山と道

【特別編 全天候型行動着の誕生】

【山と道ラボ特別編】
防水ウインドシェル=全天候型行動着の誕生
#2 実際に着用しての比較試験

通気する防水透湿素材ナノファイバーメンブレンと「全天候型行動着」UL All Weatherシリーズの登場を踏まえた山と道ラボ特別編。#2となる今回では、親水性無孔、疎水性多孔、ナノファイバーという3つの代表的防水透湿テクノロジーをそれぞれ採用したパーテックスシールド/シールドプロ/シールドエアを実際に着用して行った試験の模様をお届けします。

室温18度、酸素濃度を標高2500mと同程度に設定した低酸素ルームでトレッドミルで行った試験の結果は、それぞれの素材の特徴を如実に表したものになりました。

「超軽量かつ超高通気」という新たな次元に到達したレインウェアの現在に、引き続きどうぞ刮目ください!

#1 通気する防水透湿素材ナノファイバーメンブレン

文/写真:渡部隆宏(山と道ラボ)

試験で明らかになった
シールドエアのヌケの良さ

試験概要

ナノファイバーメンブレンのパーテックス・シールドエアを採用したUL All-Weatherシリーズは、軽さを犠牲にせず従来のレインウェアにはない高い通気性を備えたもので、負荷の高いアクティビティにおいても常時着用できることをコンセプトとしている。

その性能を確かめるべく、親水性無孔素材のパーテックス・シールド、そして疎水性多孔素材のパーテックス・シールドプロとの間で実際に着用してテストを行い、衣類内の温度と湿度変化を測定、3者を比較した。

試験製品

  • 山と道 UL Rain Hoody PU Shinsui(パーテックス・シールド使用)
  • 山と道 UL Rain Hoody PU Sosui(パーテックス・シールドプロ使用)
  • 山と道 UL All-Weather Hoody(パーテックス・シールドエア使用)

環境

室温18度に設定された密閉空間の個室(標高2500m相当≒酸素濃度15%程度に調節された低酸素ルーム)、扇風機による風あり

試験方法

素肌に触れないよう温度湿度センサー(2つ)を胸部分に設置、メリノウール100%のベースレイヤーを着用した上に実験素材を着用し、傾斜15度・時速6km/hに設定したトレッドミルの上で30分間ランニング

その他詳細

  • ウェアは全て同サイズ(SIze M)。
  • 運動を繰り返すことによる疲労が心拍数や発汗に影響することを考慮し、1日に1素材の測定にとどめた(試験開始時間も統一した)。
  • ベースレイヤーはすべて同メーカー同サイズのもの(半袖、メリノウール100%)で、パンツ・シューズ・ソックスもすべて同じものを使用。フードは被らず、調節コード類はすべて最大限にゆるめた状態とした。
  • 測定誤差を緩和すべく、2つのセンサーの30秒ごと平均値を記録した。
  • 扇風機の角度・風量はすべて同じとした。室温は18度となるよう設定したが、気温により多少の誤差が生じた。
  • 上掲のデータ測定とは別に、日をあらためて3つのウェアを一度に着用し主観的な印象を比較した(順番が印象を左右しないように、2日にわけて着用順を変え試着を行った)。

  • エアコンで室温18度に設定された低酸素ルーム

  • 傾斜をつけたトレッドミルでウェアを着用し30分間運動(写真はレインウェア着用前の試走)

  • いずれのテスト後もベースレイヤーはビショビショになった

着用インプレッション

試験環境は密閉された個室で、エアコンの設定温度は18度と、入室の瞬間はファンの風とあいまって肌寒さすら感じた。ウェアを着用しトレッドミルで走り出すと、おおよそ10-12分程度で心拍数が160/分に達した。この頃には当初の寒さは全く感じなかった。蒸れ感を感じるのはおおよそ衣類内の湿度が80%を超えたあたりで、85%を超えると額から汗がしたたった。

圧倒的なドライ感のシールドエア
(UL All-Weather Hoody)

UL All-Weather Hoodyに使われているナノファイバーテクノロジーを用いたパーテックス・シールドエアは、高い透湿性だけではなく実際に通気することが特長である。

運動開始から5分くらいまでの間は、胸部にこもる熱気や蒸れ感が驚くほど少なかった。ベースレイヤーは半袖であったため、直接シェルの裏地が当たる腕の周りには若干の熱気を感じたものの、レインウェアとは思えない圧倒的なドライ感があった。12分くらい経過した頃から、体温の上昇にともなって若干の暑さを感じたが、これは運動量自体が多いためであり、仮にUL All-Weather Hoodyではなく薄いウインドシェルを着用していたとしても(またはベースレイヤー単体であっても)、同様な感覚であったと思われる。

密閉空間では空調の効きもよく風のあたる環境であり、当初は少し寒さを感じたものの運動の継続と共にそうした感覚はなくなった。また発汗がおさえられたためか、運動終了後も汗による冷え感は少なかった。

早くから蒸れを感じたシールド
(UL Rain Hoody PU Shinsui)

続いては超軽量な親水性無孔メンブレン、パーテックス・シールドを用いたUL Rain Hoody PU Shinsuiをテストした。

運動開始から3分くらいで、早くも胸のあたりを中心にほのかな蒸れ感が発生しはじめた。しかし生地が薄く常時ファンの風で冷やされているため、当初は熱気をそれほど感じない。むしろまず衣類内の湿度が上昇した後に、おって熱気がこもってくるような印象であった。12分くらい経過した時点で胸のあたりにも熱気がただよいはじめ、終盤には内側が汗でびしょびしょになった。とくにベースレイヤーを着用していない腕の周りで発汗と貼り付きが顕著だった。

こうした親水系無孔の極薄生地は、衣類内に蒸れを感じる割に外気によって冷えやすいが、一方で軽量性においては抜きん出た性能を持ち、そうしたメリット/デメリットを理解した上で「雨の日のお守り」として使用するならば非常に有用な製品であるといえる。

蒸れよりも保温力の高さを感じたシールドプロ
(UL Rain Hoody PU Sosui)

最後にテストしたのは疎水性多孔メンブレンのパーテックス・シールドプロを用いたUL Rain Hoody PU Sosuiである。PU Shinsuiほどではないがやはり超軽量で、ヌケのよい素材という印象があった。

運動開始から5分くらいまでの間はそれほど蒸れ感もなく、むしろ保温力の高さを感じた。その後は発汗にともなって熱気がこもる感じが増してきた。シールドとは順番が異なり、まずは衣類内の温度が上がり、その後に発汗が促されて蒸れ感が高まってくるようなるような印象を持った。こちらも結局のところ運動後半には汗だくとなった。

従来ヌケのよい素材と思っていたシールドプロであるが、シールドエアと比較するとドライ感には大きな差があった。しかしながら保温性もレインウェアの重要な機能であり、適度な透湿性も備えたバランスのよい製品という印象を新たにした。

データによる比較

衣類内湿度

蒸れ感の指標となる衣類内の湿度変化を見てみる。30分運動後の衣類内湿度はシールドが94%、シールドプロが92%、シールドエアが84%に達した。シールドエアはシールドに比べ、最終的に10%湿度が低く保たれた。

蒸れを感じ始める湿度80%を超えたのは、シールドが10分20秒後、シールドプロが10分40秒後、対してシールドエアは15分20秒後であった。

シールドおよびシールドプロが時間経過とともに湿度を上昇させていったのに対し、シールドエアは83-84%で上限となり、最後までそのままの湿度をキープした。おそらく生地の通気性と透湿性が外気の温度やファンの風による冷却、蒸発の効果とバランスし、衣類内の湿度上昇を抑えることができたのではないかと考えられる。一方でシールドとシールドプロは透湿が追いつかず、衣類内湿度が上昇し続けた。

運動前後の室内・衣類内湿度上昇

30分間の運動前後で、室内と衣類内の湿度上昇幅を比較した。筆者が運動するにしたがって汗や呼気からなる水蒸気が個室内を満たし、部屋の湿度が上がっていった。ウェア内外の湿度差がなくなっていくにつれウェア内部からの透湿も妨げられ、シールドとシールドプロは衣類内の湿度が顕著に上昇したが、シールドエアは室内も衣類内も湿度の上昇がゆるやかであった。これは身体からの水分放出(発汗および呼気)が他の素材よりも抑えられたことを意味している。

衣類内温度

エアコンの設定は18度に保たれていたが、実験開始時点の衣類内温度にはわずかに差異があった。時間経過とともに3者とも温度は上昇し、シールドエアが29.1度、シールドが29.4度、最終的にはシールドプロが29.6度に達した。シールドエアとシールドプロの差異は0.5度であった。シールドエアはほぼ一貫して低い温度を保ち、より薄い素材のシールドよりも低温であった。

シールドエアが最も低い水準ではあったが、先に見た衣類内湿度の差異に比べて衣類内温度は3者とも比較的近い値となっている。これは、発汗(≒衣類内湿度)が運動の継続による体温上昇によってのみもたらされたのではなく、生地の通気性・透湿度の差異が明確に影響したためと考えられる。

心拍数

いずれのウェアでも、心拍数の水準や推移はほぼ同等であった。これは、複数日に渡った実験による衣類内湿度や温度の相違が、筆者の体調に左右されたものではないことを示している。

結果をふまえた考察

今回実験した心拍数160/分に達する運動は急登の連続や速めのランニング、激しいラッセルなどに匹敵する高負荷のアクティビティと考えられ、たとえベースレイヤー1枚の状態でも汗ばむことは間違いない。ましてレインウェアを着た状態では、いくら吸湿性の高いメリノウールのベースレイヤーを着ていても内側がビショビショに濡れてしまうことはやむを得ないと感じていた。実際に雨の中でのトレイルランニングでは、レインウェアの役割を濡れを防ぐことよりも体温低下への対策と割り切ることもあった。着用すれば汗で、着用しなければ雨で、いずれにせよビショビショになってしまうが、雨の濡れは風とあいまって体温を奪うため、たとえ不快であっても着用し続けた方が安全なためである。

シールドエアのヌケ感と軽さはこれまでのレインウェアを一線を画するもので、生地そのものが高い通気性によってドライ感を保つことに加え、軽さのために動きに追従して外気が衣類内に入り込み、換気性も高かった。筆者の主観では、おそらく心拍140/分程度にするなど運動の負荷を少し下げれば、衣類内湿度が70%台に保たれ、発汗を押さえドライ感を保ったままずっと運動を継続できそうな感覚があった。

また、発汗が抑えられるということは体力と水分の消費が少なくなることを意味し、補給の限られる山行でもより長くスタミナを保ったまま余裕をもって行動できるということになる。これはシールドエアが単なる快適さだけではなく、行動範囲の拡大や安全性の向上といったメリットをももたらすと解釈できるのではないだろうか*。

*発汗が抑えられることでシールドエアの心拍数も低い水準に保たれると期待したが、そのような結果とはならなかった。実験結果の一貫性という意味では良い結果であったが、発汗だけでは運動負荷を説明できないようだ。

一方で寒い環境下ではシールドエアの通気性がマイナスに働く可能性もある。ただし筆者はネオシェルのジャケットで冬期に強風下の八ヶ岳を問題なく歩いたこともあり、通気する素材=防風性に劣るというわけではないことを実感している。そうした環境ではレイヤリングの工夫が必要となるが、それはシールドエアに限らずどのようなレインウェアでも考慮すべきことではないかと考える。

次回、最終回となる#3ではハイカーズデポ土屋智哉さん、Run boys! Run girls!の桑原慶さんをお招きし、「行動着として積極的に着用できるレインウェア」がハイカー/ランナーにもたらすインパクトや既存のレインウェアとの比較や使い分け、そして変容するレイヤリングの実例などについてご意見を伺った。手前味噌ながら非常に興味深い内容になっているので、ぜひお付き合い願いたい。

『#3 土屋智哉 x 桑原慶 x 山と道ラボ鼎談』に続く。

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