0123456789 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ abcdefghijklmnopqrstuvwxyz あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
0123456789 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ abcdefghijklmnopqrstuvwxyz あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
HLC Report

HLC東北『ボルケーノトレイル2泊3日ULハイキング』参加者レポート

山と道HLC最難関のプログラムに立ち向かった、仲間たちの挑戦記
文:栗波康治 高清水 学 QT あっこ
写真:参加者の皆さん
2025.09.02
HLC Report

HLC東北『ボルケーノトレイル2泊3日ULハイキング』参加者レポート

山と道HLC最難関のプログラムに立ち向かった、仲間たちの挑戦記
文:栗波康治 高清水 学 QT あっこ
写真:参加者の皆さん
2025.09.02

現在、日本各地に台湾を加えた8つの拠点で活動を行なっている山と道HLCでは、ULハイキングが繋ぐコミュニティ作りを目指して日々、様々なプログラムを行なっています。このHLC Reportでは、そんな活動の内容をシェアしていきます。

今回は、今年度から2代目アンバサダーに栗波康治が就任したHLC東北の『ボルケーノトレイル2泊3日ULハイキング』の模様を、栗波と参加者の皆さんのリレー形式でレポートしてもらいました。

アンバサダーと参加者がチームとなってチャレンジングなハイキングに挑むPLACTICEカテゴリーの『ボルケーノトレイル2泊3日ULハイキング』。装備も経験も様々な参加者の皆さんがそこで何を体験し、何を感じたのか。山と道HLCに興味があってもいまいち踏み出せない人にこそ読んでもらいたい、とてもビビッドなレポートが完成しました。

はじめに

栗波康治(HLC東北アンバサダー)

6月19日から21日の間で、HLC東北では年間の集大成となるPRACTICE*プログラム『ボルケーノトレイル2泊3日ULハイキング』に挑戦してきました。食料・水・燃料を除いたバックパックのベースウェイト4kg以下の装備でULハイキングの経験値を高め、その可能性を広げることを目的とした、まさに「実践」の場となりました。

*PRACTICEとは
過去に山と道HLCへの参加経験のある自立したハイカーを対象とし、アンバサダーと参加者がひとつのチームとなってクリエイティブなULハイキングを実践します。年間の集大成的な位置付けのプログラムで、それぞれのULハイカーとしての経験を活かしてルートや装備などを探求し、ULハイキングの可能性にチャレンジします。

私たちが挑んだのは、昨年に続き「磐梯・吾妻・安達太良ボルケーノトレイル」。その中でも特に困難なルートとして知られる吾妻連峰縦走ルートを中心とした移動距離約30km、累積標高1,800mの難ルート(家形山から西へ向かう人は1%いるかどうかの厳しい区間だそうです)。

出発前にはギアリストを提出してもらって装備のチェックをし、オンラインミーティングでコミュニケーションを深め、チーム全体でルート確認を行う計画を立てていました。しかし、実際のフィールドでは想像以上の困難が待ち受けていました。

HLC東北メンバーの皆さんが今回のPLACTICEプログラムをどのように感じ、どのように乗り越えたのか、皆さんにリレー形式で綴ってもらいましたので、ぜひお付き合いください!

行程

【1日目】8:00浄土平ビジターセンター(集合)、8:50酸ヶ平避難小屋、9:40一切経山、10:50家形山、11:45ニセ烏帽子山、12:20烏帽子山、13:30昭元山、14:40東大巓、15:10明月荘(行動約7時間10分)
【2日目】5:30明月荘、6:30東大巓、8:45谷地平避難小屋、10:40姥ヶ原、11:20東吾妻山、12:50景場平、14:10浄土平キャンプ場(行動約8時間10分)
【3日目】9:00浄土平キャンプ場、9:20吾妻小富士登山口、9:50吾妻小富士、10:20浄土平ビジターセンター到着・解散(行動約1時間20分)

プログラムの詳細

DAY1 浄土平〜一切経山〜家形山〜烏帽子山〜明月荘

書いた人:高清水 学

高清水 学:岩手県の三陸で暮らし、海と山と酒を愛する45歳。みちのく潮風トレイルの沿線で生活している。元々は釣りが趣味で山とは無縁だった。ここ数年で山と出会い新たな仲間が増え、生活がさらに豊かに。これからの人生に乾杯! 特技:酔い潰れ

僕にとって2回目のPRACTICE。前回の『みちのく潮風トレイル2泊3日ULハイキングプラクティス』では食料などの補給ができたが、今回は補給ができない山の中での2泊3日。不安から食料などを持ち過ぎたのと、ULの恩恵で生まれたバックパックの隙間にビールを詰め込んだ結果、パックウェイトは7.4kgになった。ベースウェイトは3.2kgに抑えたのに(笑)。

HLCメンバーと浄土平に集合し、自己紹介をして、名物メンバー「いくぞーさん」の「イグぞー!!」の掛け声で歩き出し、まずは一切経山へ向かう。

浄土平にHLCメンバーが集合。

名物メンバー、「いくぞー」さんの掛け声でハイキングスタート。

山の中腹は、至る所から火山ガスが吹き出し、ボルケーノ(=火山)トレイルというだけあって火山感が凄い! そして一切経山の山頂から望む「魔女の瞳」こと、エメラルドグリーンに輝くカルデラ湖の五色沼が神秘的で素晴らしくテンションが上がった! 

魔女の瞳をバックにみんなで集合写真を撮影。HLCの活動に興味を持った自分にとって、憧れだったULハイカーの集い。その集合写真に自分も加わることがとても嬉しく、なんだか不思議な感じがした。

「魔女の瞳」を背景に記念撮影。

ここから家形山、ニセ烏帽子山、烏帽子山、昭元山、東大巓を縦走し、今日の宿泊予定である明月荘へ向かう。薮がすごいとの前情報を得ていたが、家形山を過ぎた辺りからは想像以上だった。足元は雪解け水でドロドロで、早々に靴は浸水した。そして僕の背丈よりも高く濃い笹薮が立ちはだかる上に、残雪によりルートは不明瞭で、迷うたびにみんなでルートを探した。しかも蒸し暑く、立ち止まるとヤブ蚊やハエ、アブが寄ってくる。短パンに半袖で先頭を進む僕は何ヶ所も刺された。

藪漕ぎしながら前に進む。

こんな道が延々と続くのかと思うと心が折れそうだった。HLC東北の仲間たちが一緒だったから、前に進むことができたんだと思う。それでも初日の半分以上は藪漕ぎで、予定のコースタイムは押していた。宿泊する明月荘が見えた時は全員で歓喜した!

明月荘に無事到着!

小屋に着いて荷物を整理して水場に向かった。残雪の下を流れる冷えた水は格別だった。バックパックに忍ばせたビールを残雪に転がしてキンキンに冷やし、みんなで乾杯! 綺麗な夕日を見ながら、ほろ酔いで今日のハイライトやULについて語らい、楽しい夜はふけていった。

おいしく冷えますように。

楽しい夜の語らいが続いた。

DAY2 明月荘〜東大巓〜姥ヶ原〜東吾妻山〜浄土平キャンプ場

書いた人:QT

QT:フツーの中年サラリーマン。東京都在住。高校3年生の時に部員不足の登山部の手助けとして入部し初登山。社会人になりアルプスのソロ縦走にハマり、バックパックは腰で背負うものと刷り込まれる。その後、仕事で岩手県に出向した際、knottyで仲間とULハイクで山に登る山と道HLCの存在を知る。今ではULギアを駆使し、ベースウエイト3kg以下で軽やかなテント泊縦走を楽しんでいる。特技:絡み酒。

PLACTICEはHLC東北の仲間とのチャレンジングな山行だ。事前に参加メンバーと協力してルートを計画する。そして現場での状況に応じて判断をし、無事に下山することが目標。今回のルートでの私の個人的チャレンジは、藪漕ぎと渡渉対策、初夏の日射対策を目的とするギア選定と実際の効果検証だった。

1日目の藪漕ぎでは山と道の5-Pocket Pantsのおかげで擦り傷なし。2日目は渡渉が多数との情報だったので、水抜けの良いペンタペタラのシューズを履いてきたが果たして…。

明け方の山小屋の温度は14℃。就寝着はLight Alpha TightsAlpha Socks 、モンベルのプラズマ1000ダウンジャケット、スリーピングシステムはスタティックのアドリフトライナー+SOLエスケープライトヴィヴィで、寝起きは少し汗ばむ程度だった(個人差大幅に有り)。

出発は5時半。昨日の藪漕ぎ苦戦を鑑みて、皆で相談して予定より出発を30分早めた。4時頃から準備しだし、朝ご飯も食べて準備万端。今日も元気に「イグぞー!」

みんな気合い十分!

誰もいない早朝の木道歩きは素晴らしい。カッコウ、ウグイスの「ホーホケキョ」の鳴き声。目の前に広がる雲海。朝露でキラキラ光るチングルマなどの高山植物が咲く湿地帯を歩く。程なく本日唯一の水場に到着。水芭蕉が咲く冷えた沢水で喉を潤す。東大巓を越え、途中は冬季の大雪による多数の倒木を越えながら、まだ残る雪渓を通る。渡渉も数回あったが、ここ数日は雨が降っていなかった影響もあり、水量は深くてスネ程度。雪解けの冷えた水が気持ちいい。ペンタペタラのシューズも水抜けが良く快適。

熊避けの笛を鳴らしながら渡渉。

小川を越えて森の中を歩いている時に、熊の足跡を発見! アンバサダー栗波さんの「熊は沢筋を歩く上に、足音が水の音でかき消されてバッタリ遭遇しやすい」というお話にびびって、皆で笛を鳴らしながら賑やかに谷地平に到着。谷地平はなんてことない数ある湿原のひとつだと思っていたが、とんでもない。ワタスゲの大・大群生地! 体験したことのない360°一面に咲き乱れるワタスゲのお花畑にみんな感動!

谷地平に咲き乱れるワタスゲにテンションが上がる一同。

しかしそんな良いことばかりではなく、実は反省点が。浄水器が日頃のメンテナンス不足で機能しなかった。幸い仲間に借りることができたが、ひとりだった場合は水不足の状況に陥っていた。山に入る前にはギアの機能チェックが欠かせないことを改めて学ぶ。

2日目のルートは1日目と異なり、登山客とすれ違うことが多くなり、お話を聞くと谷地平が目的地の方が多かった。皆さんよく分かってらっしゃる。さて、谷地平避難小屋で休憩。予定時刻から遅れており、これからのルートを相談。計画通りに東吾妻山を越えて、頑張って浄土平のテン場まで行くとみんなで決めた。

谷地平避難小屋でひと休み。

しかし、そこからが風の通らない樹林帯で我慢の登り下り。

ふたつ目の反省点として、朝ご飯を食べてエネルギーチャージしたつもりが、喉が乾きまくってしまい、いつもより水を多く摂取。行動食はナッツ類にしていたが、体が脂質代謝に適応していなかったようでバテてしまった。だが、途中でエナジーバーを食べて復活(笑)。

東吾妻山はそよ風があり少し体力回復。車道近くになるとクルマ、バイクの音が聞こえてきて、登山客も多く見掛けるようになり、ようやく本日の目的地、浄土平キャンプ場に到着。さー飲むぞー!

東吾妻山に登頂!

2日目の夜もワイワイ楽しく語らった。

最後に、日射対策で100% Light Merino Half Zip Hoodyを3日間通して着たが臭いなし。日焼け疲れもなしで効果あり。ただ、最高気温が28℃で晴れ、無風だと暑い。DF Mesh Merino SleevelessLight 5-Pocket Shortsを予備で持っていくのもアリだけど重くなるしなあ。楽しいトライアンドエラーは続く。

DAY3 浄土平キャンプ場〜吾妻小富士〜浄土平ビジターセンター

書いた人:あっこ

あっこ:夜遊び好きな20代を経て、地元福島に帰り30代で登山に目覚める。ここ数年でテント泊を始めるも、いつも誰よりも重い荷物に息も絶え絶え。山でお世話になっている方の紹介で、山と道HLCに辿り着く。いちばんにUL化すべきは自分の体では…と、ギアリストと格闘するたびに思う酒好き40代。福島の日本酒サイコー!

3日目。最終日も元気に「イグぞー!」の掛け声とともに、いざ、浄土平キャンプ場から吾妻小富士へ。

といっても、登山口から10分ほど階段を登れば壮大な火口が現れ、絶景に囲まれながら1時間程度でお鉢巡りができる、ご褒美のようなこのコース。きっと皆で2日間を振り返りながら楽しくハイキングできるんだろうな、と想像していた。

しかし、そこはPLACTICE⁉︎ 火口に辿り着き歩き始めたものの、驚くほどの爆風に次ぐ爆風。「わー!」「きゃー!」と叫びながら風に立ち向かい、本気で飛ばされかける人にヒヤッとし、風が弱まったタイミングで岩から岩の間を駆け抜けながらも絶景を楽しむ私たち。場所によってはかなり高度感が出るこの吾妻小富士。滑落の可能性を考えると、実は3日間でいちばん危険な箇所なのでは、と思いつつお鉢巡り終了。2泊3日が無事に終わった安堵感と、あーあ―終わってしまった―という寂しさと。

爆風に飛ばされないように、踏ん張りながら進む。

2年前にベースウェイト10.6kgで参加したULハイキング入門講座。皆の想像以上の軽量化に驚き、私には無理だ…とUL化を早々に諦め、できる範囲でいいから軽量化を図ろうとギアリストの作成を続けるも、うまくいかなかった2年間。「これじゃだめだ!」と意を決して参加した今年4月の『みちのく潮風トレイル1泊2日ミートアップハイキング』。レンタルをフル活用し、私でもこんなに軽くできるのか、そして軽いとこんなにも景色が違って見えて会話も楽しめるのかと感動し、そのままの勢いでキャンセル待ちを申し込んだ今回のプログラム。参加が決定してから、レポートに追われる学生のように、ぎりぎりまでギアリスト作成と格闘した。

火口は息をのむような絶景。

そんな私はこの3日間で何を学び、何を感じたか。

いつもと比較して6~7kg程度軽いパックウェイトと、半分の重さの靴。これは序盤から体への負担の軽さを感じ、感動した。皆の軽くて涼しそうな格好が羨ましく、1日目に汗冷え防止のアンダーウェアを脱ぎ捨て、2日目は自前のサポートタイツ&ハーフパンツをレンタルしたDW 5-Pocket Pantsに履き替え、アームカバーも脱ぎ捨てたところ、涼しくて快適になりパフォーマンスが上がるのを感じた。過酷なルートからシャリバテを恐れ、しっかり持参した行動食の数々はきっちり余り、こんなことなら代わりにビールを持参し、皆と乾杯すればよかったと全力で後悔した。

それよりも何よりも、3日間を共にした皆様から学ぶことが多々あった。特に印象的だった言葉が「学び」。タープ初挑戦で朝の寒さが想像以上だったことを「学びだな」と話していた方、ウェアのレイアリングが気候に合わず「これも学びだね」と言っていた方、行動食の代わりにビールを持って行けばよかったと嘆く私に、アンバサダーの栗波さんからの「学びだね!」の言葉。

私だったら「失敗したー‼︎」としばらくグチグチ言いそうなところを、皆さん、何て前向きに軽やかに試行錯誤しているんだろう。そして試行錯誤している限り失敗なんてないんだな、そう思うことができました。UL化を超えて、もはや人生論。

3日間、お疲れ様でした!

勢いよく申し込んだものの軽量化もルートも不安てんこ盛りでしたが、参加して本当に良かった。充実した楽しい3日間でした。一緒に参加した皆様、そしてアンバサダーの栗波さん、本当にありがとうございました‼︎

さあ、1年後はどんな装備でどんな自分になっているんだろう。UL化は始まったばかり。

終わりに

栗波康治(HLC東北アンバサダー)

今回のPLACTICEのルートは、まさに困難の連続でした。背丈ほどの高さの藪漕ぎは体力的にも精神的にもタフさが求められる場面でしたし、多数の渡渉では、お互いに声を掛け合って安全を確保しながら慎重に進みました。不安定な斜面での雪渓通過は滑落しないよう集中力を要しましたし、藪や雪渓でコースをロストする場面も何度かありましたが、冷静にチームで協力してルートを探し出しました。休憩中も容赦なく襲い来る大量のブヨはこれもまた自然の中での経験のひとつだと感じましたし、高温多湿の気候は、普段以上に体力を奪われることを改めて思い知らされました。

しかし、これらの困難に直面するたびに、チーム全体で励ましあい、それぞれが持つULハイカーとしての経験を活かしながら、知恵を出し合って乗り越えていきました。チーム一丸となってゴールを目指すという意識が、私たちを支える大きな原動力となったんです。

今回のハイキングを通じて、私たちは多くのことを学び、そして大きな達成感を味わうことができました。チームで困難を乗り越え、目標を達成した喜びはもちろんのこと、極限に近い状況下でのUL装備での行動は、ひとり一人のULハイキング経験値を高めてくれました。特にビギナーの参加者の方にとっては、ULハイキングの奥深さやそれに挑戦することの意義を感じられる、貴重な経験になったと確信しています。

これからもHLC東北アンバサダーとしてULハイキングの魅力を発信し、より多くのハイカーと共に成長していきたいと考えています。

連載「HLC Report」