現在、日本各地に台湾を加えた8つの拠点で活動する山と道HLCでは、ULハイキングが繋ぐコミュニティ作りを目指して、日々、様々なプログラムを行っています。このHLC Reportでは、そんな活動の内容をシェアしていきます。
今回は2026年5月にHLC鎌倉が、理学療法士の鳥越恵さんをお迎えして、山と道鎌倉で開催した『身体と旅から導き出す「背負える重さ」の正体』の様子をお届けします。
ウルトラライトハイキングにおけるベースウェイトの基準は10ポンド=4.5kg以下ですが、人によって体型や筋力が違うように、各々の身体に合ったベースウェイトがあるはずです。それを裏付ける様々な論文を引用しながら、理学療法士の視点を交えて、自分のベストなバックパックの重さを導き出す方法論を、鳥越さんが教えてくれました。
自分が快適に背負える重さを知って、怪我なく安全にハイキングを楽しんでください。
はじめに
皆さん、こんにちは。鳥越恵です。トリと呼んでください。私は理学療法士として働きながら、2022年にニュージーランドのテ・アラロア、2024年にフランスのヘキサトレックと、3,000kmのロングトレイルをふたつ歩いてきました。

2022年 テ・アラロア

2024年 ヘキサトレック
今回は理学療法士の視点といろんな論文を交えながら、人それぞれの快適な荷重についてお話していこうと思います。
それぞれのウルトラライトハイキングがより楽しくなる時間にできたら嬉しいです。

鳥越恵さん。1992年石川県・金沢市生まれ。東京都内で理学療法士として働いた後、映画のロケ地を探索する目的で2022〜23年にニュージーランド・Te Araroaをスルーハイク。それからロングトレイルの楽しさに開眼し、2024年にフランス・Hexatrekも歩き、次のロングトレイルを計画中。Te Araroaの様子を赤裸々に語っている書籍『Te Araroa Dorodoro Diary』の詳細はこちらから。
ベースウェイト=4.5kg以下は必須なのか?
今回は人間の耐荷重を科学の側面から紐解き、快適な重さについてお話ししていきます。2度のロングトレイルを歩く中で、私の頭にふたつの疑問が浮かんできました。
ひとつは、ウルトラライトでベースウェイトを軽くしても、食料や水、燃料を含めると、その軽さは相殺されるんじゃないかということです。
私がテ・アラロアを歩いた時のベースウェイトは6.02kgでした。それに加えて食料は3kgを持ち歩いて、さらに水を2〜3Lと燃料を加えると、ベースウェイトと同じか、もしくはそれ以上の重量の荷物がプラスされることになるんですよね。

たとえベースウェイトを減らしたとしても、砂漠や寒冷地といったさらに厳しい自然環境下では水や食料の必要量が増え、さらに重い荷重を担ぐことになります。仮に私がベースウェイトをレイ・ジャーディン*に倣って10ポンド=4.5kgに収めたとしても、水が増えればその軽さは相殺されてしまうんです。
*ウルトラライトハイキングの始祖。ロングトレイルを歩くための方法論「レイ・ウェイ」を提唱し、ベースウェイト10ポンド以下が基準になるウルトラライトハイキングの思想や手法を確立した人物。
もうひとつの疑問は、荷物を自分が重いと思わなければそれで良いんじゃないかということです。
人間にかかる運動負荷は年齢、体重、心拍数などによって決められるように、耐えられる重さも人によって違うはずです。バックパックによって耐荷重が決まっているように、人間の耐荷重もそれぞれなので、ウルトラライト装備は4.5kg以下だと、一律に決められるものではないかもしれません。荷物を軽くするだけではなく、重い荷物を担げる体づくりにも、焦点を当てるべきではないでしょうか。
人間が背負える最大の耐荷重
ここで質問です。あなたの耐荷重(安全に実用的な活動ができる最大重量)は一体何kgだと思いますか?
正解は体重の約30%です。一度、自分の体重の30%が何kgかを計算してみてください。
耐荷重30%の根拠となる論文は、1988年にM.F.ヘイスマンによって書かれました。この論文は耐荷重研究における古典で、後続の研究でも多く引用されています。
そもそも耐荷重の研究は、世界大戦とともに始まっています。第一次世界大戦時代の兵士ひとりあたりの荷重は、だいたい15kgでした。それが通信技術の進歩や防護服の向上によって搭載量が増えていったため、兵士が担げる耐荷重の研究がイギリスの陸軍中心に進められていった背景があります。この論文では、健康で若い男性に関して体重の1/3の荷重制限が推奨されています。
次の論文を紹介します。2011年に発表されたので、最近のものですね。
・『長時間の荷重歩行におけるバックパック荷重が女性ハイカーの下肢筋活動パターンに及ぼす影響』
この論文では、15名の女性ハイカーに体重比0%、20%、30%、40%のバックパックを背負わせて8kmのトレッドミル歩行を実施しました。その結果、40%の負荷で大腿四頭筋の一部に筋疲労が観察されました。これによって、バックパックの負荷制限を体重比30%にすることで、怪我のリスクを減らせることが示唆されています。
このふたつの論文を根拠に、人間の耐荷重は30%ということになります。
耐荷重を決める、4つの主な要素
続いて、人間の耐荷重を決める要素について見ていきます。
様々な要素がありますが、大きな要因は体重比、筋力、有酸素能力、パッキングの4つです。
①体重比
体重比とは、荷物を背負う人間の体重に対する相対的な負荷を指します。下記図で示したように、同じ20kgの荷物でも、体重50kgの人と80kgの人では、相対的な重さは違いますよね。

50kgの人にとって20kgの荷物は、体重の40%になります。一方で80kgの人にとっては、せいぜい25%くらいです。こんなふうに、人によって相対負荷は変わるんです。ここからは相対負荷という言葉を「体重比」という言葉に統一していきますね。
では、人間の最大耐荷重は体重比30%でしたが快適に背負える耐荷重はいくつなのか。次の論文は2026年に発表された最新の論文です。
・『長距離ハイカーにおけるバックパック負荷に対する足底圧力応答:横断的観察研究』
実験自体は2022年にカミーノ・デ・サンティアゴの巡礼者39人を対象に行われました。24時間以内に20kmのハイキングをした後の状態で、体重比別の荷物を背負って、立ったままと歩いた時の足裏からの衝撃を測定したものです。
荷重は、普段背負っている荷物、体重比0%、体重比10%、体重比20%で比較しました。すると10%を超えるバックパックを背負った場合は、明らかに足裏からの衝撃が多くなりました。それによって、足裏のストレスを減らすために、荷物を体重比10%に制限することが推奨されています。
次の研究は、バックパックの重さが体重比いくつになると姿勢が崩れ始めるかを実験したものです。
・『若年成人における姿勢角度におけるバックパックキャリッジへの即時反応』
18歳から25歳の若年成人を対象とした研究で、結果としては体重比10%で体が前に傾いていき、15%に増えると頭が前に傾いていきました。

ここで誤解しないでほしいことは、姿勢が傾く反応は人間がバランスをとるために必要かつ合理的な反応です。荷物が重いと後ろに引っ張られるので、体や顔を前傾させることでバランスをしっかりとっているんです。
前傾する反応自体は正常ですが、荷重が増えて長距離になると、腰痛や首の痛み、肩のしびれに繋がる可能性があります。
次にバックパックの負荷の研究を見ていきます。
バックパックが脊椎に及ぼす負荷について調べたもので、まっすぐとした理想的な姿勢での歩行だと、バックパックの重量×7.2倍の力が脊椎にかかるとされています。例えば11.3kgの荷物を背負うと、80.6kgの負荷が脊椎にかかっていることになります。さらに姿勢が20°前傾するとバックパックの重量×11.6倍の負荷がかかります。11.3kgの場合は131.9kgの負荷です。とんでもないですよね。
前傾姿勢になると負荷が増える理由は、荷物そのものの重量に加えて、バランスを維持する脊柱起立筋といった背中の筋活動によって脊椎が圧縮される「脊椎負荷」がかかるからです。荷物が重ければ重いほど前傾しやすくなるので、余計に負荷が増えていくことになります。この手の脊椎負荷の文献では「1冊の本でも脊椎には7冊分の力が働く」とよく言われています。

少し趣向を変えて、実際にPCT(パシフィック・クレスト・トレイル。アメリカを縦断する4,265kmのロングトレイル。アメリカ3大ロングトレイルのひとつ)をスルーハイクした人たちが、どれくらいの荷重を背負っているのか見ていきましょう。
毎年「HIKER SURVEY」がハイカーに関する統計を取っています。
・Pacific Crest Trail Hiker Survey (2025)
下記の表は2025年のデータになりますが、スルーハイカーの終了時のベースウェイトが6.82kgでした。意外とあるなという印象です。パックウェイトは推定で12.7kgになっています。これを米国成人の平均体重で割った体重比が表の右側です。

ベースウェイトが8.2%なので10%を切っています。軽いですね。パックウェイトだと15.2%となりました。
次に、荷物を背負うことで歩行の安定性がどう変わるのかという研究です。

AからDの姿勢で、それぞれ体重比10%〜20%の荷重で4分間歩行をして、歩幅や歩行周期といった歩行の安定性の変化を比較した論文です。
Aが荷物なし、Bが両肩で背負った時、Cが片肩だけで背負った時、Dが前で背負った時です。結果として、Bの姿勢であれば体重比15%くらいまでは安定性が保たれました。
逆にB〜Dのどの姿勢でも、体重比20%を超えると歩行のばらつきが大きくなるので、避けるべきという結果になりました。
次は、若年層ではなく30歳、40歳、50歳以上の男女を対象にした研究です。
・『遊びのための荷重:ニュージーランドのトランパー、彼らの活動と怪我の調査』
ニュージーランドのハイキングクラブの会員にアンケートを実施したところ、最大で体重比29%のバックパックを背負って、1日11km以上の距離を5時間連続で2日以上移動する人が多いという結果がでました。体重比29%というと、ほぼ人間の最大耐荷重です。
その人たちの怪我の報告率は74%もあって、捻挫が一番多く、部位としては膝関節と足首が最多でした。やっぱり重い荷物を背負うと、怪我をすることも多い印象です。
いろんな論文を見てきましたが、まとめると快適に背負える荷重は、体重比の10%〜15%が推奨されます。
快適な荷重(kg)=体重(kg)× 10%〜15%
例えば、体重50kgの人の場合は5〜7.5kg、体重70kgの人の場合は7〜10.5kgになります。
パックウェイトを10%〜15%の範囲に収めることができれば、比較的に怪我なく安全に、長距離のハイキングをできるのではないかと考えます。
②筋力
次は筋力について見ていきます。まずは足の筋活動についての論文です。
・『長時間の荷重歩行におけるバックパック荷重が女性ハイカーの下肢筋活動パターンに及ぼす影響』
先ほどの体重比でも紹介した論文で、15名の女性ハイカーに体重比0%、20%、30%、40%のバックパックを背負わせて8kmのトレッドミル歩行を実施した研究結果です。
体重比20%〜40%では、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)と、腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)をめちゃめちゃ使っていました。さらに8km歩いた後は、前脛骨筋というつま先を上げる筋肉の筋疲労が確認されました。

皆さんも長く歩いた後は、つまずきやすくなったり、足運びが雑になったり、転倒しやすくなったりといった経験があると思います。これは前脛骨筋の筋疲労から起きているものです。つまり、膝関節と足関節の周りの筋力増強がポイントになります。
そもそも体重比40%までいくと、筋活動のパターンや変化にもばらつきが出てきて、この重さの荷物を背負って8km歩くのは無理だという被験者も出てきました。
筋肉は神経によって動かされるんですが、次に荷物運搬後の大腿四頭筋の神経筋機能の変化を研究した論文を見ていきます。
これは健康な男性10名を対象に、荷物なしと、25kgのバックパックを背負った両方で、時速6.5kmのトレッドミル歩行を2時間行った研究です。
荷物なしの場合は、大腿四頭筋が最大限に力を発揮しましたが、25kgのバックパックを背負った場合は、大腿四頭筋が力いっぱい収縮できなくなってしまいました。つまり荷物を背負っているから、筋肉が最大出力を出せないことが分かります。
さらに神経疲労も起こっていました。神経は脳からの「動かせ!」という電気信号を筋肉に伝える役割を担っているのですが、その伝達がどうも遅かったりうまく出ていない現象も起きていました。筋肉自体も疲れている上に、神経も筋肉を動かすために司令を出しすぎて疲れてしまったような状態です。
筋力に関してまとめます。荷物を背負って歩くには大腿四頭筋と前脛骨筋が重要な役割を果たしていること、さらに重い荷物で長距離を歩くと神経疲労が起こることが分かりました。これは筋力トレーニングをすることで、負担を軽くすることができます。
③有酸素能力
次は有酸素能力です。有酸素能力とは、運動中に体内に酸素を取り込み、それをエネルギーに変えながら長時間運動を持続できる能力のことです。
まずはアメリカの特殊警察官を対象に行った研究を見ていきます。
25kgの荷物を背負って5km歩く課題で、被験者の筋力と、筋力に速度を掛け合わせた瞬発力、そして有酸素能力を測定しました。すると重い荷物を運ぶためには、有酸素能力が一番深く関係していることが分かりました。
つまり、ただ筋力があれば良いだけではなく、いかに酸素を使って長く動けるかといった有酸素能力の方が大事だということです。
ロングトレイルに向けたトレーニングとして、ランニングをしている人がいると思います。私は課題指向の人間なので、歩荷トレーニングみたいに重い荷物を担いで歩く方が良いと思っていたんですけど、ランニングで有酸素能力を鍛えるのも理にかなっているんだなと納得しました。
④パッキング
最後にパッキングです。
下記は、荷物の荷重をできるだけ体の重心に近づけることで、バックパックを運ぶ際のエネルギー消費を最小限に抑えることができるという論文です。
・『バックパックによる荷物運搬のレビュー −生理学・バイオメカニクス・医学的観点から−』
身体の重心がどこかというと、おへそのあたりです。荷物の重心が身体の重心の上にくるように近づければ、比較的軽く担げるということです。できれば荷物は、肩の高さにくるように配置するのが理想です。

重い荷物をバックパックのボトムに入れたり、バックパックの位置を下げすぎたりすると、上半身が後ろに引っ張られてバランスが崩れてしまい危険です。さらに姿勢を戻そうと脊柱起立筋や腹筋を使うので、エネルギーも削がれていきます。

それなら、荷物の重心を上げてしまおうと一番上に持ってくると、結果として身体の重心から離れてしまいます。さらに横方向に振られやすくなり、姿勢を保つために筋力を使ってエネルギーを消費してしまうことになります。
さらに荷物の運搬において、一番エネルギー効率が良いとされたのが、荷物を背面と前面に分けて担ぐダブルパックでした。荷重を分散させることが、耐荷重のポイントになっているんですね。
私も以前までは一番重い水をバックパックの一番上に置いていましたが、それだと結構振られてしまうこともありました。改善のために両肩のショルダーベルトにウォーターボトルを付けたところ、ブレにくくなって動きやすくなった経験があります。
下記のいろんな論文を調べたレビューでも、バックパック、フロントパック、ダブルパックのうち、ダブルパックは荷物を分散するため最適な荷物運搬方法という結果が出ています。
・『バックパックが身体に与える人間工学的影響−生体力学的および生理学的影響に関する総説−』
とはいえ、前面に荷物を担ぐと視界の確保に影響が出たり、蒸れたりして大変ですよね。あと単純に動きづらい。なので、兵士やハイカーにとってはバックパックが最大の妥協案という結論になりました。
さらにバックパックを背負う時は、ヒップベルトを使うことが推奨されています。荷物を背中の高い位置に密着させて身体の重心に近づけて、ショルダーストラップを短く硬めに絞ることで、荷物がブレないようにする提案がされています。

さらに耐荷重を決める二次的要素が3つあります。
ひとつは「慣れ」です。10時間のトレーニングで、耐荷重能力は伸びるという研究結果があります。次に「歩行速度」。歩行速度が速いほど負荷は大きくなります。最後は「地形」ですね。上り坂で負荷は激増します。これらは、なんとなく実感している方も多いと思います。

間接的要素
その他、関係があるようで間接的な要因でしかなかった要素を紹介します。
①性差
耐荷重は性別によって変わるのか。オーストラリア陸軍が行った研究を見てみましょう。
・『軍事訓練に関連する速度と負荷での歩行時における、荷物運搬に対する生理学的、知覚的、および生体力学的反応 ― 男性と女性の間に違いはあるのか?』
体重比に関係なく、男女が一律荷物30kgを背負って5kmの行進を行いました。女性の場合は体重比が大きくなるので、すぐに疲れてしまって、男性との距離が開いてしまいました。一方で、体重比を男女で統一したところ、エネルギー効率に関して男女差はなしという結果も出ています。つまり背負える荷物の重さは、性別よりも体格差の影響が大きいということです。
②人種/民族
次に、人種と民族に着目してみました。ですが人種に関して直接扱う研究は、ほぼありません。なぜなら、優生思想に繋がる可能性があるからです。仮に研究されていたとしても、稟議が通らないので世に出ることはないと思います。それにグローバル化が進んだ現在、科学界では人種のカテゴライズ自体が難しいです。
ただし、民族の研究はされています。例えば、アフリカ、ネパール、ヒマラヤの運搬民族の研究は進んでいて、運搬のメカニズムを考える時に面白い知見が得られるので、そこにスポットライトを当ててみます。
運搬民族が編み出した身体技術
まずは西アフリカの頭載歩行についての論文です。

アフリカ女性が頭載運搬をした際のエネルギー効率について研究したもので、体重比20%までの荷物の運搬にはエネルギーをほとんど消費しないという結果が出ました。つまり、荷物を担いでいない状態と同じということです。
「フリーライド現象」や「負荷運搬のパラドックス」と呼ばれるものですが、なぜそんなことが可能なのかというと、脊柱を一直線にして、身体の重心の真上に荷物を載せているからです。

つまり荷物を骨と靭帯で支えているので、筋肉を使わなくて済むんです。筋肉は酸素が血液を運ぶことで動く構造なので、筋肉を使うと疲労が起こります。ですが骨と靭帯はエネルギーを使わない構造なので、すごく効率が良いんですね。積み木を積んでいるような感覚です。
移動の仕方にも特長があって、荷物が身体と一緒に滑るように移動しています。普段、人間が歩く時は身体が上下に振動していると思いますが、彼女たちは振動が起きないようにスーッとうまく歩いてるんですね。
ただ、後続研究ではフリーライドは一般化できないんじゃないかという見解も出てきています。
・『“フリーライド仮説” −アフリカ女性の頭載運搬効率を再検討する−』
アフリカ人女性24名を対象に、体重比10%から70%の荷重を、頭に載せた時とバックパックで運んだ時とで、運搬効率を比較した研究です。
結果、どちらも25%までは運べましたが、消費エネルギーはどちらも体重比が上がるごとに増えていたんですよね。24名の中でも個人差が大きくて、熟練している人はほとんどエネルギーを消費しないで運べていますが、フリーライドは一般化できないという結論になっています。
では、他の運搬民族にも注目してみましょう。ネパールやヒマラヤのポーターの方です。すごく大きい荷物を運んでいますが、この人たちが、なぜこんな荷物を運べるのかをお話していきます。

まず、ネパール人のポーターは体重比100%から200%、つまり自身の体重あるいは倍の重量の荷物を背負えているんですよ。しかも標高3,500m以上の山道を何日も。なぜそんなことができるのかというと、遺伝子変異が起きていました。
チベット高原では何千年も前から人が居住していたので、高地低酸素に適応するために遺伝子が変わっていったんです。
荷物を運ぶ道具にも特長があって、ナムロというおでこに巻いてるバンドのようなもので、荷重分散をしています。これを付けると前傾姿勢でも脊柱を一直線に近づけることができます。先ほどの頭載歩行と同じ原理で、一直線にすることで、荷重の負荷を身体全体に分散しています。
さらに彼らは歩行効率が異常に高いです。小さい歩幅でゆっくりと身体の動揺が少ない状態で歩いています。その上、幼少期から重い荷物を背負って適応しているので、体重比100%から200%の荷物を背負えるという結果がでました。
ただし、若い頃から重い荷物を背負って身体に負担をかけているので、腰痛や頸椎障害、膝関節障害などの健康問題もあります。
全体をまとめると、下記の項目になります。
まとめ
・耐荷重を決める要素は主に体重比、筋力、有酸素能力、パッキング
・軽量化が歩行の安定性を保ち怪我を予防する
・推奨される体重比以上の荷物を運ぶ必要があるなら、パッキングの工夫や筋力増強や有酸素運動などのトレーニングをする
おわりに
今回の講義を通してお伝えした通り、自分が背負える重さを科学的根拠に基づいて割り出して、どうすれば重い荷物を背負える体になれるかを考える。そこまで視野を広げた状態で、旅の方法や道具を選び取って、怪我なく楽しい旅ができると良いですね。
理学療法士の視点から言うと、骨折したり、怪我で入院してリハビリするとなると、骨治療で何週間もかかったり、怪我をしたところに体重をかけられなくなったり、筋力を取り戻すのもかなり大変です。なので、皆さんウルトラライトで怪我を防ぎながら、楽しい旅を送ってください。ありがとうございました。






















