山と道

【修理部通信】

山と道修理部通信#4 穴あき修理の実例紹介

山と道では日々、多くの製品の修理を承っていますが、なかでもいちばんご相談いただくのが穴あき修理です。

ともあれ、ひと口に「穴あき補修」とはいえ、メリノウールや防水メンブレン、バックパック用生地など、補修方法は素材ごとに異なります。そこで今回は修理部が普段どんな修理を行っているのか、これまでの実例を元にご紹介していきます。

もし山と道製品に穴があいてしまっても、諦めないでぜひ修理部にお寄せください。修理部の北島が全力で塞ぎます!

文/写真:北島市郎

壊れても直しながら使う

山と道修理部の北島です。私はなぜか古いものが好きです。特に工業用ミシンなどの鉄の塊には目がありません。ものづくりの道に進んだのも、アトリエで使われている鉄の道具たちに心惹かれたのがはじまりだったように思います。

上京したばかりで安月給のときに暮らしていた風呂なし物件のときでさえ、大きな工業用バキュームアイロン台と工業用ミシンのために一部屋捧げておりました(実際に使っていたかはさておき…)。

なぜ、そんなにも古い工業用の道具に惹かれるのだろう。決して万能でも便利でもないけれど、何かの目的のためだけに思い切りシンプルに作られた道具たちは眺めているだけでもとても気持ちが良いものです。そしてそのシンプルな道具と人間の身体能力を生かした仕事を生業としていた時代の人々の暮らし方にどうしても憧れを抱いてしまいます。ただの偏った懐古主義なだけかもしれませんが。

そしてそれらに共通することは、一様に重いということ。

これには理由がありまして、例えば工業用ミシンは家庭用ミシンと違い鉄の塊なので異様に重いのですが、その重さがミシンが回転するときの振動を押さえて、縫製時の安定に役立ちます。そしてそれはもう頑丈なのでちょっとやそっとでは壊れません。

また、テーラーが使うアイロンもダンベル並みに重いです。これはスーツ地に使われているウールを身体の曲線に合わせて変形させる際にアイロンの熱と圧力が非常に重要になってくるからです。

そんなウルトラヘビー好きの私がウルトラライトを提唱する山と道と出逢い、衝撃を受けたのは言うまでもありません。

私が好きで今まで使用してきた重い道具たち。それはひとつの目的を最大限に追及した、「道具のための道具」でした。しかし、ウルトラライトハイキングで選択される道具たちはその道具の性能はもとより、それを使用する人がいかに自由になれるかという、まったく異なった視点のものだと感じました。

ウルトラライトハイキングを通して、重い道具を眺めて楽しんでいるフェーズから、それを使う人間の方にフォーカスしてゆく。道具についてあらためて思いを巡らせながら、生活においても重さの呪縛から少しずつ解き放たれているところです(鉄の塊は好きですが)。

軽量に作られた道具は耐久性を考慮して重厚に作られた道具より強度は劣りますが、そのぶん、使う人間の工夫や考えで道具を生かしたり殺したりできる。一生モノの道具も素晴らしいですが、壊れても直しながら使い続けるという行為も同じくらい価値があるのではないか。ここ最近、山と道を愛して頂いているお客様からの修理品と接するうちに、そう思うようになりました。

新たにSUPPORTページも公開されましたので、今回は修理でもいちばんお問い合わせの多い穴あき修理方法についてあらためてご案内させていただきます。リペアをすることでより愛着が湧いて自分だけの道具になっていく。そのためのサポートをできればと思っています。

素材別修理方法

穴あき修理は素材の特性に合わせて修理方法が変わります。例えばメリノウールでしたらウールのフェルト化する性質を利用して生地を馴染ませたり、化学繊維でしたら熱によって熔ける性質を利用して生地端をヒートカットしてリペアシートを製作したりしています。

通常でしたら生地のデメリットにあたる部分(=ウールのフェルト化する特性)が修理においてはメリットとなる場合があります。穴あきの修理方法を考えることは生地の性質と向き合う良いきっかけとなります。

ニットのメリノウール製品の穴あき補修

Merino HoodyやLight Merino Crew Neck T-shirtのようなニットのメリノウール製品の穴あきに対してはウール原毛を使用したフェルティングという方法で補修させていただきます(詳しい方法に関しては『山と道修理部通信#1』でもご紹介しています)。

ニット組織の性質上、虫喰いや摩擦などで繊維が弱くなった場所から穴があくことがあり、はじめは小さな穴でも放っておくと知らぬ間に大きく広がっていたりします。いつ穴があいたかも気づかないことも多いので、たまに光に透かして見ると穴あき部分を発見しやすいです。

ウール原毛を該当箇所にあて、フェルト化させることで穴を塞ぎます。同色の原毛を使用しますので5mmくらいの小さな穴でしたら比較的目立たずに補修可能です。

織物生地製品の穴あき補修法

次にMerino ShirtやMerino 5-Pocket Pants、Bamboo Shirtなど、織物(布帛)生地製品の穴あき補修法をご紹介します。

天然繊維が使用されている生地は化学繊維に比べて糸が太いためほつれやすく、また表面の凹凸も大きいためリペアシートによる接着ができません。そのため穴あき補修では共生地を当て布にしてミシンを使って補修します。

穴より大きめにカットした表地を裏側にあてて、穴を塞ぐようにミシンで何度も往復してステッチをかけるたたき縫いを行います。とても頑丈に仕上がりますが表から補修跡が目立つことと、補修部分が固くなってしまうデメリットがあります。

化学繊維の穴あき補修

続いて5-Pocket PantsやAlpha Anorak、UL Rain Hoodyのような化学繊維を使用した製品の穴あき補修法です。

山と道で使用している化学繊維生地はとても薄くて軽量なものが多く、岩や枝などの鋭利なものが擦れると傷が出来てそこから生地が裂けることがあります。

耐久性のみを考えると前述のたたき縫いによる補修が好ましいのですが、生地が薄いため補修跡がかなり目立ち、部分的に固くなってしまいます。

そこでこのような薄い生地に対しては両面接着シートを利用したリペアテープで補修を行います。穴あき部分にアイロン接着することで比較的目立たず補修することが出来ます。大きな穴の場合にはさらに周囲をミシンステッチで補強します。

たたき縫いよりは強度は落ちますが、目立ちにくく、また剥がれてきてもリペアテープとアイロンがあれば簡単に補修することができます。

バックパック生地の穴あき補修

バックパックのボディやボトムに使用されるX-Pacなどの生地は耐久性が高いものが多いですが、継続した摩擦や鋭利なものの接触により穴があく場合があります。生地が固いのと、コーティングされている場合も多いため、一度穴があいてしまうと完全に修理をすることが難しい素材でもあります。

損傷や劣化が大きい場合は基本的にはパーツごとの交換のほうが耐久性も見た目も良いのですが、思い入れがあるバックパックの場合リペアシートを使用して現状のパーツを生かしながら補修することも可能です。

パンツなどでも使用している両面接着シートを用いてアイロン接着で補修します。

シリコンコーティングされたバックパック生地の穴あき補修

バックパックのボディなどに使用しているシリコンコーティングされたナイロン生地は両面接着シートを使用することができないため、シリコン専用の接着剤で当て布を接着補修します。

水の侵入を考慮するとできればミシンステッチは入れたくないのですが、他の修理方法に比べ耐久性が弱いために接着した後にミシンで補強する場合が多いです。

製品別事例

山と道修理部ではお客様から修理をお預かりするときにその穴があいた原因についてもお伺いしております。

穴ができるときには必ず理由があり、それを知ることで製品の弱点や使われ方に対する理解を深めることができると考えるからです。お預かりした貴重なご意見は開発にも生かされております。

また修理担当としてはひとつの穴ができるエピソードと届いた製品を見比べながら、ユーザーの皆様の人となりを感じながら修理できることを喜びにしています。

BACKPACKS

ONE
状態:ボトム部の穴あき(小)
原因:サイドポケットに物を入れた状態で岩に接触
修理方法:リペアシートとステッチ補修
修理料金:¥500

ONE
状態:ポケット部穴あき(中)
原因:ロングトレイルで使用時の劣化
修理方法:リペアシートで補修
修理価格:¥500

THREE
状態:ボトム角部の穴あき(小)
原因:繰り返し岩に接触
修理方法:縫製箇所をほどいて当て布補修
修理価格:¥500

MINI2
状態:ボディ部の穴あき(小)
原因:パッキングした鋭利な物が接触
修理方法:接着剤を使用して当て布とステッチ補修
修理価格:¥500

MINI2
状態:エクステンション部の穴あき(中)
原因:パッキングした鋭利な物が接触
修理方法:接着剤を使用して当て布とステッチ補修
修理価格:¥500

RAIN WEAR

UL Rain Pants PU Shinsui
状態:ヒザ部穴あき(小)
原因:木の枝が接触
修理方法:リペアシートで補修
修理価格:¥500

UL Rain Pants PU Sosui
状態:裾部の穴あき(中)
原因:着用時の摩耗
修理方法:リペアシートで補修x2
料金:¥1,000

ACTIVE INSURATION

Alpha Anorak
状態:袖口部の穴あき(小)
原因:焚火の火の粉
修理方法:リペアシートで補修
料金:¥500

Light Alpha Vest/Jacket
状態:袖口部の穴あき(中)
原因:焚火
修理方法:リペアシートで補修
料金:¥2000

Alpha Anorak
状態:袖口部の穴あき(大)
原因:焚火
修理方法:損傷部分をカットして生地の切替補修
料金:¥2,000

Light 5-Pocket Shorts
状態:ヒップ部の穴あき(小)
原因:岩場を下る際に接触
修理方法:リペアシートで補修
料金:¥500

BOTTOMS

Light 5-Pocket Pants
状態:ヒザ部の穴あき(中)
原因:転倒
修理方法:リペアシートとステッチ補修
料金:¥1,000

Light 5-Pocket Pants
状態:スソ部の穴あき(大)
原因:引っ掛け
修理方法:縫製部をほどいてリペアシート補修
料金:¥1,500

5-Pocket Pants
状態:スソ部の穴あき(小)
原因:焚火
修理方法:リペアシートで補修
料金:¥500

Winter Hike Pants
状態:スソ部の穴あき(中)
原因:アイゼンによる接触
修理方法:縫い目をほどきリペアシートとステッチ補修
料金:¥1,500

5-Pocket Merino Pants
状態:穴あき(中)
原因:日常生活での接触
修理方法:たたき縫い補修
料金:¥1000

TRAIL SHIRT

UL Shirt
状態:前身頃部の穴あき(小)
原因:焚火
修理方法:リペアシートで補修
料金:¥500

Merino Shirt
状態:穴あき(中)
原因:ひっかけ
修理方法:たたき修理
料金:¥1,000

MERINO WOOL

Merino Henry Neck T-Shirt
状態:肩部の穴あき(小)
状態:肩部の穴あき(小)
原因:摩耗による糸切れ
修理方法:フェルティング補修
料金:¥500

Light Merino Crew Neck T-Shirt
状態:脇下部の穴あき(中)
原因:摩耗による糸切れ
修理方法:フェルティング補修
料金:¥1,000

Merino Hoody
状態:ポケット角の穴あき(中)
原因:負荷がかかり糸切れ
修理方法:フェルティング補修
料金:¥500

Merino Hoody
状態:ヒジ部分の穴あき(大)
原因:鋭利なものとの接触
修理方法:フェルティングと当て布補修
料金:¥1,500

HATS

Merino Kinit Cap
状態:頭頂部の穴あき
原因:縫製部のほつれ
修理方法:糸でかがる
料金:¥500

Merino Cap
状態:穴あき(小)
原因:虫食いと摩耗による糸切れ
修理方法:フェルティング補修

山と道製品修理料金表

*金額は目安です。
*税込み価格です。
*別途送料がかかります。

フェルティング補修(メリノウールニット製品全般)

  • 1cm以内の小さい穴 1個¥500~
  • 1cm以上の大きい穴 1個¥1,000~

ミシンたたき補修(天然繊維製品全般)

  • 1cm以内の小さい穴 1個¥1000~
  • 1cm以上の大きい穴 1個¥1,500~

リペアシート補修(バックパック、化学繊維製品全般)

  • 1cm以内の小さい穴 1個¥500~
  • 1cm以上の大きい穴 1個¥1,000~