山と道ラボ
【ベースレイヤー編#6】
市場の概観と注目製品の実着レビュー

2020.11.28

これまでの『ベースレイヤー編』では、化学繊維と天然繊維(ウール)を対比しながら素材特性を包括的に評価し、ベースレイヤーにシチュエーションごとに求められる機能と特性を考察してきましたが、前回までに一定の結論に到ることができました。

そこで今回からは個別製品やテクノロジーにも視野を広げ、2020年現在のベースレイヤー・マーケットをマクロとミクロの視点から掘り下げていきます。

まずマクロの視点では、機能性や主たる素材が共通する製品グループ(カテゴリー)を特定してマーケットのマッピングを行い、次にミクロの視点では、2020年現在の注目すべき13製品をピックアップし、自身もトレイルランナーである山と道ラボ渡部が同一条件でのインプレッションを行いました。

結果、今回も膨大なテキスト量になってしまいましたが、手前味噌ながら日々進化し続ける現代のベースレイヤー・マーケットを俯瞰する第1級の資料になりました。

ぜひ、読者の皆さまの適切なベースレイヤー選びにお役立ていただければ幸いです!

過去のベースレイヤー編一覧

山と道ラボとは
山道具の機能や構造、性能を解析する、山と道の研究部門です。アイテムごとに研究員が徹底的なリサーチを行い、そこで得られた知見を山と道の製品開発にフィードバックする他、この『山と道JOURNALS』で積極的に情報共有していくことで、ハイカーそれぞれの山道具に対するリテラシーを高めることを目指します。

文/写真:渡部隆宏
イラスト/図表:KOH BODY
製品写真:三田正明

マーケットのマッピングとカテゴライズ

今回のベースレイヤー編は、2020年現在のアウトドア・マーケットに存在する様々なベースレイヤー製品を網羅的に整理する枠組みを考えることとした。

具体的には、個々の製品がそれぞれ特長としてアピールしている便益や提供価値を区分する軸を特定し、軸の上での位置関係が近いものをグループ化し、ベースレイヤーのマーケットは全体としてどのような軸で構成され、どのようなグループが存在しているのかという地図(マップ)を作成したいと考えた。

整理する軸の候補はいくつか考えられるが、ベースレイヤー編#2で定義した通り、筆者はベースレイヤーの最も本質的な役割を「汗処理」であると捉えている。

したがって、まずは「速乾性<-->吸湿性」を整理の軸として定めた。かいた汗に対して素材が素早く乾くことで対処するのか、素材に吸湿させることで肌をドライに保ったり一定の保温性を維持したりするのか、ベースレイヤーの汗処理の方向性は大きくふたつに別れるからである。

もうひとつの軸としては「冷却性<-->保温性」を採用した。ベースレイヤーに暖かさを求めるか、それとも逆にヒートアップの防止や涼しさを求めるかは、利用場面やアクティビティ、製品の仕様に直接関連すると考えられるためである。

この2軸を縦横に組み合わせ、現在のマーケットにあるベースレイヤーを素材やテクノロジーごとに配置すると以下のようなマップとなった。

横軸は汗の処理を表し、左側が速乾性による汗処理を、右側は吸湿性による汗処理を意味する。左はポリエステルやポリプロピレンといった本質的に水分を含まない化学繊維が得意な分野であり、右はウールや植物系の素材(綿や麻に加え、レーヨンやトリアセテートなどパルプ由来の繊維類も含む)の得意分野である。

縦軸は保温性を表し、上は気温が高かったり活動量が多かったりして、身体を冷やしたいという状況を意味する。下は外部環境が寒く(あるいは停滞時や強風下など寒く感じられ)、保温性を求める場面である。縦軸の中心に近い範囲は、特段の冷却も保温も必要とせず、体温を維持したい状況を意味する。

この2つの軸を組み合わせることで大きく4つのエリアが現れ、それぞれの領域に(あるいは領域を跨いで)ベースレイヤーの製品カテゴリーをプロットすることができる(*)。

*カテゴリーの定義や位置・範囲については筆者の判断によるものであり仮説含みであること、一部に厳密さを欠く可能性がある点はご容赦いただきたい。

マップ上に典型的なアクティビティを例示すると以下のようになる。

続いては個々の領域について解説していきたい。

体温の冷却と速乾性を重視したベースレイヤー

まず、マップの左上領域は大量に発汗し、かつ冷却を重視したい状況である。温暖な時期において活動量が多く身体がヒートアップしやすい活動、具体的にはトレイルランランやファストパッキングなどが該当する。

この領域では速乾性が重視される。温暖な環境下でいち早く身体を冷やすには汗の蒸発/気化熱によるクーリング作用が最も有効なためである。

ここではさらに、その汗処理方法の違いによって、大きく「通気型速乾」と「拡散型速乾(*)」という2つのカテゴリーを定義した。

「通気型速乾」とは、メッシュ構造/グリッド構造などに仕立てた薄い生地によって通気性を高め、1秒でも早く汗を蒸発させることに注力した製品群である。

一方で「拡散型速乾」とは、汗を素早く肌から遠ざけ生地の表面で拡散・放出するもので、通気性や生地全般の速乾速度よりも、まず肌面をドライにするという点に注力した製品群である。

*「拡散型速乾」というカテゴライズについてはベースレイヤー#1のRun boys!Run girls!桑原慶氏との鼎談を参考とさせていただいた。現実には、拡散型の特性を持ちつつ生地をグリッド構造に仕立てた折衷型の製品も少なくない。

この領域には「メッシュ肌着」と呼ばれるカテゴリーも存在している。これは肌とベースレイヤーとの間に嵩高なメッシュ層をはさむことで物理的に汗を肌から遠ざけ、メッシュの上に着用したベースレイヤーに汗を吸着させるというメカニズムによって汗冷えを防ぐものである。ある意味「拡散型速乾」はこのメッシュ肌着とベースレイヤーのレイヤリング効果を、1枚の生地で実現しようとしたテクノロジーと考えられる。

メッシュ肌着はどちらかというと保温を重視した製品であり、「冷却性<-->保温性」の縦軸の下側を占めるように位置づけた(筆者の周りでも、夏にメッシュ肌着を使う例は高所登山や沢登りなどに限られる印象である)。しかしながら薄手の生地で暖かい時期に配慮した製品も存在するため、縦軸上側(冷却)にも一部跨るかたちとしている。

全般的に、この左上の速乾性を重視したエリアは吸水速乾性の高い新素材の開発が積極的に進められている分野であると言える。

体温の冷却と吸湿性を重視したベースレイヤー

マップ右上の領域は身体がヒートアップしているが、吸湿によって汗を処理したいという状況である。この場合は汗の速乾による気化熱という強力な冷却効果が得られないため、実際にはヒートアップの度合いが左上に比べて低いアクティビティが該当する。

比較的温暖な時期において適宜休憩を挟むような活動が該当し、具体的には一般的なハイキングなど、比較的温暖な時期において適宜休憩を挟むようなアクティビティが想定されるが、トレイルランニングやファストパッキングであっても、ペースが比較的ゆるやかであったり活動時間(行動日数)が長かったりする場合にはこの領域に含まれてくる。

いずれも位置づけとしては「冷却性<-->保温性」の縦軸の中央付近にあり、冷却というよりも体温の維持が目的となる。この領域では活動時間が長くなることも多く、日常着の延長としての着心地や防臭性(*)も重要となる。

*一般的に吸湿素材は湿気と共に臭気物質を吸収すると考えられ、非吸湿素材よりも防臭性が高い

ここで中心となるカテゴリーは「ウール系吸湿」「パルプ系吸湿」である。いずれも天然素材(獣毛または植物由来原料)をもとにしたもので、特に「ウール系吸湿」は素肌に直接着用できるメリノウール製ベースレイヤーの登場以降、その吸湿性の高さや汗冷えのしにくさといった機能性に加え、やわらかな肌触りや消臭性といった快適性能にもすぐれることから、ひろく使われるようになってきている。「パルプ系吸湿」には綿や麻のほか、レーヨンや半合成繊維(パルプ繊維を溶解し再合成した繊維)、吸湿性だけでなく速乾性にもすぐれたラミー(苧麻*)やトリアセテートといった素材がある。

*麻の繊維の一種

ウール系であってもパルプ系であってもこの領域で速乾機能がまったく不要というわけではなく、ポリエステルなど他の化学繊維と混紡することで速乾性(および耐久性)を補っている製品が多い。

※左上・右上を跨いで点在するテクノロジーとして、生地に触れた瞬間に冷たさを感じるいわゆる「接触冷感」を用いたものがあり、「涼感系」と名づけた。この技術は高温多湿な日本の夏に対応するものとして技術開発が進んでおり、スポーツ/アウトドア用途に加え一般的なアパレル製品での応用も盛んである。主に右上にあたる植物系の吸湿素材と組み合わせられることが多く、大量に汗をかき続けるような状況ではそれほど有効ではないと思われるが、左上領域にあたる速乾素材でもこうしたクーリング効果を付加した製品が存在している。

※上側中央には軽ハイキングやキャンプなど「一般アウトドア」というカテゴリーもあり、主にコットンを用いた製品群を想定している。大量に発汗するような場面にはあまり向いておらず汗冷えのリスクもあることからそれほどシビアではない状況で利用され、機能性よりも日常着の延長的な着心地やデザイン性などを重視した製品群があてはまる。そのため縦横軸の中心付近にプロットしているが、これは特段に機能的なエッジを追求していないカテゴリーであることを意味する(機能性や対応場面の範囲は狭いが、マーケットとしては大きいカテゴリーである)。

保温性を重視したベースレイヤー

続いてマップ下半分の解説に移る。左下の領域は身体がヒートアップし、活動負荷および発汗量が多いものの、外気温が低く保温性も重視したい寒冷地でのトレイルランやファストパッキング、冬期の厳しいハイキングなどが該当する。高所や強風下など、一時的に寒冷環境が想定される場合の装備も含まれる。右下の領域はそれほど活動負荷が高くなく、外気が寒い場合である。テント泊など停滞時の保温に配慮しなければならない場面が該当する。

この下半分を占める保温重視の領域に関しては、上半分に位置する製品の生地を厚くしたりショートスリーブをロングスリーブ化したりしたいわば派生版もあり、左下を速乾性重視の「化繊系保温」としてまとめている。また右下は「ウール系吸湿」がそのまま当てはまる。

「ウール系吸湿」は実際の利用場面として左下領域でも使われていると考えられ、この下側は上側ほど速乾・吸湿という横軸の区別が明確ではない。その理由は、左下のように保温性とクーリング効果という相反する機能を両立させることが現実的に難しいためであると考えられる。この領域で速乾機能を高めてしまうと冷えのリスクが大きく、保温性とのバランスを取らざるをえないため、断熱性や吸湿発熱といった性能をもつウールが混紡されることもめずらしくない。そもそも外気が寒い場合には左上の領域ほど発汗量が多くならないので、吸湿のメカニズムで対応できる場合も多いと思われる。

また寒冷下においては保温をベースレイヤー単体でまかなうのではなく、ミドルレイヤー(インサレーションウェア)を重ねて対応する場合も多い。左下の領域であれば、いわゆるアクティブ・インサレーションと呼ばれるような通気性に優れたインサレーションウェアを重ねることによって、ヒートアップを防ぎつつ保温性を付加することが可能となっている。そのため場合によっては半袖速乾シャツがベースレイヤーでも問題ないこともあり、特段にこの領域に特化して製品開発をする合理性が低いのかもしれない。

また新たな動きとして肌に直接着用できるベースレイヤーとミドルレイヤーの折衷的な製品も登場してきており、図中の「MLハイブリッド(*1)」とはまさにそのような製品群である。帝人のOctaやプリマロフトのNEXTといった素材は高い通気性と保温性に加えて吸水性も併せ持っており、ベースレイヤーの上に重ねるだけではなく直接肌に着用することも可能とされている(*2)。

*1:”Middle Layer”と”Base Layer”のハイブリッドという意味で名づけた筆者の造語
*2:プリマロフトのWEBサイトにも
“In addition to pairing with shell and liner fabrics,next-to-skin and stand-alone applications are also possible

という記載があり、直接着用できることが示されている。Octaについては筆者が直接着用し、体感している。

筆者の体感では、こうした「MLハイブリッド」素材は通気性が高すぎて単体での着用ではやや寒さを感じるほどであるが、上にシェルを重ねて空気の流れを遮れば確かな保温性を感じる。その意味では使い方やシチュエーションによって縦軸の上下「冷却性<-->保温性」を跨ぐような機能をもつ。また「MLハイブリッド」の上にさらにベースレイヤーを重ね着すると、肌から水分を吸い上げベースレイヤーが吸収発散の役割を果たすことから、メッシュ肌着の発展系と捉えることも可能である。このように「MLハイブリッド」はまだ登場したばかりでありマップ上の位置づけは今後変化する可能性はあるものの、注目度の高いカテゴリーであると考えている。

※下半分の領域に特徴的なテクノロジーとして「遠赤系」と呼ばれるものがある。これは身体から出る赤外線を蓄積し身体に再放出する輻射熱の効果によって保温性を補うものであり、繊維にセラミックなどの微粒子を混ぜ込んだりプリントしたりしたものがある。ベースレイヤーではあまり用いられていないが、生地にアルミなどの金属を蒸着した製品も同じ効果を狙ったものである。主に化繊素材と組み合わせられていることが多い。

注目製品の実着レビュー

マップの軸やカテゴリーを定義する上で手がかりとなったような製品や、新規性がある興味深いテクノロジーを用いた製品については、実物を取り寄せて使用感をテストすることとした。

テスト対象として選定した製品は以下リストの13品目である。結果的には新規性の高い素材が多く使われている、マップの左上(速乾×冷却/維持重視)に該当する製品が多くなった。実着レビューをふまえた、各製品のマップにおける位置関係もあわせて示す。

*略称―PET:ポリエステル/PPP:ポリプロピレン/PU:ポリウレタン
*カテゴリーについては素材や各社の製品ページに書かれた特性から筆者が独断により判断したものである
*「MLハイブリッド」は厳密にはベースレイヤーとはいえないが、利用シーンが重なる部分があると考えレビューに含めている

*各製品の位置は機能的や場面上の対応範囲のみを示しており、着心地などの評価は反映されていない

条件をできるだけ統一するため、温度を一定に保つことのできる屋内施設(個室)で、同等の身体的負荷がかかるようにして評価をおこなった。具体的には、テスト品を着用した状態でトレッドミル(ランニングマシン)に乗り十分に発汗するまで運動し、一定の心拍数(=身体的負荷)で運動を継続した上で、保温性や汗の処理性能などについてインプレッションを得た。新品に特有のノリづけや仕上げ剤などの影響を除くため、テスト品はすべて購入後に普通の家庭用洗剤で1回以上洗濯している。また製品のサイズは筆者の身長(175cm)に合わせたため、海外ブランドではSサイズ、国内ブランドではMサイズが多くなっている。

《評価手法の詳細》
A) テスト品を着用
B) 屋内の気温20―22度・湿度40―70%、酸素濃度14ー15%の密閉された個室(*1)において、傾斜15度・時速6〜7km/hに調整したトレッドミルに乗りランニング
C) 心拍数が160/分に達し発汗した時点(*2)から5分間ランニングを継続
D) 5分経過後にトレッドミルのファンを作動させ、身体に風をあてて1分間ランニングを継続
E) ランニングを終了し、発汗・ヒートアップ時(最初5分)、発汗+有風時(続く1分)のインプレッションを記録
F) 身体を拭き、水分補給→Aに戻る

*1:エアコンで温度設定をしていたものの、同一室内での運動時間が長引くにしたがって室温が徐々に上がった。湿度もテスト開始時から終了時にかけて上昇した。また効率良く身体負荷を高めるために、高地を再現した低酸素ルームで実験を行った(酸素濃度は標高0mが20.9%、同3000mが14.5%とされている。今回の環境は標高3000m相当)
*2:筆者の推定最大心拍数のおおよそ85%。LT値と呼ばれ、おおよそ60分程度運動を継続できる心拍数(身体負荷)とされる。経験的にこの心拍数以上で運動すれば持続的に発汗すると判断し基準とした。

以上により、各製品につき無風5分+有風1分で計6分間のテストを行い、評価基準は以下の通りとした。

1. 暖かさ/涼しさ
2. 汗の処理
3. 動きやすさ
4. 総評(全般的な快適さ)

テストは10月の中旬から下旬にかけての複数日に分けて行い、ひとつの製品について日をあらためて2回着用した。できるだけ条件を統一し着用順などのバイアスを除くよう心がけたが、評価者は筆者1名であり、実験時点での筆者の体調もその都度異なるため、評価は大いに独断を含むことをご容赦いただきたい。

テスト風景。トレッドミルは傾斜を15度、速度を6−7km/hに設定。

実験は酸素濃度が標高3000mに相当する低酸素ルームで行なった。血中酸素濃度が下がらないよう呼吸を深く行うため、大量に発汗する。

実験開始時は湿度40%程度であったが、筆者が運動を続けると1時間ほどで70%に上昇した。気温については20度-22度の間に保たれていた。

マップの中で上下左右の端に近いほど、その製品は機能のエッジが立っているということを意味する。また製品のカバー領域は対応できるシーンの広さにつながる。

ではそれぞれの製品について詳細に見ていきたい。

① Teton Bros.: Elv 1000 Tee
【通気型速乾】

概要:オリジナル素材「Dry Action」を用いたシャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:81g(Mサイズ)

まずはTeton Bros.のシャツを一気に3種レビューする。同社は新素材や独自素材の使用に積極的という印象があり、シーズンごとに興味深い製品を登場させている。最初に取り上げるのは独自のグリッド構造をもつ撥水速乾生地「Dry Action」を用いた「ELV1000 Tee」である。「通気型速乾」にカテゴライズした。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
着用した瞬間はヒンヤリした印象。発汗後も汗が肌に滞留し、冷え感が強かった。生地は軽量で換気性も高い。風によって冷えは一層強まった。

2. 汗の処理
生地と肌が汗によって密着し、まるで食品用ラップを濡らして肌に貼ったような感覚。特に胸は腕振りの度に濡れた生地が押しつけられ、貼り付き感は強かった。発汗量が多くなるに従い肌を水分が流れ落ちる感覚もあった。換気性そのものは高く、ムレ感はあまりなかった。

3. 動きやすさ
非常に軽量で、カッティングはランニングに適しており、動きにくさは感じなかった。

4. 総評:うたい文句通り撥水性は抜群ながら、汗が冷たく肌に貼り付く感触
ほぼまったく汗を吸わず水滴のように弾く生地であり、そのために速乾性が期待できるというコンセプトであったが、乾燥までの間は汗が肌に貼り付き、冷たい感触に好みが分かれそうである。発汗量が少ないか、高温かつ湿度が低い場合には速乾性が上回り快適な着心地となることも考えられる。

生地表面。

生地裏面。スポイトの水滴は生地上に長く留まったままであり、ほぼ吸水しないと推察される(汗が生地に吸い込まれず、肌を流れ落ちる)。

② Teton Bros.: Vapor Tee
【拡散型速乾】


概要:オリジナル素材「Quick Dry」を用いたシャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:113g(Mサイズ)

続いては「Vapor Tee」を取り上げる。かつてはポーラテックのパワードライという素材を用いていたようだが、 現行品は「Quick Dry」という綿のようなしなやかな触感が特徴のポリエステル100%素材に置き換えられている。ポリエステルながら優れた吸湿速乾性をウリにしており、「拡散型速乾」にカテゴライズした。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
着用した瞬間は特段の暖かさも寒さも感じないニュートラルな印象。発汗後も印象は変わらず、汗の冷え感があまりない。風が当たると生地ごと冷やされて、やはり寒さを感じた。

2. 汗の処理
生地は汗をよく吸い取り、大量に発汗し胸のあたりが濡れくると確かに肌に貼り付いているのだが、不思議にサラリとした触感であった。ムレ感もあまり感じなかった。

3. 動きやすさ
カッティングはランニングに適しており、生地も柔らかく、動きやすかった。

4. 総評:高い吸水拡散性で快適な着用感
柔らかな生地で汗をよく吸い取り、全般的に快適な着心地であった。大量に発汗する、比較的温暖なシチュエーションに向いており、「拡散型速乾」のカテゴリーを代表するような印象であった。

生地表面。

生地裏面。すぐにスポイトの水が吸い込まれ濡れ拡がるなど、吸水性および拡散性に優れる。

③ Teton Bros.: Axio Lite Tee
【ウール系吸湿】


概要:オリジナルウール混紡素材「Axio」を用いたシャツ
素材:53%ウール、47%ポリエステル(うち30%が速乾性に優れたCoolMax)
実測重量:122g(Mサイズ)

Teton Bros.の最後はウール混紡素材の「Axio Lite Tee」である。Axioは日本毛織(ニッケ)が開発した交撚糸素材で、クールマックス混のポリエステル糸をウールが覆っており、優れた吸水性と抗ピリング性(毛玉ができにくい性能)が特長とされる。しかしスポイトから水を滴下すると吸水までに一瞬の間があり、仕上げ材または洗濯成分の影響か、繊維の毛羽による物理的な撥水力が働いたものと考えられる。「ウール系吸湿」にカテゴライズした。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
生地厚もあり、第一印象は暖かかった。発汗後もその印象は変わらない。風が当たると生地ごと冷やされ、やはり寒さを感じた。

2. 汗の処理
生地は汗をよく吸い取り、肌への貼り付きは確かに生じてはいるもの、不快な感覚ではなかった。全般に若干のムレ感があった。

3. 動きやすさ
同社の他のシャツ同様、カッティングはランニングに適しており動きやすかった。

4. 総評:ウール由来の適度な保温性と吸湿性
柔らかな生地で動きやすく、生地裏面へのスポイト滴下では水を弾いたものの、体感では吸水性も良好であった。同社「Vapor Tee」の着心地に似ているが、よりこちらの方が暖かい。ただし大量発汗した場合には保水して生地が若干重くなるのではという懸念もあり、あまりヒートアップしすぎず、保温も重視したい場面に向いていると感じた。その意味ではまさに「ウール系吸湿」に期待するスペックを備えていると言える。

生地表面。

生地裏面。スポイトの水は生地表面で一瞬弾かれたものの、少しの時間を経て吸収された。まずまずの吸水性。

④ Westcomb: Oden Crew
【通気型速乾】


概要:「プリマロフトドライ」を用いたシャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:79g(Sサイズ)

続いてはカナダのWestcomb社によるシャツを2種類続けてレビューする。同社は日本ではあまり知られていないかもしれないが、Teton Bros.同様に新素材の採用に意欲的な印象がある。最初に取り上げるのはプリマロフト社のポリエステル100%素材「プリマロフトドライ」を用いた「Oden Crew」である。繊細なグリッド構造であり、生地は非常に薄く滑らか。実測79gは今回のテスト品中最軽量である。「通気型速乾」にカテゴライズした。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
薄く軽量な生地であるが、意外な暖かさがあった。ただしその暖かさは、たとえて言うならウインドシェルを素肌に着たような、通気性が遮られた場合に感じるようなものであった。

2. 汗の処理
吸水性そのものは良好だが、生地が薄いためかすぐに飽和状態に達するようで、若干の貼り付き感を感じた。特に胸部に貼り付く感じがあったが、比較的発汗が少ない背中部分はサラリとした感触が続いた。

3. 動きやすさ
胸の部分がタイトな印象で、やや腕振りしにくかった。

4. 総評:グリッド構造にも関わらずムレのこもる印象
生地そのものはグリッド構造であり通気性が高く思えたが、実際には通気性をあまり感じずむしろムレ感さえ覚えるという、不思議な着用感であった。利用するシチュエーションがあまり思い浮かばなかった。

生地表面。

生地裏面。スポイトの水は生地表面で弾かれ、徐々に吸収された。吸水速度はそれほど早くなく生地も薄いため、汗が滞留する懸念も。

⑤ Westcomb: Grid Crew
【通気型速乾/拡散型速乾】


概要:「ポーラテックデルタ」を用いたシャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:124g(Sサイズ)

続くWestcomb社の2着目は大胆なグリッド構造が特徴的な「Grid Crew」である。使用されている「ポーラテックデルタ」は通気性と吸水拡散性に優れ、「通気型速乾」と「拡散型速乾」のハイブリッド的存在と考えられる。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
大胆なグリッド構造がデッドエアをはらんでいるためか、着用した瞬間に暖かさを感じた。高通気の素材でありながら濡れた生地が肌に密着する感覚がなく、風による冷え感も少なかった。

2. 汗の処理
吸水性が高く生地の肌離れも良好であった。生地が嵩高で飽和するまでの吸水量にも余裕があると感じられた。換気性が高いためムレ感もほとんど感じなかった。

3. 動きやすさ
カッティングはゆとりがあり、生地の伸縮性も高い印象で、動きやすかった。

4. 総評:突出した肌離れの良さと吸水拡散性
グリッド構造の暖かさと肌離れの良さは突出しており、生地そのものの吸水性も高い。高通気の素材と思われるが、風を受けた場合でもあまり寒さを感じなかったのは意外であった。通気性も良好で、夏のトレイルランニングなど、大量に発汗するシチュエーションで実際に使ってみたいと思わされた。

生地表面。大胆なグリッド構造が特徴。

生地裏面。スポイトの水は一瞬で吸収され拡がった。汗の処理能力は突出しており、肌離れも優秀。

⑥ Arc'teryx: Motus Comp Shirt
【拡散型速乾】


概要:独自素材「Phasic」を用いたトレイルランニング用シャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:86g(Sサイズ)

続いてはArc’teryxの「Motus Comp Shirt」である。水を弾く疎水の糸と水を吸い込む親水の糸を組み合わせた独自生地のPhasicを用いたシャツで、生地そのものは帝人の技術という情報がある。肌面から水を生地表面にすばやく吸い上げ拡散するという、「拡散型速乾」カテゴリーを代表する製品と言える。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
着用した瞬間は暖かさも寒さも感じないニュートラルな印象で、発汗後も印象は大きく変わらない。風が当たると生地ごと冷やされて寒さを感じた。生地は軽量で換気性は非常に高かった。

2. 汗の処理
汗をよく吸い取るものの、生地が薄いためかすぐに飽和状態に達し、肌への貼り付き感はそれなりに感じた。しかし冷え感が少ないためか、それほど不快な印象ではなかった。背中は快適だったが、胸のあたりには若干のムレ感を感じた。

3. 動きやすさ
カッティングはランニングに適しており、生地も薄く動きやすかった。

4. 総評:汗冷え感が少なく、換気性・速乾性も良好
全般的に、同じく拡散型にカテゴライズしたTeton Bros.の「Vaper Tee」に近い着用感であった。生地が厚い分だけ吸水性は「Vapor Tee」が優れているように感じられたが、換気性や速乾性は「Motus Comp Shirt」が優れているように感じた。いずれにせよ大量に発汗するシチュエーションに向いていると感じた。

生地表面。

生地裏面。しばらく水滴が滞留するが、ほどなく吸水された。体感での吸汗性は良好。

⑦ Static: All Elevation Shirt Short Sleeve
【ウール系吸湿】


概要:肌面を凸凹構造としたウール混紡素材のシャツ
素材:60%ウール、40%ポリプロピレン
実測重量:119g(Mサイズ)

Staticの「All Elevation Shirt Short Sleeve」は吸湿性に優れたウールと速乾性の高いポリプロピレンを混紡した素材を用い、さらに肌面を凸凹構造として通気性や肌離れのよさ、保温性をねらった製品である。「ウール系吸湿」にカテゴライズした。

評価結果

1. 暖かさ/涼しさ
ウールの混紡率が高い割には生地が軽く、涼しさを感じた。比較的カッティングに余裕があり、換気性が高いことが最大の理由と思われるが、肌面の凹凸構造が空気のヌケを向上させていることも寄与しているかもしれない。風があたると直接肌に空気が抜けるような感覚があり、汗による冷え感があった。

2. 汗の処理
吸水性・吸湿性はそれほど高くないと感じたが、肌面の冷たさや肌から汗が流れ落ちたりする感覚もなく、全般に肌離れは良好であった。ムレ感はほとんど感じなかった。

3. 動きやすさ
前述の通りカッティングには余裕があり、動きやすかった。

4. 総評:涼しく軽い着心地ながら、単体着用での保温性は低い
ウール混紡素材とは思えないほどの換気性と涼しさは快適であったが、反面吸湿性や保温性といったウールに期待する機能性があまり感じられなかったのも事実である。風を遮断すればそれなりに暖かいと期待され、涼しくなる時期にシェルの下に着て保温性を試してみたいと感じた。

生地表面。

生地裏面。水滴は玉の状態でしばらく滞留した。圧力がかからないと積極的に吸水しない印象。

⑧ Norrona: Bitihorn Wool T-Shirt
【通気型速乾/ウール系吸湿】


概要:上腕部と背面を大胆なメッシュ構造としたウール混紡素材のシャツ
素材: 60%ウール、40%ポリエステル(*)
実測重量:91g(Sサイズ)

*ボディ部分/メッシュ部分の混紡率など組成は不明である

Norronaの「Bitihorn Wool T-Shirt」は大胆なメッシュ使いが特徴で、高い通気性によりヒートアップを防ぎ、高負荷のアクティビティにも対応できる“涼しいウールシャツ”というポジションを狙った製品と考えられる。「通気型速乾」および「ウール系吸湿」のハイブリッドとした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
着用してすぐに、こんな涼しいウールシャツがあるのかと驚かされる。ボディの生地も凸凹構造となっており軽くヌケが良いが、熱気のこもりやすい上腕付け根部分がメッシュ構造となっている効果が大きいと思われる。腕を振る度に背中から風が抜けて行く感覚があり、換気性は非常に高い。風があたるとメッシュ部分には直接的な冷え感があったが、ボディはあまり冷えを感じなかった。

2.汗の処理
ボディ部分はよく汗を吸うが、生地が薄くすぐに飽和する感覚があった。そのため胸の辺りに若干の貼り付き感があったが、メッシュ部分が常時換気するためにムレ感はなく、全般的な肌離れも良好であった。

3.動きやすさ
軽量でカッティングも余裕があり、動きやすい。上腕付け根部分がメッシュ構造によってある種「肉抜き」されているため、腕振りが特にスムーズであった。

4.総評:ウールメインながら高負荷の活動にも対応
保温性に優れるウールをメインに使用しつつ負荷の高いアクティビティにも十分に対応でき、夏のトレイルランニングでも積極的に使ってみたいと思わされた。一方で致し方ないことながら保温性そのものは決して高いとはいえず、ウールに暖かさを求める用途には向いていないと感じた。

生地表面(身頃=ボディ部)。

生地裏面(ボディ部)。スポイトの水は生地表面で弾かれ、少しの時間を経て吸収された。圧力がかからないと積極的に吸水しない印象。

メッシュ部分の吸水性は良好で、水滴を垂らすとすばやく吸いこまれ見えなくなった。

⑨ The North Face: L/S Flash Dry 3D Crew
【化繊系保温】


概要:肌面の点接触構造が特徴的なロングスリーブシャツ
素材:100%ポリエステル
実測重量:124g(Mサイズ)

少数であるがロングスリーブのベースレイヤーもテストした。最初に取り上げるのはThe North Faceの「FlashDry 3D Crew」である。肌面は点接触構造で、保温性と肌離れの良さをねらっていると思われる。生地そのものは薄手でロングスリーブながら軽量であり、春秋の着用を想定していると思われる。「化繊系保温」にカテゴリライズした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
生地は薄く、保温性はあまり感じなかった。ボディのカッティングに余裕があり、腕振りにともなって外気が入ってくることからむしろ涼しさを感じたほどである。風があたると若干の冷え感があった。

2.汗の処理
汗を積極的に吸っている感覚は薄かったものの、肌面の点接触構造が機能しているのか汗による貼り付き感をほとんど感じなかった。換気性の高さからムレ感はほとんどなかった。

3. 動きやすさ
ボディのカッティングには余裕があった。しかし肘の部分は裏面の生地がひっかかる印象があり、運動を続けるにしたがって上腕部に熱気がたまっていくような印象があった。

4.総評:肌離れも汗の処理能力も優秀な春秋用LS
生地そのものは肌離れのよさが快適で、汗処理の性能も高い印象であった。「シェルを着るほどでもないが半袖では寒い」というような状況における高負荷のアクティビティ、たとえば春秋のランニングなどに向いていると感じた。

生地表面。

生地裏面。吸水性は高く、水はすぐに吸い込まれ見えなくなった。

⑩ The North Face: L/S Warm Crew
【化繊系保温+遠赤系】


概要:独自の光電子テクノロジーを用いた冬用ロングスリーブ
素材:81%ポリエステル、再生繊維(マキシフレッシュ)14%、ポリウレタン5%
実測重量:152g(Mサイズ)

続いては同じくThe North Faceの「Warm Crew」である。平織りの生地は厚みがあり、カッティングもタイトで肌に密着する。さらにセラミックを配合し輻射熱による保温効果をねらった「光電子」テクノロジーを採用するなど、寒冷時の着用を意図した製品である。「化繊系保温」(+遠赤系)にカテゴリライズした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
肌に密着するカッティングで保温性は高いが、生地厚以上にこのタイトなフィッティングの影響が大きいと感じた。風があたった場合には汗で濡れた生地が肌に貼り付き、冷えを感じた。

2.汗の処理
吸水性は高いと思われるが、生地が肌に密着しているためか汗による濡れ感が直接的に伝わり、ムレ感も強かった。平織りの生地とタイトなフィッティングが相まって、肌離れもよいとは言えなかった。

3.動きやすさ
上腕の動きが制約され、動きにくかった。

4.総評:タイトな着用感で停滞時のアンダーウェア的用途か
サイズを間違えたのかと思うほどタイトな着心地で、行動する際のベースレイヤーというよりは冬の小屋やテントなど休息・停滞時における防寒アンダーウェアという印象であった。しかしこのシルエットではリラックスしにくいのではないだろうかとも感じた。

生地表面。

生地裏面。水は玉の状態でしばらく留まり続け、ゆっくりと吸い込まれていった。吸水性は普通。

⑪ Houdini: Activist Crew
【ウール系/パルプ系吸湿】


概要:ウールとリヨセルの混紡素材を用いたロングスリーブ
素材:60%ウール、40%リヨセル
実測重量:172g(Sサイズ)

Houdiniの「Activist Crew」はウールとリヨセルという天然由来原料同士を組み合わせた生地による冬用ベースレイヤーである。素材からは高い吸湿性と柔らかな着心地が期待される。リヨセルが植物由来のため、「ウール系吸湿」「パルプ系吸湿」にカテゴリライズした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
生地はなめらかで厚みがあり、袖を通してすぐに暖かさを感じた。その一方でカッティングに余裕があり、腕振りにともなって適度に換気するため、ヒートアップもしにくかった。風を受けても冷え感は少なかった。

2.汗の処理
汗を積極的に吸い上げる感じはあまりなかったが、適度に吸水はしているようであり、肌から汗が流れ落ちたりする感覚はなかった。肌側の生地は凹凸のない平織り構造であったが、重みと適度なハリがあるために汗で貼り付くようなこともなかった。換気性が高いことからムレ感もあまり感じなかった。

3.動きやすさ
カッティングに余裕があり動きやすかったが、生地そのものが重い印象。ぐっしょりと濡れた場合にはかなりの重量感を感じるかもしれないと感じた。

4.総評:保温性と吸湿性、換気性が高次元でバランス
生地が厚いため吸湿・吸水できるキャパシティは相当高いと思われ、よほどの大量発汗でなければ快適な着心地が続くものと期待された。適度な換気性もあり、春秋冬とひろく活用できそうな印象をもった。

生地表面。

生地裏面。水は玉の状態でしばらく留まり続け、なかなか吸い込まれなかった。圧力がかからないと積極的に吸水しない印象だが、吸水量そのものは多い。

⑫ Teton Bros.: MOB Wool L/S
【ウール系吸湿/メッシュ肌着】


概要:ポリプロピレンとウールのメッシュ生地を組み合わせたロングスリーブ
素材:89%ウール、11%ポリプロピレン
実測重量:226g(Lサイズ)

Teton Bros.の「MOB WOOL L/S」は、水を弾く疎水性のポリプロピレンを肌面に、表面に水分を吸い取るウールを組み合わせることで、メッシュ肌着とベースレイヤーの役割を1枚で果たすことを意図した製品である。ウールは嵩高なメッシュ構造で、高い保温性と通気性を両立しているという。「ウール系吸湿」と「メッシュ肌着」のハイブリッドとした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
生地厚と豊富なデッドエアのため保温性は高い。風を受けると肌がダイレクトに冷やされる感覚があった。

2.汗の処理
汗を積極的に吸い上げる感じはあまりなく、貼り付きはしないものの、肌に汗が滞留している感覚があった。ムレ感はなかった。

3.動きやすさ
メッシュ構造でありカッティングも余裕があるため本来は動きやすいはずだが、着用した瞬間に感じるずしりとした重さがネックであった。実測226gは本テスト中で最も重く、ほとんどミドルレイヤーの重量感である。袖や裾などの末端が振動や重力で下へ下がっていくような感覚もあり、実際以上に重さを感じたのかもしれない。若干のごわつき感も気になった。

4.総評:ユニークなコンセプトだが、重い着用感
意欲的なコンセプトの製品と思われたが、重さと大きめのカッティングからベースレイヤーとして着用するイメージを持てなかった。冬期に薄手のベースレイヤーと組み合わせてミドルレイヤー的に使うような用途も想定したが、その場合にはポリプロピレンの疎水性を活かすことができない。

生地表面。

生地裏面。疎水性のポリプロピレンが影響したのか、水は玉の状態で留まり続けた。圧力がかからないと積極的に吸水しない印象。

⑬ Static: Adrift Crew
【MLハイブリッド】


概要:帝人のOctaを使用したアクティブ・インサレーション
素材:100%ポリエステル
実測重量:106g(Mサイズ)

最後に、「MLハイブリッド」カテゴリーから帝人の「Octa」を用いたSTATICの「ADRIFT CREW」を取り上げる。帝人のポリエステル繊維「Octa」は中空構造の糸に8本の突起を配したタコ足型断面の構造が特徴で、軽量かつ吸水性、保温性、通気性といった要素のバランスに優れることから、アウトドア業界でも注目が高まっている素材といえる(*)。

*同じ素材を用いたウェアはアクシーズクインからも登場しており、OMMも「Octa」に似た特性をもつ「プリマロフトNEXT」を使った製品を開発している。

Octaは肌面が柔らかく起毛しており、吸水性も高いことから肌に直接着ることができる。実際に筆者はこの「Adrift Crew」をベースレイヤーとして山を歩いたこともあり、その吸水性と速乾性に驚かされた。その経験もあって今回、他のテスト品と同じ条件で評価してみることとした。

評価結果

1.暖かさ/涼しさ
着用した瞬間に、裏の起毛によりジワリとした暖かさを感じる。一方で非常に軽く通気性も高いため、少し動くだけで外気が入ってくる。ミッドレイヤーとしての想定であるためか裾丈が若干短く、下からも動く度に風が入ってくる。風を受けた場合の冷え感は直接的で、汗で濡れた部分にはかなりの寒さを感じた。

2.汗の処理
生地の吸水性は高く、嵩高の生地と濡れても潰れない起毛構造が汗を肌から遠ざけ、汗冷え感はほとんど感じなかった。メッシュ状の生地とも相まってムレ感も皆無であった。

3.動きやすさ
非常に軽量でカッティングにも余裕があり、動きやすかった。

4.総評:単体着用には涼しすぎるが、ミドルレイヤーとしては利便性大
Adrift Crewは通気性が高すぎて、これ1枚だけを直接肌に着用して過ごすには涼しすぎると感じた。実際には静止状態でも全くの無風ということはなく、実験室のエアコンの風程度でも身体が冷やされる感覚があったためである。濡れても肌離れがよく表面に水を押し出すというOctaの特性はメッシュ肌着の進化版を生み出す可能性があり、本製品の上にウールなどのベースレイヤーを重ねるという用途も考えられるが、シルエットはワイドで丈も短く、そうした用途は想定していないようである。やはりベースレイヤーの上にミドル的に着用するのがオーソドックスな利用法かと思われ、(まさに製品コンセプトの通り)あくまでアクティブ・インサレーションの1つという印象に落ちついた。その場合には、停滞時やシェルを重ねた場合に適度な保温性を維持しつつ、通気性・吸水性に優れるという本製品のメリットも実感しやすいであろう。軽量で動きやすく、ストレスなく着用できることも好印象である。

直接肌に着てもミドルとして重ねてもOKというOctaの汎用性は一見魅力的だが、単体での着用はなかなか場面を選ぶ。しかしベースレイヤーとの組み合わせなど、用途によってはおもしろい製品につながっていく可能性を秘めていると感じた。

生地表面。

生地裏面。吸水性・吸水速度共に高く、スポイトで滴下した水が瞬時に吸いこまれた。

まとめ:マッピングと実着レビューから得た所見

実着用レビューをふまえ、あらためてマップと各製品の位置関係を示す。

レビューの総括をふまえたマップの解釈

製品をそのコンセプトや素材特徴からマップ上のカテゴリーにあてはめ、プロットすることはそれほど難しくない。ただし、個々の製品の実際の着心地や完成度はカテゴリーのみによって決まるわけではない。各カテゴリーにおいて優秀なアイテムもあれば自分なら手に取らないというアイテムまで、実際に試してみるとグラデーションがあった。同じ通気型であっても、発汗時にも快適なものもあれば冷え感が気になったものもあり、同じメーカーの製品でもキャラクターやコンセプトによって着心地がまったく異なっていた。筆者が好むウール素材のウェアであっても、保温性や吸湿性といったウールの長所がうまく発揮されていないように感じた製品もあった。

またどんなに速乾性や吸水性が高くとも、生地が薄くハリがなければ、少しの汗で飽和し肌に貼り付くことが避けられないことも実感できた。Westcombの「Grid Crew」やHoudiniの「Activist Crew」が貼り付き感のあまりない快適な着心地であったのは、生地そのものの嵩高さやハリ、軽さ・厚さといった、素材に由来する水分コントロール力以外の物理的な特性が寄与していたものと思われる。加えて風をはらむシルエットやサイジングなどデザインの影響も大きく、素材は確かに重要であるものの、それに加えて利用シーンを明確に想定したモノ全体としてのつくりこみが製品の優劣にとって重要であると感じた次第である。

レビューというミクロの作業を踏まえ、あらためてマクロ的視点であるマップとカテゴリーについて触れておきたい。まずはマップのヨコ軸左上にある速乾系の中で、通気型と拡散型の違いについてあらためて認識することとなった。

筆者がマップ化作業に取り組んだのは2020年春のことで、徐々に気温が高くなる時期であった。並行していくつかのウェアを着用し、走ったり山に行ったりしてテストするうちに、通気型のウェアは大量に発汗した際にあまり快適ではないという印象を得ていた。その理由は、夏が近づくにしたがって気温も湿度も高まり、大量の発汗によって生地の乾燥が追いつかず、通気型のセールスポイントである速乾性がなかなか実感できなかったためである。むしろ汗の冷たさと、ピタピタと生地が肌に貼り付く感じが気になる印象であった。

一方で拡散型は、濡れても肌への貼り付き感が少なく、汗の冷たさを比較的感じにくいという印象があったが、今回のような比較的涼しい条件で着用してみるとまた違った実感を持った。拡散型は乾燥が遅く、寒い環境では生地全体が冷やされて寒さを感じる危険性もあるのではないかと感じた。

しかし拡散型も通気型も、マップ上に実際の製品を位置づけてみると、多くの製品が左上の比較的狭い範囲のみを占めている。人間は高負荷の活動をそれほど長く継続できるわけではなく、速乾という機能は大量発汗が続くごく短い時間/限られた場面にしかフィットしないのではないかと考える。

一方で吸湿系を代表するウール製品は(③⑦⑧⑪⑫)、マップの様々な場所に存在し、比較的広い範囲を占めている。アウトドアの多くのシチュエーションや、山という変わりやすい環境をふまえ、ウールがさまざまな場面に適応できる安全性の高い素材ということがあらためて示されたと考えている。

実際の製品レベルでは、濡れた際にはそれなりに冷え感もあるなど、ウール製品ながら保温性があまり感じられないものも存在した。筆者はこの濡れたウールの感触があまり気にならず、多くの人が同じ印象を持っているためマーケットにウール製品が溢れているのだと思うが、「ウールは濡れるといつまでも乾かず冷たい」という声を聞いたりすることもあり、人によっては好みがわかれるのかもしれない。ただしウール生地が水を積極的に吸い上げる親水加工でない場合には汗が肌を流れ落ちることになり、これは誰にとっても不快な感触だろうと感じる。トレイルランニングなどヒートアップしやすいエンディランススポーツでウールを敬遠するユーザーがいるのは第一にその保温性の高さ(それゆえの暑さ)が理由と思われるが、こうした吸水性についての悪印象が影響している可能性もある。

吸湿系については現段階でウールが主流でありパルプ系の影は薄い。パルプ系でテクニカルな機能を持った製品というのはなかなか少ないのが現状であるが、涼感性能に優れたトリアセテートや強靱かつ速乾性をそなえた苧麻などユニークな素材もあり、今後製品への応用が進むことに期待したい。

マップのタテ軸について、特に下側の保温カテゴリーに該当する製品は生地も厚く乾きにくいため、全般に速乾型よりも吸湿系の方に分があるように思われた。ただしMLハイブリッドのようなカテゴリーは速乾性も高く、技術の進展にともないこのマップのような捉え方では整理できないカテゴリーも増えてくるものと思われる。

筆者がシチュエーションごとに選ぶとしたら

私筆者であれば今回レビューした製品をどのように使い分けをするか、あらためて考えてみた(*)。

*私の山行スタイルは、1〜2日間と比較的短い間に長い距離を歩くファストパッキング、または半日〜1日程度のトレイルランが中心である。宿泊は小屋がメインで、泊まらずオーバーナイトで動くこともある。その意味では比較的高負荷の活動に寄った評価となっている。

まずは温暖な時期で湿度が高く、行動時間が比較的短い(12時間未満)場合。このような場合には大量の汗を適切に処理してパフォーマンスを落とさないことが重要と考え、おそらく拡散型速乾を選ぶと思われる。

温暖でも湿度が低い場合には速乾性に期待して、デザインなどの好みを優先して通気型を選ぶことがあるかもしれない。また自転車や高所であれば風が期待できるため、通気型の出番が多いかもしれない。しかしいずれもかなり限定的な状況と考えられる。そもそも筆者のように夏場高温多湿な関東地方に住んでいると、温暖で湿度が低い状況自体が想定しにくい。

もう少し涼しい時期であれば、外気による自然な冷却効果が期待できるため、パフォーマンスよりも着心地や安全性を重視してウール系吸湿を選ぶと思われる。この場合、拡散型は生地全体が冷やされるリスクがあるため選択しないと思われる。寒暖差が非常に大きい場合にはMLハイブリッドを組み合わせるかもしれない。

そもそもの行動時間が長い場合(12時間以上)には、たとえ夏であっても休憩や夜間行動など冷えのリスクがあり、ウール系吸湿(それもウール混紡率ができるだけ高いもの)を選択する。それだけの長い時間にわたって高負荷の活動を続けることは(私には)難しく、ウールの吸湿作用によって十分に快適なパフォーマンスを発揮できると考える。長期行動に伴い生じる不快な臭いが生じにくいことも重要である。着替えたり装備を変えたりする機会があれば、夏なら昼間は拡散型を選び、夜はウールに着替えるだろう。

今回のように様々な化学繊維の速乾系ウェアを試した後でも、私の場合はごく限られた場面を除きウールを選ぶケースがやはり多い。それはアウトドアという環境が変わりやすい状況において、よりリスクの少ない選択を心がけたいためである。

おわりに

マップ上で広い場面を占める製品は多くの状況に対応するものとして、マップの端に位置する製品は独自の尖った機能性が支持され、それぞれマーケットで受け入れられているものである。素材の特性に加え、それを活かすモノとしてのつくりこみとコンセプトがうまくかみ合った製品は、カテゴリーを生み出し代表する製品となっていく。そうした製品が登場し支持を集める度に、このマップも都度修正されていくであろう。

吸水速乾素材や高通気かつ保温性の高いアクティブ・インサレーション素材、ウールと化学繊維の混紡技術など、素材開発の進展にはめざましいものがある。今後も画期的かつユニークな製品の登場によって、アウトドア・アクティビティがより快適に、安全になっていくことを期待したい。

渡部 隆宏
渡部 隆宏
山と道ラボ研究員。メインリサーチャーとして素材やアウトドア市場など各種のリサーチを担当。デザイン会社などを経て、マーケティング会社の設立に参画。現在も大手企業を中心としてデータ解析などを手がける。総合旅行業務取扱管理者の資格をもち、情報サイトの運営やガイド記事の執筆など、旅に関する仕事も手がける。 山は0泊2日くらいで長く歩くのが好き。たまにロードレースやトレイルランニングレースにも参加している。
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