現在、日本各地に台湾を加えた8つの拠点で活動を行なっている山と道HLCでは、ULハイキングが繋ぐコミュニティ作りを目指して日々、様々なプログラムを行なっています。このHLC Reportでは、そんな活動の内容をシェアしていきます。
今回は、HLC鎌倉で行ったPRACTICEプログラム『浅間・四阿 火山帯トレイル3泊4日ULハイキング』の模様を、HLC鎌倉アンバサダーの苑田と参加者の皆さんに、リレー形式でレポートしてもらいました。
HLCカテゴリーの中でも1年間の集大成的な立ち位置となるPRACTICE。今年は、1日目の観光や地元の食を楽しむ雰囲気から一転、2日目からはPRACTICEの名にふさわしいハードな行程が展開されていきました。雨に濡れ、藪を漕ぎ、時にはルートをアレンジしながら、チーム一丸となって挑んだ浅間・四阿 火山帯トレイル。無事にチーム全員で歩き切ることはできたのでしょうか。
同志と一緒にULハイキングの経験値を高めたいと興味を持たれた方は、ぜひお近くのHLCの門を叩いてみてくださいね。
はじめに
苑田大士(HLC鎌倉アンバサダー)

2025年度のHLC鎌倉では、プログラムの集大成として、ULハイカーとしての自立を目指すPRACTICE*プログラムを2本計画しました。そのひとつが、10月10日〜13日に行った『浅間・四阿 火山帯トレイル3泊4日ULハイキング』。群馬・長野県境に広がる火山帯を代表するふたつの名峰、浅間山と四阿山(あずまやさん)を、自分の足で繋いで歩く、92kmのHLC鎌倉オリジナルルートに挑戦しました。
*PRACTICEとは
過去に山と道HLCへの参加経験のある自立したハイカーを対象とし、アンバサダーと参加者がひとつのチームとなってクリエイティブなULハイキングを実践します。年間の集大成的な位置付けのプログラムで、それぞれのULハイカーとしての経験を活かしてルートや装備などを探求し、ULハイキングの可能性にチャレンジします。
今回は事前のオンラインブリーフィングで、参加者のみんなと一緒にテーマを話し合い、満場一致で「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」に決定。毎日キャンプ場泊で補給もでき、時間が合えば入浴も可能という、ハードな行程とは裏腹に“豊かさ”のある山行となるはずだと分かっていたからこそ、荷物も軽く、身も心も軽やかに歩くことをテーマにしました。
Rich:キャンプ場や直売所での補給を通じた「豊かさ」
Fast:軽量な道具だからこそ「長く速く遠くへ」
Light:ULスタイルで「軽やかに歩く」
Fun & Family:助け合いながら「楽しく最後まで歩き切る」
また今回は新たな試みとして、参加者のみんなに日替わりでリーダーと記録係を担当してもらいました。リーダーは先頭を歩いてルート判断や休憩、エスケープなどの決定を担い、記録係は写真撮影とこのレポートの執筆を担当します。
それぞれの視点と個性が光る、「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」なレポートを、どうぞお楽しみください。

行程
【1日目】軽井沢駅 10:00 → 竜返しの滝 12:00 → 白糸の滝 13:00 → 峰の茶屋 15:00 → ASAMA Park Field(浅間園オートキャンプ場) 16:00 (行動時間:約6時間)
【2日目】ASAMA Park Field(浅間園オートキャンプ場) 4:00 → 鋸岳(バカ尾根) 9:30 → 黒斑山 11:00 → 高峰高原ビジターセンター 12:00 → 高峰温泉 13:00 → 湯の丸キャンプ場 15:00 (行動時間:約11時間)
【3日目】湯の丸キャンプ場 4:00 → 湯ノ丸山 5:00 → 角間峠 6:00 → 大塚山 9:30 → つまごいパノラマライン(海野観光農園) 11:30 → バラギ高原キャンプ場 14:00 (行動時間:約10時間)
【4日目】バラギ高原キャンプ場 5:00 → 浦倉山 7:30 → 四阿山 9:30 → 根子岳 11:00 → 菅平高原ダボス バス停 13:00 (行動時間:約8時間)
DAY1 軽井沢駅〜白糸の滝〜峰の茶屋〜ASAMA Park Field
書いた人:おだじー

おだじー:山の装備をちょっとずつ増やしてワクワクしながらバックパックに詰めた荷物は20kg。初のテント泊登山は雲取山! 結果は登りも下りもヘロッヘロ。帰路ですっ転び膝から愉快な音が鳴り出し、こりゃいかん!とHLC北関東の冬山ワークショップの門を叩いて早4年。今じゃノリでPRACTICEを申し込み、行くたびに後悔しながら限界突破してるのに、気付いたらまた参加のループにはまっている。特技:食料過積載
HLC鎌倉のPRACTICE参加は今回で3回目。他地域のHLCにも参加していて、最近参加したHLC北陸のPRACTICEでは、食料不足が怖すぎてベースウェイトをどうにか削った分を凌駕した食料を持ち込み、それが原因で何かしら失敗している。今回は参加者のみなさんに配る出張土産も兼ねて干し芋祭りにしてみたが、結果はいかに…。
初日は軽井沢駅に集合。初めましてのカッキー&たかっしーさん、HLC北陸のPRACTICEぶりのTK先輩&こみやん、そして我らの兄貴おーじ(苑田)さんと集合。旅の要のリーダー&記録係は、毎日ジャンケンで決めることに。この日のリーダーは、たかっしーさんに決定。

左からカッキー、こみやん、たかっしーさん、TK先輩。
この日は浅間園オートキャンプ場を目指して23kmほど歩く予定で、日中の気温は14℃、晴れ。歩くにはとても良い気候だった。「ギアリスト警察がいたら取締りにあうね」と冗談を言いながら、こみやん持参のお助けアイテム(小型アクションカメラ DJI Osmo Nano)による元気な頃の集合写真を撮って9:55に出発。「ド平日の朝から観光地をただ歩くだけなんて、すんごい贅沢だね〜」なんて言いながら歩く。
集合場所に早く着いたTK先輩は、今日の行動食と夜食を散策がてら調達済みで、道中よさげなパン屋情報を教えてくれたり、相変わらずの安心感である。
本日のリーダーのたかっしーさんは、オンラインブリーフィングの時からその片鱗があったが下調べの鬼で、道中のトイレスポットだけじゃなく、散策や補給ポイントを書き込んだ最強マップを片手にみんなをグイグイ引っ張っていく。

リーダー・たかっしーさんが先頭を切る

ロードと林道を交互にズンズン歩く。
「今日はロードだけ」と余裕をかましている私は、食の誘惑・軽井沢ロードの目に入るすべての食に目移り。見つけては立ち寄り、脱線の共犯者を集めようとしていたところ、リーダー・たかっしーさんによる行程終盤のアップルパイ補給情報にまんまと手懐けられるのであった。


お昼近くということで、立ち寄った店で各自好きなものを頬張る。

白糸の滝に到着。
よく考えたら、いつものPRACTICEらしからぬ雰囲気はあるが(普段は初日からゴリゴリ山歩き!だからかも?)、今回の旅のコンセプトである「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」に忠実に活動していて、とても楽しい。白糸の滝でプチ観光をしたりと、スタート時に2日目以降のハードな行程に抱いていた不安は、この時には消え去っていた。

数時間前に初めまして同士だったなんて思えない感じで、わいわいと写真を撮りながら歩いてると、本日のメインイベントと言っても過言じゃない、アップルパイが売っている産地直売所に到着。旬の野菜や果物が直売されていて、みんなお買い物モードに(特に私が)。アップルパイと各々好きなものを買い込み、店先で実食!

歩いてきた体に染みる優しい味のアップルパイ!
今日はここをゴールにしてもいいくらいに大変おいしかった。店先で歓喜の声を上げる一同に、お店の方から差し入れの飴を頂く。この旅では欠かせない配給物資となった。

「コーヒー飲みたいなー」って話してたら、「コーヒーはないけどこれで」と差し入れしてくれた「たべる珈琲」。
「補給で荷物が増えた」と言いながらも元気になった一同は、別荘地帯を抜け、長い長い上り坂を登り、本日の幕営地ASAMA Park Fieldに到着。

キャンプ地到着! それぞれの個性がでるMINI2パッキング。
貸切状態のキャンプ場に生ビールで乾杯して、お互いのテントへのお宅訪問はそこそこに、焚き火を開始。火起こしのたかっしーさんと、起こした火をことごとく消してしまう火消しのカッキーというコンビが誕生。翌日は暴風雨に凍えながら歩くなんて、この時は微塵も思わず、食べすぎてぱんぱんに膨れたお腹を撫でつつ、焚き火をつまみに酒を呑み、幸せに初日が終わった。

無事に火を起こすことに成功!
最後に、今回の山行に持って行って良かったアイテムをふたつ紹介。ひとつ目はActive Pullover。当初はダウンを持って行こうかと思っていたが、事前のギアチェックを経てレンタルしてみることに。日暮れすぎのご飯の時や、就寝時のブーストに大活躍だった。就寝時の気温が5℃前後でビビってたけど、寒さを感じずに快眠できた。
ふたつ目はLight Alpha Sleeves。持ってはいたけど、すぐ暑くなるからあまり使ってこなかったコイツ。今回、曇りがちで気温が高くなかったので、満を持して4日目で大活躍。長袖を着るには…と躊躇する秋の時期に使いやすいのか! と、大発見だった。
DAY2 ASAMA Park Field〜鋸岳〜トーミの頭〜高峰高原ビジターセンター〜湯の丸キャンプ場
書いた人:TK

TK:ブラックな勤め先の富士登山社員旅行で、自然の中を登り歩くことの気持ちよさと、その後に飲むビールのうまさを体感。以降、テント泊などを楽しんでいたが、山と道という変わった名前のガレージメーカーのバックパック、MINI購入をきっかけに、ULハイキングというカルチャーと出合い、これまで自身がウルトラヘビーで歩いていたことを知る。体力が落ちてきたこの頃は、軽やかに歩けるULからますます抜け出せなくなっている。
HLC鎌倉PRACTICEへの参加は、今回で3回目だ。初めて参加した2022年は諸事情で途中離脱。2023年は完走できたものの、自分だけトレイルの一部をショートカットしたのが心残りだった。2024年は、行程的に完走は難しそうだったので見送り。そして今回、2年ぶりに参加できた!
HLC鎌倉PRACTICEは、自分の限界や経験値を少し広げてくれる、つらさも楽しさもあるチャレンジの機会だ。
2日目は、3泊4日のなかで最も長い距離である30kmを歩き、2,000mと最も獲得標高が高い。しかも雨予報という、まさにチャレンジングな1日となった!

出発前の朝礼で本日のルートを確認。
まずは浅間山の外輪、鋸岳への取り付きを目指し、あくびを連発しながらみんなでロードを歩く。今回は、キャンプ地がすべてオートキャンプ場のため、ロードの割合が高いのも特徴だ。
初日に区画整理された別荘地で道に迷ったこともあり、2日目のリーダーであるこみやんさんが、慎重にマップを見ながらチームを牽引していく。

まだ暗いうちにヘッドライトをつけて出発。

しばらく歩くと、雨が降り始めた。まだ天気予報の雨の時間帯ではないため、「すぐに止むだろう」と願望込みで話していたが、願いはだいたい裏切られるものだ(笑)。
止む瞬間もあったがずっと降り続き、雨のロードを3時間ほど歩いて、登山口であるしゃくなげ園に到着した。短い休憩で水分や行動食をとり、気合を入れて再び進む。鋸岳までは破線ルートなので、本日一番の核心部だ!

鋸岳を目指して出発!
20分ほど進むと、藪漕ぎが始まった。ロードで子グマらしき鳴き声を聞いていたので、クマとの遭遇にビビりながら、みんなで声を上げ、ホイッスルを吹きながら濡れた藪をかき分けていく。

クマに注意しながら薮の中を進んでいく。
藪を抜け、森林限界を超えると、雨風にさらされた急登が続く。それぞれのペースで少しずつ標高を上げていき、ようやく鋸岳の頂上に着いた。


急登を登って頂上へ。
みんなの笑顔が弾ける! しかし、濡れた体に風が直撃して寒い‼︎ サッとみんなで写真を撮り、少し休憩して先を急ぐ。この先にある高峰高原ビジターセンターで早く暖をとりたい!

視界は不良だけど笑顔のみんな!
稜線の各山頂はほぼ素通りで「急げ、急げ」と歩き、ビジターセンターに到着。さらに嬉しいことに、お仕事で参加が遅れていたヒデさん(もうひとりのHLC鎌倉アンバサダー)、ツノダさん(山と道鎌倉スタッフ)が待っていた!
合流を喜びながら、ビジターセンターのカフェで全員がカレーをかき込み、ストーブで濡れたウェアや体を乾かす。ベースレイヤーのChemical B Pocket T-shirtはすぐに乾いた。かなり体が冷えていてテント泊は危険かもしれないと思っていたので、本当に助かった!

高峰高原ビジターセンターのカレーで回復。
時刻は12時半過ぎ。落ち着いたところで、全員でこの後の行程を改めて相談する。今日のゴールは湯の丸キャンプ場。なんと、キャンプ場を管理しているホテルで16時まで日帰り入浴ができるのだ!
元々予定していたトレイルを進むか、ショートカットするか…。リーダーを中心に相談した結果、ほとんど迷うことなくショートカットを選択した。無理なチャレンジをしないことも大切だ。
お世話になったビジターセンターを出発し、トレイルに入らず林道を進む。雨も止み、お風呂を目指すとなると、みんなが自然と早足になるものだ(笑)。

お風呂が楽しみな一同。
2時間弱歩き、無事にホテルに到着。お風呂でしっかり温まることができた! その後は、キャンプ場の竈で焚いた火を囲み、ビール片手にワイワイしながら明日以降へのエネルギーをチャージした。

ハードな2日目お疲れ様!
この3泊4日の山行でテーマに掲げた「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」。特に「Rich」が特徴的だろう。ロードの途中やオートキャンプ場での補給ができることが「Rich」なのだと考えていたが、振り返ってみると、厳しさとご褒美という「メリハリから得られる充足感」、チームのみんなと「チャレンジすることで得られた一体感」、そして「3日目のなかなかないしんどい経験」も、とても「Rich」だった。
そして、今回一緒に歩いたカッキーさん、たかっしーさん、こみやんさん、おだじーさんと、絶妙な距離感で見守り、接してくれたおーじさん、ヒデさん、ツノダさん、一緒に歩けて楽しかったです。本当にありがとうございました!
DAY3 湯の丸キャンプ場〜湯ノ丸山〜つまごいパノラマライン〜バラギ高原キャンプ場
書いた人:カッキー

カッキー:大学の頃に両親と少し登山に行ったことはあったが、20年の時を経て、たまたま歩いた山があまりに素敵で、そこからどハマり。加えてULという思想に触れて、ズブズブの沼にハマる。最近はトレランに、クライミングに、ハイキングに…と幅を広げすぎて何が何だか。いまはとにかく新しいことにチャレンジしたい50歳。
3日目の天候は晴れ。暑くなりそうな天気予報。霧が立ち込めるなか、キャンプ場を朝4時に出発。3泊4日の旅の核心部だった2日目を終えた3日目ということで、距離は長いが、なんとかなるだろう。
自分は今回の参加者の中でも最年長。しかしながら登山暦は3年目のまだまだ初心者。他のメンバーは圧倒的に自分よりも歴が長く、そして若い。はたして、ついていけるのだろうか。少し戸惑いつつ、初日を迎えたわけである。参加するからには、思いっきり楽しみたいし、なんとかついていきたい。そういう想いで臨んだ旅だ。
まず目指すは湯ノ丸山。キャンプ場から一気に800mほど高度を上げていく。夜明け前の湯ノ丸山からの景色は素晴らしく、3日目にして、雲にかかった前掛山、そして浅間山を拝むことができた。予想通り順調なスタート。

湯ノ丸山山頂からの素晴らしい景色。
次は、破線ルートを辿り、四阿山を目指す。ここからは「少し藪漕ぎがあるかもね」と、TKさんから事前情報を聞いていた。

元々のルートの藪漕ぎへチャレンジ。
計画していたルートは少し藪が高く、別のルートから攻めようということで、通常の登山道を登り、アタックを試みる。まーまー、入りやすそうだ。

本日のリーダー・おだじーを先頭に進む。
最初のうちは楽しく、「冒険っぽいよね」などと言いながら進んでいくうちに…。
うん? 様子がおかしいぞ。ルートが全くない。いつからか人が全く入っていないルートを進んでいたようで、クマザサは背丈ほどにどんどん伸びてくる。
ここからが地獄の始まりだった。さすがにこれは…ということで、おだじーに代わり、力自慢のたかっしー*が先頭に立つ。
*ここでレポートには参加していない5人目の参加者を紹介させてください。

たかっしー:海・川・山での外遊びが大好きで、アドベンチャーレースに憧れるわんぱくな49歳ヨットマン。2019年頃から健康維持で始めたハイキングが楽しくなり、三浦アルプスや丹沢から活動範囲を徐々に広げ、昨年秋にはソロであまとみトレイル(93km)を3泊4日のスルーハイクで完走。その際の装備について、山と道鎌倉スタッフのおでん君から目から鱗のアドバイスをもらい、一気にULハイキングの虜に。HLC鎌倉では『ULハイキング入門講座』、『丹沢1泊2日ワークショップ』に参加しつつ、今年に入り雪山デビューや北アルプス・南アルプス山行を経て、今回のPRACTICEに挑戦。座右の銘:やる時はやる

背丈ほどの藪を慎重に進んでいくが、あまりにルートが見えないようで、おーじさんが先頭を替わり、その後を自分が追う。クマザサの弾力性は強く、旅慣れたおーじさんも跳ね返されるのを見て、「これはやばいな」と少し緊張感が走る。
おーじさんに代わって、次に自分が先頭に立つ。ガシガシ進むが、藪漕ぎに夢中になっているとルートから外れそうになる。後方から「カッキーさん、稜線に戻れ」とおーじさんの指示が飛ぶ。もうみんな必死。一方でチームが一丸となっていく。
次にこみやんが先頭に立つ。そしてTKさんがバックアップに入る。「枝が下に落ちてる」「段差がある」「枝が飛び出ている」と後ろへ伝達しながら、少しでも前へ進む。
全員がクタクタ。かれこれ3時間は藪の中。しかし、2kmしか進んでいない。そしてついに、ルート通りに進んでいった先に、突如として手付かずの美しい森が広がった。


お互いに健闘を讃えあう。
あの藪を突破した者しか見れない森だ。苔とキノコが生い茂り、落ち葉がひらひらと舞い落ち、そして合間に木漏れ日が森を照らす。山の良いところが全部詰まった森だった。
大幅にタイムロスしたので、計画通りに進めば夜になり危険。「今日はエスケープしよう」とおーじさんがチームに呼びかける。心の中で助かったと思う反面、少し残念でもあるが致し方なし。当初は湯ノ丸山からから鳥居峠を経由して四阿山に行く予定だったが、トレイルを諦めて巻いていくことに。ここから、今日の目的であるバラギ高原キャンプ場までの長い長いロード歩きが始まる。

ここからは長いロード歩き。
これはこれで良い。トマトを買ったり、途中、愛妻の丘という謎の施設に立ち寄ったりして、キャンプ場を目指す。

トマトで水分補給。
キャンプ場が見えてきた時の嬉しかったこと! 美しい芝生が広がり、隣の施設の売店では、ビールやつまみ、なんでもある。少し近くには温泉施設も。

気持ちの良い芝生にテントを張る。
今回のテーマは、事前のブリーフィングで決めた 「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」。 タイトルは少々長いが、テーマの通りすべてが詰め込まれたモリモリの3日目だった。同時に、自分の成長を感じる1日でもあった。

ビールが体に沁みる。
そして何よりも、心配性の自分は普段10kgくらいを背負って歩くスタイル。何かとモノが多め。しかし今回は、レンタルで借りたMINI2でベースウエイト4.5kgに収めた恩恵は大きかった。
そして、こいつがなかなかに良かった。日を追うごとに減る荷物にも対応し、成長するバックパックといったところ。まさにULハイカーのためのバックパックだなと思った。
ULだからこそ快適に歩け、行動範囲・視野も広がり、荷物と一体となって、そして自然と一体となれるスタイルを楽しめた。結局、使わない荷物はない、というくらい毎日無駄なく道具を使えたのは嬉しかった。
今回の旅を通じて感じたことは、いくつになっても知らない世界はまだあり、まだまだ成長できるということ。残り1日。いよいよ旅も終わる。

明日は自分がリーダーだということで、地図を見直す。さぁ、明日はどんな旅になるだろうか。新しい自分を発見できるだろうか。そう考えながら、テントの中に吊るしたライトを消す。
DAY4 バラギ高原キャンプ場〜浦倉山〜四阿山〜根子岳〜菅平高原ダボス バス停
書いた人:こみやん

こみやん:会社の人との丹沢付近での日帰り登山や、高校の友達に連れて行ってもらった北アルプスをきっかけに、20代後半で登山にハマる。オートキャンプも趣味にしていたが、いつしかテントを担いで泊まりの登山がデフォルトに。軽量化に勤しむなか、ULというカルチャーに出会い、山と道に出会い、そしてHLCでUL仲間にも出会えた。物欲が強く、ULギア収集に余念がない。月1程度で、山を楽しんでいるつもりだが、なぜか毎週山に登ってると思われている。なので周りには「山に帰らなければいけないので仕方ない」と言っている。
最終日になり、参加者のコンディションはまちまちである。まだ元気な者もいれば、ところどころ疲れが残っている者もいる。バラキ高原キャンプ場から、まずは浦倉山を目指していく。
本日のリーダーであるカッキーさんは気合が入り、最初のロードからややハイペースで飛ばしていく。みんなも負けじと付いていく。

ロード歩きからスタート。
初日の軽井沢街ハイキングから一転し、2日目は雨の浅間山、3日目は藪漕ぎからの灼熱ロングロードを経て、参加者全員の表情に逞しさが増したと感じた。
スキー場の傍にある登山口に到着し、いざ登り始める。ゆるやかな登りが続き、リーダーは相変わらずややハイペースを維持する。

その結果、男性参加者陣とおだじー+山と道スタッフの二手に分かれる。ところどころで動物の足跡や獣臭があったため、声を出したりホイッスルを吹いて、人間の存在を知らせながら進む。途中、掛け声とホイッスルのリズムに乗って楽しく進めたが、笹薮から怪しげな音が聞こえたり、動物の糞を見かけたりすると緊張感が漂った。

四阿山山頂へ向かう分岐で、その先のルートに関する作戦会議を行う。当初予定していた登り返しを伴う根子岳へ向かうか、全体的に下り基調のやや短縮ルートにするかで意見が分かれ、その場では結論を出さずに、とりあえず山頂へ向かった。
山頂手前では明らかに獣臭が強くなり警戒モードに入る。笹藪から何かが下りるような音がした…。クマであった可能性も考えられる。
その後、無事に四阿山へ登頂。霧のため展望はなし。寒いが、やや蒸し暑さも感じる。そんな時はActive Pullover。今回は就寝着メインで使っていたが、保温着として着用した。時に行動着にもなる便利なアクティブインサレーションである。

山頂でしばしの休憩。おだじーの出張土産、干し芋でエネルギー補給。
下山ルートを相談した結果、ややペースを落とす方針とし、当初の予定どおり登り返しのある根子岳経由のルートに決定する。

根子岳へ向かう。

慎重に尾根を進む。
その後は少し雲が晴れ、紅葉した四阿山の尾根を背に、全員無事に根子岳へ登頂。本ルート最後の頂を踏み、山頂の鐘を全員で鳴らして大いに喜んだ。

根子岳へ登頂! 嬉しくて鐘を鳴らす。
最後の下山はみんな大幅にペースが上がり、このまま旅が終わってしまう未練も感じないほど颯爽と下りていくのであった。脱落者は出ず、無事ゴールの菅平高原ダボスのバス停まで、全員が完走した。

最後は軽快に下っていった。
初対面から始まり、3泊4日を共にした仲間であるため、初日に比べて会話も増え、時に支え合い、刺激し合い、非常に良いチームワーク—いわば今回のテーマのひとつである「Family」になった感覚である。

全員で無事に完走。お疲れ様でした!
正直、天候は良好とは言えず展望も乏しかった。雨天下の厳しい登山であり、ソロでは選ばないような行程であったが、振り返れば厳しさより楽しさが勝ったと強く感じる。これはこのメンバーであったからこそだと、強く実感した。
終わりに
苑田大士(HLC鎌倉アンバサダー)

実は、HLC鎌倉のPRACTICEで全員が完歩したのは今回が初めてでした。初日はゆるやかなスタートでしたが、2日目以降は雨、冷え込み、藪漕ぎ、ぬかるみと、決して楽な行程ではなかったはずです。
それでも最後まで全員で歩き切れたのは、「Rich, Fast, Light & F(Fun & Family)」というみんなで決めたテーマが、道中ずっと心の中にあったからかもしれません。それによって最初から一体感が生まれ、さらに日替わりリーダーの存在が、メンバー全員の自立心を引き出したと感じます。相談しながら助け合い、それぞれが責任感を持って動く姿が、とても印象的でした。
今回は途中でルート変更もあり、当初とは異なる道を歩くことにもなりました。とはいえ、総距離91.5km・累積標高4,375mの簡単ではないこのルートを全員無事に踏破することができました。
そして、参加者同士のつながりがプログラム後の今もなお続いていること。ハイカー同士のコミュニティが育まれたことに、僕は何より喜びを感じています。おだじー、TK、カッキー、こみやん、たかっしー、ありがとうございました!





















