようとするもそんなのは絶対に無理。人間だもの。ガシャガシャ、ギラギラ、申し訳なさとイライラで朝を迎えた。

雨は降っていない、テントから出て伸びをする。体は痛くない。多少ゴツゴツは感じたけどUL Pad 15+とMinimalist Padの組み合わせに問題は感じなかった(他の不快感が圧倒的すぎて感じなかっただけかもしれない)。ただあのストレス(自作ビビィ)からの開放感が最高すぎる。葉の先からこぼれ落ちる雨粒、朝日に反射する緑たちの輝き、生き生きとした川の音、全てが素晴らしく思える。実際素晴らしいのだけれど、より喜びを感じた。あぁ、寝袋カバーは自分で作るものじゃなかったなあ。作ったからこそ得た感想。作ってよかった、やっぱり買おう。

キャンプの後は山でしょう

朝ごはんを食べていたら巡回スタッフのおばちゃんが元気に徴収に来てくれた。UL All-weather Hoodyを着ていたらかわいいかわいいと20分くらい褒めてくれた喜びでやっとあのストレスもとれてきた。さて撤収していきましょう。

菰釣山(こもつるしやま)を超えて山中湖まで歩いてバスで戻ってくるというのが理想ルートだったが、山中湖からのバスの本数がとんでもなく少なく時間的に厳しかったため、行けるところまで行って戻ってくるルートにした。

道志の森キャンプ場から直結している登山口から木々と水に囲まれた豊かな森に入る。緩やかな傾斜で歩きやすい。開始20分くらいでカモシカと出会った。お尻が大きく重心が低いカモシカの走りは少し不細工でかわいい。菰釣山の発音の難しさについて彼と話しながら歩く。

歩く時に、考えごとや妄想をする。時々山と会話をする妄想では、登り坂や下り坂で「こんなに下らせるってことは、また登らせるってこと⁉︎ あなたっていつもそう!」とキレたり、滑りそうなところで「思い通りにはさせないぞ、へっへ」的な感じで山と話す。割とこの独り言は口に出ていて後ろを歩く彼はずっと黙っていた。変な彼女でごめんね。細かなアップダウンのある山行トレイルは私にしっかりと疲労を与えてきていた。私、向こうが見えないくらいずっとフラットなトレイルが好きなんだよな…。

クルマに使わない荷物を置いてきたおかげでバックパックは軽い。でもこれはチートだ。自分の衣食住を自分で運んでいない。しかし今のパックウェイトが快適ということはこれからの山行へ持っていくものをもっと軽量化しないと厳しいということだね。

美しくてアップダウンの激しい樹林の道をヒィヒィ言いながら目標ポイントに到着。彼の淹れてくれたコーヒーの飲みつつ、アポロチョコをチョコの部分といちごの部分を分けながら食べて休憩。さあ、戻りもまたアップダウンだ!

行きと同じポイントでまたカモシカに会った。また重そうなお尻でドテドテ逃げていく。「バイバイ、またこいよ」って言ってくれてるのかなとか一瞬メルヘンな私が考えたけど普通にご飯食べてたらまた人間が来て迷惑だっただろうなと思う。

甘えは重み?

駐車場へ到着、帰路に着く。トランクに積まれている自作ビビィがトンネルのライトを反射させてて車内が眩しうざい。そんなギラついた車内で心の中にて反省会。

今回は単に新しくした道具を使ってみただけになってしまった。それはそれで楽しかったけれど頭を使っていない。まずクルマは便利だけれど重みや体力を知る面でなるべく電車で行くべきだった。それかクルマで行って、丸2日キャンプとハイク。何にしても今回は時間が限られていた。次回は時間に余裕を持っていきたい。あーん、何だかまだまだだな〜! いっぺんにたくさんの情報と道具を手に入れて、迷子になってしまったよう。甘えや情報で混乱した頭を一度整理しなくては。

昔、海で今まで岩に擬態していて見えなかったサザエが一気に見えるようになる「サザエ目」を手に入れた時の快感を思い出す。いつか、ULにもあの時のような快感を感じたい。自分と山と道具のチューンがあった時はとても気持ちがいいだろう。

次回に向けて用意するもの
・自分の寝袋
・テント
・寝袋カバー
・美味しい白ワイン

 

【余談】今回のワイン

Weiser Mulatschak MEINKLANG
ナチュラルワインを好きになるきっかけとなったもののひとつ! ここのワイナリーの作る美発泡が特に好きで、人へのお土産などにも重宝している。山から帰ってきた疲労感にこのしゅわしゅわが効くんです〜!

では皆さんまた次回でお会いしましょう〜!

【#4に続く】

  • ENGLISH
  • JAPANESE

MORE