虫除け剤が製品生地に及ぼす影響について

これからの季節、ハイキングの際に虫よけ剤を使うことが増えると同時に、それらがウェアやバックパックなどのギアにとって影響がないか、心配する声もちらほら聞きます。

山と道は製品コンディションの解析から、虫除け剤に含まれるディートという成分がアウトドア製品に多用されるコーティングやメンブレン使用生地を劣化させることを突き止めました。

お使いの虫除け剤の成分にディートが含まれている場合は、製品の生地に付着させないようにご注意ください。ディートと同じく代表的な虫除け成分であるイカリジンは生地素材への影響はありません。

ディートの影響を受ける可能性がある当社製品

  • MINI、MINI2、Three、ONE、Yamatomichi Sacoche、Zip Pack、Stuff Pack、Stuff Pack XL
    ※生地のコーティングを劣化させる可能性があります。
  • UL All-weatherシリーズ
    ※防水透湿メンブレンや生地のコーティングを劣化させる可能性があります。

山と道の製品だけでなく、他社のコーティングされている様々な衣類、道具に影響を及ぼす可能性があります。長く道具を使っていくためにも、虫除け剤の選定と使い方にご注意ください。

解析までの経緯

2023年6月からコンチネンタル・ディバイド・トレイルを歩いたスタッフ中村が使用していたONE試作品上部の口袋箇所に使われた生地のポリカーボネートコーティングが剥離しました。ポリカーボネートコーティングは従来のPUコーティングと比較して、加水分解や紫外線の影響も少なく、長期間の使用に耐えられる耐久性を持つコーティングです。その耐久性の高いコーティングがなぜ劣化したのか。原因の究明に動きました。

報告を受けて、パートナー社による以下の検証を実施。

  • 紫外線照射テスト
  • ジャングルテスト(高温多湿耐候性テスト)
  • 薬品耐性の調査

パートナー社より、マイナス30度以下の寒冷環境や消毒剤(クレゾール剤)の影響など様々なコーティング劣化要因が示されましたが、中村のハイキング状況と整合しないため、現物の解析を待って判断との流れになりました。

11月にCDTを完歩した中村からONE試作品を受け取り、現物の解析をスタート。

パートナー社より、虫除け剤に含まれるディートの影響が提起され、中村に確認したところ、歩き始めてから3ヶ月ほどスプレー式のディートを使っていたことが判明しました。

原因判明

発生状況と照射テストの結果から、紫外線の影響は考えにくいと判断される一方、日本国内で市販されている虫除け剤(ディート30%配合)にて実験した結果、試作生地の剥離に酷似した現象が再現されました。

これによりディートが原因だと特定。ディートの影響とともに摩耗などの複合要因の可能性も残されるものの、虫除け剤の溶剤(アルコール)がディート成分をバックパックに浸透させ、コーティングを侵した可能性が濃厚との判断となりました。

また文献リサーチも並行して行い、ディートが樹脂一般を劣化させる可能性も確認されています。コーティングを施した生地を使用したバックパックやテント、レインウェアなど、アウトドアで用いられる製品一般にも影響を及ぼす可能性があります。