#13 ついに最終回! 大切な人と長崎・妙見岳で新婚ピクニッキング
#13 ついに最終回! 大切な人と長崎・妙見岳で新婚ピクニッキング
鎌倉の山と道社員食堂で毎日独創的なお昼ご飯を作るスタッフの寒川奏。イラストレーターとしても活動する彼女がとにかくおいしいものを、気持ちの良い場所で、大好きな人と食べること……つまりピクニックをすることについて綴るこの連載。この連載が、ついに最終回を迎えます。
そんな最終回のゲストとして登場するのは夫の「ともさん」。ピクニッキング先は、新婚旅行で訪れた長崎県の雲仙にある妙見岳です。新婚のふたりをテーマに、雲仙の地の食材と温泉の恵みを存分に活用して、食いしん坊の寒川らしいラストランチを現地調理します。さらにめでたいご報告もありますので、寒川の新たな門出にエールを送りながら、ぜひラストを見届けてください。
今回で連載はひと区切りとなりますが、寒川のピクニッキングはこれからも続いていきます! 皆さまもぜひ大切な人を誘って、ピクニッキングに出かけてくださいね。
ピクニッキングとは?
まずはピクニッキングが何かをご紹介。
ピクニッキングとはピクニックとハイキングを掛け合わせた造語である。なぜ私がいまピクニッキングマスターを目指しているかは第1回を読んでもらいたいが、ピクニッキングとは、以下のようなものだと私は考えている。
- 最低1時間のハイクをする(しかし一緒に行く人の体調や体に合わせて、全員が楽しめるハイクにする)。
- 食べることを主眼においたデイハイク。何人かでそれぞれ食べ物や飲み物を持ち寄り、それをシェアして食べる。
- ハイキングの行程はあくまでどこで食べるかが主眼。
- 参加者それぞれがピクニッキングに向けて食料を準備する(なるべく手作りする)ことも非常に重要。
つまり、誰かの家でやる持ち寄りパーティを屋外で、ハイキングを絡めてやるのがピクニッキング?
これはあくまでも私の定義であって、もっと違ってもいいと思う。読者の皆様にも自分のピクニッキングを見つけて欲しい。
ピクニッキング最終回
皆さまお久しぶりです。前回からずいぶん間が空いてしまいましたが、その間に寒川にも色々ございました。結婚して苗字が寒川ではなくなったり、現在妊娠7ヶ月とかそんなもんです。あと誕生日もあり、31歳になりました。
きっと読者の皆さんは今、私に「おめでとう」って思ってくださってますよね?
ありがとうございます! 結婚して子供ができるなんて思ってもみなかったので、大変嬉しいです。22歳の頃デンマークに留学していた時に、先生と喧嘩して先生の著書をビリビリに破いて大雨が降る中に思い切り投げ捨てて、暴言を吐いていた若き日の自分からは想像もできなかった未来です。

授業が非生産的と勝手に判断し、サボって部屋で絵を描いていたら、先生にバレて大喧嘩し、最後はふたりで泣きながらハグした22歳のあの日の私。
というわけでお腹が大きくなってきた今日この頃。産休・育休に入る日も近くなってまいりました。私はピクニッキングの連載記事をずっと読んでくださっていた読者の方に何も告げずに、ふわっといなくなるなんて薄情者ではございません。
今回をピクニッキング最終回として、しばし皆さんとはお別れとなります。そんなラストピクニッキングは大事な大事な人と一緒に行ってきました。
ついにラスボス召喚
最後のピクニッキングのゲストは、もうずっと前から決めてあった。
それは「夫」。

大阪万博で25年後の自分と出会う夫、ともさん。
「大事な人と行くこと」ということも大切なポイントとしてやってきたピクニッキングにおいて、夫であるともさんをお誘いしないのはありえない。最終回に相応しいラスボスとして召喚だ!
一応新婚である我々には、新婚旅行としてアイスランドへ行く計画があった。そこにおめでた(妊娠)が発覚し、何かあったら怖いのでいったん延期に。その代替案として九州旅行を計画していた。
寒川「ともさん、今度九州行く時にピクニッキングに一緒に行こうよ。最終回のゲストだよ。」
ともさん「満を持して俺か〜。いいですよ。行きましょう。」
さすがともさん。最終回という名誉ある誘いも、さらりとOKをしてくれた。私だったら最終回に誘われたら「私でいいのかな? ドキドキ!」みたいな感じでテンションが上がってしまうが、ともさんは冷静沈着かつ聡明で寒川とは真逆の人間。ちなみに我々の主な共通点は自然が好きなところと臓器の位置。
妊娠中にハイキング?
ピクニッキング計画はまだお腹が大きくなる前から立て始めていた。その時点では2時間くらいのハイキングはいけそうだったから、「(長崎県の)雲仙の普賢岳とか行っちゃう?」とか思っていた。
なんなら山と道内の「ULハイキング研修制度」を利用して『妊婦が行く! 安産祈願ハイキング3日間』なんかも企画していたくらいなのだ。しかし、いざ日程が近づいてきたら、日に日に大きくなるお腹、ゆるんできた骨盤、抗えない腰痛、慢性的な疲れやすさ、ホルモンの荒波、よく動く我が子によるお腹の張り…ハイキングは1時間程度が安全かもと思うように。
しかし普賢岳も拝みたいので、普賢岳や雲仙の絶景が見れる上に約1時間でイージーに登れる山である妙見岳をチョイス。山頂で「もう無理」となってもロープウェイがあるから安心なのだ。
最後のピクニッキングなのに、ゆるめのハイキングになってしまって不甲斐なくはあるが、妊婦だから仕方がない。体調優先、冒険はしない。だってもう31歳、親になるんだもん!
編注:妊娠中のハイキングは、体調や環境の変化が大きく影響する場合があります。必ずご自身の体調としっかり相談しながら、無理のない範囲で慎重に行動してください。
栄えあるラストランチは何にする?
さて、どこに行くかは決まったが何を食べるかも大事。
これまでのピクニッキングではいろんなものを作ってきた。あーでもない、こーでもない、でもやっぱりこれが食べたい、など色々やってきたなあ。今回は旅先なので、自分のキッチンで調理するのとはワケが違う。できることは限られるが、新婚である我々にぴったりなものを用意したい。
新婚にぴったりってなんだ? おめでたい感じ? 永く続く関係? 愛してる?
なんだかよくわからないのでChatGPTに訊いてみた。
「新婚にぴったりのピクニックランチを提案してください。」と質問してみたところ、さすがChatGPT、たくさん提案してくれた。
円満な夫婦仲を願って「紅白丸おにぎり」にハートやインフィニティマークの海苔で永遠の愛を表したり、新しい門出を象徴してフレッシュな酸味のある飲み物や、カラフルな野菜を束ねて「これからふたりで育てていく未来」を表現したりなど、どれも鼻血が出そうなほどにロマンチックだ。
なんなら白いクロスで「結婚式的な純白感」を表現し、野花も散らしてピクニック祭壇にするなんていう演出まで提案してくれた。

しかし、あくまでもこれはピクニッキング。こんなにふたりのロマンチックインフィニティラブ(甘美なる永遠の愛)に偏ってしまうと、読者も私も恥ずかしくなって収集がつかなくなる未来しか想像できなかった。なので、ゴミも少なく荷物もコンパクトになる「おにぎり」という提案はありがたく受け取るとして、そこから派生して「海苔巻き」にすることにした。
なぜ派生したのかというと、私のような食い意地が張っている人間は、おにぎりという小さなキャンバスには具材を包みきれないので、極太海苔巻きにすることで欲望を叶えられると考えたからだ。食いしん坊妊婦の食欲を舐めないでほしい。
ChatGPTいわく、海苔巻きにもいろんな意味が込められるらしい。
などなど…
正直ChatGPTに訊けば、どんな食べ物でも意味を持たせられる気もしたが、いいじゃない? ロマンティックが止まらないじゃない?
そんなこんなで現地の食材を使ったローカルな海苔巻きにすることが決定した。雲仙の恵みと、ともさんへの愛、マルっと全部巻いちゃおうじゃん!
旅先で地元の食材集め
今回の旅行は熊本空港からスタートし、天草、雲仙、波佐見、そして再び熊本空港でゴールという流れになっていた。ピクニッキングは旅の4日目に雲仙にて行う予定。なので天草を堪能してからの雲仙でのピクニッキングとなる。
天草では天草四郎や隠れキリシタンなどの歴史を感じ、2晩のキャンプ泊。天草大王(天草で飼育されている日本最大級の地鶏)を食べられなかったなあと後ろ髪を引かれながらも、雲仙に移動。雲仙ではそこらじゅうからモクモクと湧き出る蒸気に驚きつつ、温泉のパワーの強さに感動。さらには九州の海の幸を、これでもかというほどに吸収する最高の旅となっていた。

天草にある世界文化遺産の﨑津教会ではしゃぐ妊婦寒川
さて、旅先での食材集めといえば直売所や道の駅だと私は思っている。雲仙にはかねてより気になっていた「オーガニック直売所タネト」というお店がある。このお店は地域の農家が育てた安心・安全なオーガニック食材を、鮮度そのままに届ける直売スタイルの食の拠点。食材集めにはぴったりだ!スーパー、直売所、道の駅、自然食品店が大好きな私にとって天国のような場所で、「あと4時間いてもいいですか?」と思うほどに最高に楽しいお店だった。
こちらでは自然栽培の5分づきのお米、煮干しを入れた炊き込みご飯で雲仙の郷土料理である「じてんしゃ飯の素」、レモングラスオイル、四角豆、キンカン、海苔、ハーブティーを購入。どれもこれも地元で採れた/作られたものばかり。そして手作りのマフィンとクッキーも売っていたので、こちらも購入。やはりピクニックにおやつは欠かせない。

食い意地だの食いしん坊だの言っていたのに、具材が少なくない?と思ったそこのあなた、心配ご無用。以前、ともさんと台湾に行った際に食べた飯糰(ファントン:もち米を使い、中に煮卵、肉そぼろ、高菜漬け、揚げパンなどを入れて棒状に握った台湾式のおにぎり)にインスピレーションを得た海苔巻きにしようと思っていたので、具材には雲仙の温泉蒸しのゆで卵をまるまるひとつ入れるのだ。

ファントンは台湾の屋台飯。朝6時台から開いていて、具材やご飯を選ばせてくれる。(※今年行った台湾旅行の時の写真)

顔ほどのサイズがある、餅米のどっしりでっかいおにぎりだ!

中には豚肉のフレークや卵、高菜漬けなどが入っていた。
手に入れた地元食材でランチづくり
ピクニッキング前日に泊まったのは、「湯宿 蒸気屋」という温泉の湯気で地元の新鮮な食材を蒸して味わう体験ができる宿だったため、簡単な調理ができるキッチンがあった。

湯宿 蒸気屋さんのキッチン。宿泊客でシェアするので広い。塩などの基本的な調味料が揃っていてありがたい。

米と野菜を蒸す。お米を蒸すなんて初めてだ!

噂の温泉蒸し。蒸し場はたくさんあるが、食事時にはいつも人でいっぱいになる。

こんな感じで蒸しあげる。20分お米を漬けてから、1時間蒸す。

材料も揃ったので巻いちゃおう!

オイルと塩で四角豆をマリネ。

温泉蒸しの黒たまご。剥いてみると中は茶色い。温泉成分が芯まで染み込んだ黒たまごに期待が高まる。

ご飯を敷き、黒たまごを乗せ、黒たまごの周りをマリネした四角豆で囲む。

キンカンを果汁と身ごとすりすり。柑橘のいい香りがする。

巻き巻きタイム。巻くというか握るというか、包むというか…とにかく「中身全部入れ! 巻かれろ!」の思いを込める。

巻かれました。ぎゅうぎゅうの重い海苔巻きが完成。
さて、ランチもできたし、ピクニッキングに出発だ!
いよいよラストピクニッキングへ
先述した通り、今回は1時間ほどのハイキングを計画した。

仁田峠駐車場からスタートし、妙見岳山頂を目指すシンプルなコース。登りの所要時間は40分〜1時間ほど。ロープウェイなら所要時間は3分。展望所からは雲仙・普賢岳や島原が望める。
天気は良好、ピクニッキング日和。ラストを飾るのに最高の日だ!

日焼け止めを塗ってきて良かったと心底思うほどの晴天。どうやら妊婦は紫外線に弱くなり、シミそばかすができやすいらしい。絶対に嫌だ、きれいなお母さんでいるんだ。

100点の笑顔。
人はちらほら、老若男女いろんな年代がいる。しかしロープウェイ乗り場を過ぎると、ほとんど人はいなくなった。確かにロープウェイがあるなら、わざわざ歩かないか。
1時間で登れる山…ちょっと前の私なら走っていって帰ってくるくらいの体力があったのにな。今や優先席では譲ってもらい、荷物は全部持ってもらう。登りが続くと腰痛のことしか考えられない。今回は登りだけなのでゆっくり行こう。

本当に何も持っていない寒川。
久々の山登りで思ったより早く息が上がるなと思いつつ、気のせいにしたいのでお話し。
ともさん「久々の山だね。足元に気をつけて、安産のために内転筋とお尻と膣に力を入れて歩くんですよ。」
寒川「分かる。分かるけど忙しすぎる。今どこに力が入ってるのか分からない。歩けてる?」
ともさんは元から私のことをいつでも気にかけてくれるWANH(What a nice husband)なのだが、私が妊娠してから磨きがかかっている。

ふたり分の荷物を持つWANH(What a nice husband)
寒川「なんか山登りが久々すぎて、こんな感じだったっけってなってる。荷物も全部ともさんに持ってもらってるのに、早くも疲れてきた気がする。妊婦だからだと思いたい。毎朝ウォーキングしてるけど、やっぱりワケが違うわ。」
ともさん「妊婦だからですよ。もうひとり運んでるってことだからね。俺、もうすぐ東北の山に友達と行くんだけど、こんなんじゃダメだ。帰ったらランニングしてトレーニングしよ。」
ふたりとも久々のハイキングに、体がびっくりしてしまっている。情けないっす。
寒川「ともさんて、ピクニックとかしたことなさそう。」
ともさん「失礼な。たぶんあります。ていうかピクニックってなんなん? 遠足? キャンプでご飯食べるのとは違うん?」
寒川「ご飯とかおやつ、ドリンクを公園とか外に持ち寄ってお喋りしてわいわいすることかな。まあ遠足もピクニックっちゃピクニックだし、皆それぞれのピクニックがあるから聞いといてアレですけど、私も分かんなくなっちゃいました。」
ともさん「外ではしてないけど、シェアハウスではそんなことをいつもしてたけどね。」
ともさんは元々シェアハウスで暮らしていた。シェアハウスではほぼ毎週末、みんなでご飯を作って食べたりパーティー的なことをよくやっていた。
そう、彼は私と違って友達が多いのだ。そして彼はその友達を大切にする。お腹の子にはともさんに似てほしい。だってそもそもピクニックに誘う友達がいなかったらどうにもならないじゃない? 私がこの2年間の連載で、何回身内を登場させたと思ってるの?
ともさん「今回でピクニッキングの連載は終了するけど、ピクニックは続けるの?」
寒川「個人的に続けたい! もっと自由に色々やりたいんだ〜。そもそも友達いないし、ひとりで行きたいな〜って思ってたの(笑)。あと野望があって、この2年間の連載で思いついたピクニッキング道具を開発して売ってみたいんだ。この連載を読んでくれてた読者の人とも繋がれる気もするし、もう構想はたくさんあるから、全部作ってみたい。マグとか、お皿とか、ピクニックシートとか、バッグとかね! 絶対可愛いよ。」
ここで詳しく書いたことはなかったが、寒川は作家活動もしている。イラストをメインとしていろんなものづくりをしているよ。ぜひチェックしてください。
ともさん「いいじゃない! 俺も手伝うよ。俺は作り出すよりも、作り出されたものをプロデュースしていくことに長けてるからね。カナデさん(寒川)にはたくさん好きなことをしてほしい。」
出ましたWANH(What a nice husband)。ともさんは賢い。何においても聡明で人間力を発揮する。しかも正論のみをぶつけてくるんじゃなくて、ちゃんとこちらの意見も聞いて受け入れるのだ。すごくない?
彼は私よりひとつ年下で、ほぼ同じ年数生きてきてるのに、あまりにも私たちは違う。どんな人生を過ごしたらこんなに賢い人間が出来上がるのかよく分からない。少なくともデンマークの学校で、酔っ払って人混みの中に無理やり入り込み、中心で激しく踊り出すなんて過ごし方はしてこなかったんだろうな。私ひとりでは難しいことでも、ふたりだったらなんでも叶えられる気がして心強い。ちなみに私は普段踊らないし踊れない。
心の中で「この子が、目以外はともさん似で生まれますように」と願った。寒川は目が可愛いので、ぜひ採用してほしい。
随分ともさんを褒めていて、ただのノロケかと思ってしまっている読者もいるかもしれないので少し言い訳させてもらうと、もし今後ともさんと喧嘩したり険悪になってしまった時に、お互いこれを読めば初心に帰れるのではないかという狙いがあるのだ。デジタルタトゥーにもいろんな使い方があるよね。
登るリズムができてきて呼吸も落ち着いてきた頃、少し足を止めて振り返ると、美しい景色が広がっていた。

きれい! 天気が良いというだけで幸せだし、儲けたみたいな気持ちになるよね!

我が子も一緒に。あまりお腹が出てないタイプなので、一生懸命出してみた。
どうやら山頂も近そうだ。少し登り進めたら真っ赤な妙見岳展望所に到着した。1時間もかからずに着いた。息は上がれど、身体はあまり鈍ってなかった。

あまりにも赤い展望所。
山頂はもう少し上にあるらしいので歩いて登ってみたが、あまりいい場所がなかった。なので、妙見岳駅展望所のベンチを今回のピクニック場所にすることにした。

妙見岳展望所のベンチ

山頂には小さな妙見神社。ちょうどいいピクニック場所はなかった。
新婚ピクニックスタート!
ともさん「腹減った〜! カナデさん、俺、腹が減りました!」
寒川「ふっふっふ、本日のランチはこちらです! 本来は持ち寄るというのがピクニックだけど、今回、我々はニコイチ(平成ギャル語で「2人でひとつ」という意味。仲の良い親友やカップル、夫婦に使われる)と考えさせてもらって、代表して私が持ってきました。」

2本のタンブラーには宿で沸かしてきたお湯を入れてきた。それぞれフリーズドライのスープと、食後のハーブティーに使う。「スープ→海苔巻き→おやつ→ハーブティー→お口直しのみかん」という完璧な流れが計算されている。
ともさん「正直もうカナデさんのご飯が好きすぎて、俺の料理なんか、もう本当に困ったときだけ作ればいいんですよ。」
寒川「なんだかうまいこと言って私が作る感じになってるけど、料理好きなのでオッケーです! どうぞ召し上がれ〜!」

まずはスープを注ぐ。熱々ではないが、火気禁止の場所ではありがたく十分な暖かさ。
ともさん「やった〜! いただきます! 味噌汁おいし〜。旅の途中で寄ったそうめん屋さんで買ったやつだよね。」
寒川「そうそう、そうめん屋さんだと思ってたけど、きのこ屋さんだったかも。だいぶ違うけど、そうめんおいしかったね。」
旅をしながら、その都度生まれる思い出を、旅に少しずつ取り入れていくのが楽しくて幸せ。
ともさん「海苔巻き、いただきます! レモングラスの香りがすごい!」
寒川「確かに! 包みを超えてくる香しさだね。海苔巻きには夫婦の縁を固く結び、我が家の繁栄の願いとこれからもよろしくねっていう想いを込めてみました。中に卵を入れることで、お腹の我が子を表現してみたよ(笑)」
ともさん「素晴らしい。おめでたい海苔巻きだね〜。」

黒たまごが良い仕事してる! お肉にも魚にも疲れてる胃には、卵くらいがちょうど良い。
ともさん「ん〜! 最初はレモングラスの香りが一番強いと思ったけど、食べてみるとキンカンの香りがすごい。 海苔巻きに柑橘って新しいし、おいしい!」
寒川「キンカン大正解だね! 柑橘類の爽やかな香りは疲れとかストレス緩和に効果的だから、少し体を動かした後にスッキリしていいかなと思って入れてみたの。あとChatGPTが、爽やかな酸味は新たな門出を象徴するとか言ってたし…。私はよくお粥とか何にでも入れちゃうけど、海苔巻きもいいね! 洋食にも和食にも万能よね。」
ともさん「これは売れますよカナデさん。ご飯に混ぜるだけの柑橘系の調味料とか作ったら売れそう!」
寒川「こんなんいくらでもあるし、自分で混ぜりゃいいだけだからどうかな〜…。」
ともさん「この世のほとんどは二番煎じだから、やったもん勝ちなんですよ。」
ともさんが言うと、できる気がしてくるからすごい。

「おいしい」って食べてくれるから本当に嬉しい。作り甲斐があるし、自分も食欲が増してくる。
食べながら、ここに胡桃とか胡麻とか入れてもおいしいだろうなとか、カレー粉とチーズで混ぜご飯を作って菜種油とマスタードシードで炒めた青菜と鯖フレークとか入れてもおいしいだろうなとか、どんどん思いつく。やっぱり自分は料理が好きなんだな。
ともさんはお腹が本当に空いていたようで、ペロリと海苔巻きを平らげてくれた。食後には、待ってましたおやつタイム! ハーブティーも淹れて完璧だ。
寒川「イチジクのマフィンだって。イチジク狂いだから嬉しい。」

体に優しいおやつとお茶。重くなくて、さらりと食べられる。
ともさん「ハーブティーもいい香り。これもストレス緩和効果を狙ってですよね? さすがです、カナデさん。」
寒川「ふっふっふ、その通りです。旅行って楽しいけど疲れるからね。少しホッとした時間になったね。どうでしたか? 初めてのピクニッキングは。」
ともさん「最高です。この子が生まれたら、家族でたくさんピクニッキングしよう。」
寒川「じゃあ、ともさんに荷物と子供を背負ってもらっちゃおうかな。」
ともさん「そこはおいおい話し合いましょう。」
我が子を連れてピクニッキングする日が来たらとても嬉しい。歩いてくれるかな? 私のご飯を気に入ってくれるかな? 楽しんでくれるかな?

そろそろ食べ終わったので、片付けをして下山をしよう。海苔巻きだと片付けるものも少なくて、とてもクイックに片付けが終わった。
寒川「あれ? ふたつ道がある? どっから来たっけ?」
ともさん「あっ、さっきから人が登ってきてると思ってた場所は、ロープウェイから展望所までの階段出口だったんだね。」
寒川「そうか! 結構、体力的に限界そうなおばあちゃんも登れるのに、自分は息が上がって恥ずかしいなって思ってたけど、あれはロープウェイを使った人たちだったのか。な〜んだ。」
自信も取り戻せたので、元気に歩いて下ります。産んだらランニングしたり、ヨガしたり、山登りしたり、体力を取り戻してもっとキツめの山に行くんだ。

帰りも晴天!
30分弱で下り、今回のピクニッキングは終了。夫をゲストに迎えた連載最後のピクニッキング。2年間の連載の素敵なエンディングになったのではないだろうか?
私のピクニッキングはこれでは終わらない。これからも個人的に続けていくので、どこかに綴ろうかなと思う。先述した通り、ピクニッキンググッズも作っていきたいので、またどこかでみなさまと関われるのではないだろうか。
ちなみにだが、この2年間の連載中に色々あった。過去記事も読んでもらえれば、アラサー女の様々を垣間見れると思うので、ぜひ気が向いたら読んでみてほしい。カーダシアン一家ほどではないが、私が自分をコンテンツ化してることがよく分かると思う。自分の子供にもいつか読んでほしいな。お母さんという人間の一部分が見れるよ。
みなさま、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。おんな寒川、気合い入れて産んでまいります。また会う日まで、おのおの自分のピクニッキングを展開していきましょう。
みなさま、最高の人生をお送りください。
追伸:展望所は人がたくさんいて音楽をかけるのは憚られたため、ここで最後のピクニッキングプレイリストをシェア。ラストかつハッピーウェディングなプレイリスト。どこかの誰かが結婚式にでも使ってくれたら嬉しい。
めでたい海苔巻きの作り方
○材料(2人分)
・★炊いたご飯 1合
・★カリカリ梅(あらみじん切り) 4粒分
・★黒ごま 大さじ1
・◯ゆで卵 2個
・◯食感のいい長めの野菜(いんげん、四角豆、きゅうりの細切り)4~8本(素材の太さによって調整)
・◯塩 2つまみ(好みで調整)
・◯お好きな油
・柑橘(柚子や酢橘など)1個
・海苔 2枚
・糊付け用の水 適量

①★の材料をボウルに入れて全体を混ぜる。

②別のボウルに◯の材料を入れ軽くマリネしておく。

③ラップに海苔を敷き、混ぜておいたご飯を海苔の上に広げる。この時、上部分2cmを糊付け用に空けておく。

④ご飯の上にマリネした◯の材料たちをイラストのように並べる。

⑤その上から柑橘の皮をまぶす。

⑥残しておいた2cmの部分に水を塗る。

⑦ラップも使って巻く。とにかく全部巻き込む。

【Tips】入りそうにない時は海苔を足しても良いし、パワーでギュッギュッと巻き込む。中に入れば全てOK!

⑧半分に切って断面を楽しんでも良いですが、そのまま食べるのがおいしいのでおすすめ。海苔はいいものを使うと感動的においしくなります。ぜひ試してみてください。


























