「山と道β」開始と β Merino Coach Shirt Jacket 発売のお知らせ

山と道のシャツの開発も数年がかかった。

当初は現在のようなポケットの無いミニマムなスタイルではなく、様々な形のポケットを付けたシャツをいくつも試作していた。紆余曲折を経て最終的に現在のミニマムなデザインに落ちつき山と道のシャツ・シリーズが生まれたのだけれど、個人的にはずっとテストをしていたポケット付きシャツへの愛着も捨てきれなかった。

脱着しやすいようスナップボタンにしようとか、袖をまくりやすくするためゴムを入れた袖口にしようとか、動きやすくするためワイドシルエットにしようとか、試作を繰り返すうちに、シャツを作っていたはずが限りなくコーチジャケットに近づいていった。

ようやく形になり、個人的には大いに気に入ったものの、これが果たして山と道が考えるハイキングにどうしても必要なアイテムなのかと考えると、絶対に必要とも言い切れない。そういった経緯から試作の最終段階まで進んだものの、結局は原点に戻りシャツの構成要素をミニマムに突き詰めた現在のシャツ・シリーズが製品になった。

ともあれ、最終的に正規製品化された山と道のMerino Shirtと比べても、山の道具としてそこまで大きく劣るものではないとも思っている。

少しワイドなシルエットに、モノや手を入れたくなる便利なポケット。Merino Hoodyの上に羽織ると寒い時期の行動着としても良い塩梅だ。なによりもMerino Shirtと同じ100%メリノウールの薄手の織地の着心地が素晴らしい。最高の素材で作り上げた山でも街でも、どこでも使えるシャツ・ジャケットだ。

ただ、「ハイキングを通じて感じた　本当に必要な道具を形にしていく」をテーゼとする山と道の現在の製品ラインナップからは、少し浮いてしまうのも否めない。だが、「ベータ版」として少数生産し、店頭のみで販売するならどうだろうと考えた。

実際に店頭でこの製品を見て、試着し、気に行っていただけたお客様に着ていただきたい。そしてその声を聞いてみたい。その結果、この製品から「β」が外れる日がくるかもしれない。もしくはそこからまた、違う製品を作り出すきっかけが生まれるかもしれない。

これからもβシリーズとして、このような趣味性のある製品を少量でも展開していきたいと思っている。（2019年12月）