山と道

HLC Ambassador’s Signature #3
上野裕樹
『スクランブリング』

日本各地のローカルで活動されているアンバサダーのみなさんと共に、「ハイク」と「ライフ」と「コミュニティ」が循環的に繋がる環境づくりを目指した活動を行っている山と道HLC。この『HLC Ambassador’s Signature』は、個性豊かなアンバサダーのみなさんの「シグネチャー」とも呼べるアクティビティやフィールドを語ってもらうリレー連載です。

3人目のアンバサダーは、HLC東北のアンバサダー上野裕樹さん。八幡平や岩手山、北上山地など豊富なフィールドに囲まれた岩手県紫波町でアウトドアセレクトショップ『Knotty』を営みつつ、ご自身もハイキングやマウンテンランニングやクライミング、スノーボードなど、四季を通じて様々なアクティビティを楽しまれています。

今回は「そんなふうにジャンルを横断的に遊ぶのが好き」という上野さんに、まさにジャンル横断的なアクティビティ「スクランブリング」について語ってもらいました。行き慣れた山も、こんなふうに少し視点を変えてみれば、まったく新たな魅力を発見できるかもしれませんよ。

ジャンルを超えていく遊び

東北エリアには四季を通してあらゆるマウンテン・アクティビティを楽しめるフィールドが多くあり、様々なアクティビティを横断的に楽しんでいる方も沢山います。

春夏秋はハイキング、マウンテンランニング、沢登り、クライミング、バイクパッキングなど。冬になるとバックカントリースキー、スノーボード、雪板、アイスクライミングや雪山ハイク、スノーシューイングなど。僕自身もいろいろやっていますが、特にジャンルを超えていく遊び方が大好きです。なので、あらゆる要素を一度で楽しめるようなフィールドに出会った時はワクワクが止まらなく、ついつい通いつめてしまいます。

以前、HLC東北のプログラムで訪れた北上山地のスクランブリングのフィールドも、まさにそのひとつでした。

スクランブリングとは

スクランブリングとは、やさしめの岩場をよじ登りながら頂上を目指したり、縦走するアクティビティです。ハイキングやマウンテンランニング技術にクライミング技術も必要になってくるので、自然の岩や自分の技量と対話しながら登っていきます。

フィールド選びもクライミングのようなロープやハーネスを使用する垂直な岩場ではなく、傾斜の緩いスラブの岩や手や足がしっかり決まる岩場が適しています。

「やってみたいな〜」という方は、まず人工壁でよいのでクライミングを楽しむことをオススメします。人工壁から外岩へクライミングを楽しむことができれば技術はもちろんリスクも見えてきますので、ゆっくり経験しながらトライしてみてください。

装備について

僕自身、はじめは沢登りの先輩方に連れて行ってもらいながら、大きく重たいバックパックを背負った「ザ・沢登り的」なスタイルで楽しんでいました。そうして個人でも行けるようになってからは、自分の技量に沿いながら少しずつ持っていくギアを削っていきました。

最初は沢登り用の靴とトレイルランニングシューズの2足持ちだったところをトレイルランニングシューズのみで歩ける確信を経てから1足になり、ロープやハーネスの軽量化からバックパックが小さくなり、浄水器を持つようになってからは携帯する水分の重さも減らせるようになりと、段階を経て軽さと自由度が増していきました。

もちろん、アイテムを削ると同じルートでも緊張感や不安は膨らみますが、限られたギアのみで達成した時の幸福感はたまりません。軽量化した道具と自分の技量から登るルートを選別してトライするスクランブリングの魅力にハマっていきはじめた時でした。

僕の現状の装備リストを簡単ではありますがご紹介します。初めて同ルート歩行時に比べるとだいぶ荷物も減りました。

山の総合力が試される

そもそも僕自身が軽量化をしたいと思った理由は、もちろん歩いていて楽だから、景色も体力が残っていれば景色もまた違って見えるから、早く行動できるから等々ありましたが、いちばんは「そこにボルダリングが出来そうな岩がゴロゴロあるから」でした。

もちろん沢を詰めるのでボルダーマットのような大きな物を持っていくことは不可能ですし、クライミングシューズやチョークバッグなど一般的にクライミングで必要な道具を持って行けばバックパックの重量が増してしまいます。

一方で岩場でのクライミング経験があれば起こりうるリスクを理解していますし、もちろん自分の登れる岩感覚も付いてきます。さらにハイキングなどで理解している山の中でのトラブルにも関係してきます。山での総合力をフルに回転させ、トライした時の緊張感はもうたまらないです。

もちろん同ルートでもクライミング技術を上げてから一度目はできなかった岩を再トライしに行くこともよくありました。その日のコンディションもあるので気持ちがのらない時もありましたが、綺麗にまとめれば「心技体」なのでしょうか。すべて揃った時のトライは格別です。

スクランブリングは各ジャンルの目線からみれば 「たいしてすごい沢ルートではない」「難しそうな岩じゃない」と見えますが、ギアを削り、山深いところでのトライとなるとまったく別の世界が見えてきます。

情報量が多い現在では同じ山を繰り返し登る人は減っているように感じますが、ぜひ違う目線で自分の近郊の里山を見てみてください。遊び方を工夫することで、山はきっと新しい表情を魅せてくれるはずです。