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PRODUCT FOCUS 座談会

#7 Wind Zip Hoodyをどう使う?

7年をかけた開発の秘話と、他製品との違いを徹底討論
2026.08.25
PRODUCT FOCUS 座談会

#7 Wind Zip Hoodyをどう使う?

7年をかけた開発の秘話と、他製品との違いを徹底討論
2026.08.25

毎月、山と道がいま伝えたい製品を取り上げ、その魅力と使い方をじっくり掘り下げていくPRODUCT FOCUS。その起点にあるのはスタッフたちの対話であり、その最初の一歩がこの座談会です。

今回は、今年発売の新製品Wind Zip Hoodyについて、開発を担当した代表の夏目彰と開発R&Dの渡部隆宏、山と道鎌倉店長の苑田大士と山と道HLCアンバサダーの前原秀則が語り合いました。

PRODUCT FOCUSは、この座談会のような山と道JOURNAL記事や山と道鎌倉店頭での展示、そしてSNS等を通じて情報発信しています。気になる製品があったら、ぜひ店頭で実際に手に取ってみてください。

左から夏目彰、苑田大士、前原秀則、渡部隆宏

Wind Zip Hoody
68g (Size M)
前面は風を防ぎ、背面と側面は通気性が高まるよう3種類の生地を組み合わせ、極薄生地ながら肌に張り付きにくい生地感、腕まくりしやすくサムホールにもなる袖のディテールなど、極力脱ぎ着を意識せずにハイキングそのものに没頭できる超軽量ウインドシェル。

7年かかった開発

夏目 今日はいろんな話が聞けそうだなって楽しみにしてます。簡単に自己紹介から始めましょうか。僕が代表の夏目です。

渡部 開発担当の渡部です。今回だと夏目さんから「ウインドシェルのいいのがないね」という話があり、そこから素材探しが始まって、ずっと伴走してる感じでしたね。

前原 コミュニケーション&セールスグループリーダーで、あと山と道HLCアンバサダーの前原です。

苑田 「おーじ」こと苑田です。山と道鎌倉店長と山と道HLCアンバサダーをやっています。

夏目 じゃあ、まずWind Zip Hoodyの最初の印象を前原君とおーじ君から聞きたいなと思うんだけど、開発してるのはいつから知ってたんだっけ?

前原 それまでも「ウインドシェルを開発しているらしい」ということは聞いてたんですけど、2年前に実際に開発サンプルを見ました。

苑田 僕は2019年ぐらいから夏目さんがウインドシェルを作ろうと言ってたんじゃないかなっていう記憶があるんですけど、それがやっとこう形に見えてきたのが2年前ぐらいかなっていう気がしてます。

夏目 実際、開発がスタートしたのはUL Shirtができたと同時に動き出した記憶があるんで、2019年ですよね。

渡部 そうですね。Light Alpha Vest/Jacketとかに使っているパーテックス・カンタムエアみたいなハリがある生地でシェルを作るイメージは結構前からありましたね。

夏目 Wind Zip Hoodyを作る間にいろんなリサーチをしてきた中から、それこそLight Alpha Vest/Jacketの生地とか、いろんな生地が発掘されて選ばれたりしてた。

渡部 あの頃は薄くてハリがあって毛玉が出にくい生地を色々集めてて、超軽量生地のサンプルのストックが大量にありましたね。

苑田 実際、試作ってどれぐらい作ったんすか。

夏目 7年経っていて記憶がないけど、かなり作ったっていう印象があるよね。

渡部 覚えてるのが、最初の方に全部高通気の生地で作った試作がすごく寒くて、その後どうするか停滞したことがありました。

夏目 いっぱい試してきて、ある程度出来上がってきた2年前ぐらいに発売しようと動いてたので、みんなも知っていたんだと思う。だけど、色々考えた結果販売に至らず、翌年もまた発売しようとしたけど、また色々考えた挙げ句やっぱり中止して、ようやく今年発売にたどり着いた。その間に、撥水剤のC6 DWRからC0 DWRへの移行の問題(※C6 DWRには自然環境の中で分解されにくい有機フッ素化合物が微量ながら含まれており、現在、有機フッ素化合物を使用しないC0 DWRへの移行が世界的に進んでいる)もあったし、より軽量にしたいとか、通気度が安定しないとか、課題が色々あって、それを1個1個クリアしていったので、時間がかかってしまった。

渡部 良い生地があって、「もうこれで行くぞ!」ってなった時に、同じメーカーさんからもっと良さそうな生地が出てくるんです。それを試さないと結論出ないな、っていうのも重なりましたね。

開発には膨大な生地と製品の試作が行われた。

それぞれのファーストインプレッション

前原 僕はウインドシェルはUL Shirtでいいじゃないかと考えていたんで、必要性がどんだけあるのかなって思ったんです。でも、実際使ってみると、UL Shirtだとフロントのボタン部分に隙間が空いてるんで、強風時にはやっぱり風を感じるんですけど、Wind Zip Hoodyはジッパーでしっかり塞がれてるんで、比べても防風性はすごく高いと思います。軽量シェルっていうくくりだったら一緒かもしれないけど、やっぱり全然別物という印象です。

夏目 うん、そうだよね。「UL Shirtでいいんじゃないか」っていうのも、僕もずっと思っていて。出す意味が明確にないと出す意味がないし、ただ軽いだけで果たして自分がそれ選ぶんだろうかって思った時に、「これだとやっぱりUL Shirtを選ぶな」ってことが結構あったんだよね。なので、ちゃんとUL Shirtと差別化できるものにしないといけないなと思って、ずっと開発してました。で、実際使ってみて、他にどんな印象を受けた?

前原 実際使うと、やっぱりUL Shirtより軽さを感じます。今まではUL Shirtを一番軽いウインドシェルとして使っていたんですけど、そこが変わったなって。UL ShirtはUL Shirtなりにいろんなバランスがいいっていうメリットはあるんですけど、より軽かったり、通気のコントロールができたりっていう意味では、Wind Zip Hoodyのメリットや強さを感じました。

Color: Taupe

苑田 初めに感じてたのは、前面と背面の生地の加工が違うじゃないですか。そこがどれくらい違うのかっていう期待と興味がありました。僕も今までは前原君が言うようにUL ShirtもしくはUL All-weatherシリーズをウインドシェルとして使っていたんですけど、そこまでウインドシェルを使っていなかった自分がどういった感触を得られるのかなって。で、使ってみた感じで言うと、防風性を高める加工を施した前面と腕の外側の生地は、逆に僕は蒸れを感じるぐらい風をシャットダウンするなっていう感じを受けました。

夏目 ふたりはどんな山で使ったの?

苑田 僕は今年の3月に、HLC鎌倉のプログラムで鎌倉から高尾まで歩いた時に使ったんですけど、冬の低山ではすごく調子が良かった。蒸れを感じにくかったし、ヌケもあるし、暑くなったら袖をめくり上げるのも簡単だし、フロントもジッパーだから体温調整もしやすい。なのでずっと着続けられました。まだ寒かったんですけど、稜線で風が吹いても本当に風をシャットダウンしてくれるなって。

夏目 何℃ぐらいだったか覚えてる?

苑田 日中は15℃行かないくらいだったと思います。

夏目 他にも使ってる?

苑田 普通に鎌倉の山を走る時とかに使ってましたね。その後は普段もどんどん使っていたので、逆に暑く感じました。

苑田大士(おーじ)

鎌倉・源氏山でのランニングで着用する苑田。

夏目 渡部さんはどうですか。開発してたっていうのもあるけど。

渡部 割と周りのトレイルランナーを見ていると、ウインドシェルは全然着ないっていう人も結構いて、要は走る人にとっては暑いんですよね。特にアルファ(※アクティブインサレーション素材のポーラテック・アルファダイレクト)が出てからは寒い時はアルファって感じで、ウインドシェルはあんまり使わないって人が多いんですけど、僕は結構着る方で。というのは、あんまり走った時に汗をかかない方なので、アルファだとちょっと暑くなるときもあるから、従来のウインドシェルで事足りていたタイプではありますね。山と道のトレイルシャツとの違いで言うと、僕はフードが好きなので、「山と道からウインドシェルが出ればいいな」っていう思いが正直ありました。

夏目 ちなみにどこのウインドシェルを使用していたんですか?

渡部 パタゴニアのフーディニジャケットが多かった。なんでかというと、軽いウインドシェルってやっぱり生地が肌に張り付いてベタベタするんですよ。なので、ちょっとぐらい重くてもやっぱり生地にハリがある方がいいなって。フーディニだとカラーも素敵でハリもあるんで、手元に3〜4色あります。

夏目 で、実際に出来上がって使ってみて、印象はどうですか。

渡部 やっぱりハリがある生地で軽いものがそもそもあんまりないんですよ。まずそこはいいなっていうのと、腕まくりしやすいのはやっぱりいいですね。胴体は温めたいけど、ヒートアップする時って結局腕で張り付き感を感じるので、腕をまくれるだけでずっと着ていられる感じが全然違う。

苑田 それすごく感じました。

渡部 通気度の高い生地を使った背中とか脇からヌケていくっていうところまでは感じ取れてないんですけど、多分、生地にハリがあるから肌と密着しにくくて、換気性も高いと思うんですね。その辺は結構大きいのかなって気はします。あと、Active Pulloverの上に着たら、もう超あったかい。

夏目 通気の具合はどうでした?

渡部 一定以上、運動量が大きくなると、通気度が高くても排出量が追いつかなくて、そんなに感じなくなりますね。その中で、他のウインドシェルとか、あとレインをウインドシェル代わりにすることもありますけれど、僕は走ることが多いので、なかなかそれはできない。だから、ベストなレイヤリングがずっとないみたいな感じで、寒くなったら着て暑くなったら脱いでたんですけど、やっぱりWind Zip Hoodyは着続けられる幅が結構広いと思いますね。

渡部隆宏

フィールドでの使用感

夏目 特に印象に残っている使用場面はあります?

渡部 この半年ぐらいはKami Shirtと使い分けてたんですけど、直近のアメリカのレースにはWind Zip Hoodyを持っていきました。なんでかというと標高の平均が3,100m、最高4,000mとかすごく高い所で、風が強いだろうと思ってたら、当たりでしたね。昼は35℃くらい夜は体感0℃みたいな感じだったんですけど、Active PulloverにWind Zip Hoodyを重ねたら、夜も全然大丈夫。欧米のランナーって体温高いし動いてるからあんまり着替えてなかったんですけど、エイドで歯がガチガチ鳴ってたりしたんですよ。体力をそこで消費しちゃうので、ちゃんと適切にレイヤリングして動けたのはよかったです。暑かったり寒かったり過酷な状況だったんですけど、Active PulloverとWind Zip Hoodyは合わせても合計200gちょいじゃないですか。それで動けるってすごいなと。

夏目 じゃあ、風もある程度防いでくれて、ちゃんと換気も機能して、みたいな?

渡部 そうですね。夜は本当に0℃ぐらいで、風もめちゃくちゃ強かったです。

夏目 UL All-weather Jacketとかだと、そういう場面だとやっぱり換気が追いつかないかもね。

渡部 UL All-weather Jacketだとやっぱり蒸れてしまって、そうすると運動量を落とさないと暑くなっちゃうんですよ。その辺はすごく良いバランスでしたね。その状況だとKami Shirtだと寒かったと思うんで、今回は本当にWind Zip Hoodyで正解でした。

夏目 前原君は使ってみて印象的だった山とか体験ってありますか。

前原 がっつり使ったのは、去年の10月の群馬と長野の県境、浅間山あたりで、温度帯が5℃から25℃くらいまで、まあまあ幅があったんです。その中でロードを歩いたりトレイル入ったりを繰り返すみたいな感じだったんすけど、結構印象的だったのは、藪漕ぎで使用した時で。その時、結構もう日が昇って暑い中だったんですけど、胸から頭くらいまである笹藪の中で、痒くなるのは嫌だなと思って、全部ジップ閉めてフード被って、手もサムホールつけて、その気温の中歩いてたんですけど、あんまり汗をかかなかったんです。全部閉めてても快適さを感じたっていうのと、「生地が薄いけどこれでいけるんだ」っていう体感を得ました。

前原秀則

10月にフードをかぶりサムホールをした状態で藪漕ぎしても汗をかかなかったという前原。

夏目 他の普段使っている服だったら、もっと暑くなるだろうと思ったと。

前原 暑くなるだろうというのもあるし、あとはプロテクトしながらも通気して快適だったっていうのが結構印象的でした。

夏目 周りの人たちはどんな装備だったの?

前原 UL All-weather Jacketとかを着て汗だくの人もいれば、やっぱり暑かったんで、タンクトップとかTシャツが多かったですね。でも、その中でもその装備で歩いていけたのが、守備範囲が広いなと思いました。

苑田 僕はその時Kami Shirtを着てたんですよ、笹が濡れてて結構ぐしょぐしょになった記憶があるんですけど。その話で最近感じたのが、このWind Zip Hoodyって、UL Shirtよりも乾きが早いな、ということ。ナイロン100%でこの薄さだと、体温だけでもすぐ乾く。乾きは僕の体感だとUL Shirtより早い。北アルプスとかで多少雨降ってても行動負荷が高い時とかって、これで十分じゃないかって思ったりしました。

前原 結局レインシェルとか着ると、中で汗で濡れて、雨で濡れて、後で乾く、っていう感じですもんね。

苑田 だったら、その運動負荷をかけられるんだったら、もうこれで風も防げるし、運動もその分できるしって考えたら、これでもいけるんじゃないかって。そういう状況で1回使ってみたいなっていう想像はしました。

夏目 ちゃんと大丈夫な局面じゃないと、メーカーとしてはその使い方はお勧めできないけどね(笑)。

苑田 そうですね。でも、なんかそういうこともできるな、っていう(笑)。

夏目彰

Kami Shirtとの比較

夏目 乾きに関しては渡部さん、感じたことありますか。

渡部 絶対的な乾く早さや本当に芯まで濡れた時は、Kami Shirtの方が早いです。ただ、どっちも軽量なので早く乾くと思うんですけど、僕が使い分けるとしたら、霧が出てるとか湿度が高いとか、ちょっと濡れた状態で動く時はKami Shirt、風の怖さがある時はWind Zip Hoodyの方が安心、という印象ですね。ただ、両者で利用範囲が被る部分はあると思います。

夏目 安心して行動ができる気温であったりとか運動量であれば、Kami Shirtもいいかもしれない。だけど、より強風や悪天候ではWind Zip Hoodyを選ぶ、そういう選択?

渡部 そうですね。あとフードがあるっていうことを考えると、Wind Zip Hoodyの方がプロテクション力はやっぱり高いっすね。

夏目 季節要因とかもありますか。それともやっぱり天候?

渡部 天候ですかね。Kami Shirtは去年、ヨーロッパのレースで着た時、天気があんまり良くなくて昼はずっと霧が晴れないみたいな感じだったんですけど、その時はKami Shirtの方が快適でした。でも、本当に気温0℃とか、風速10m超えとかだと、やっぱりWind Zip Hoodyですかね。

夏目 前原君はこの製品を選ぶ、もしくは選ばない時ってどんなところで考える?

前原 環境の変化が大きそうな場合ですかね。プロテクションの話もずっと渡部さんから出てましたけど、そこの要素が大きそうな時とかはWind Zip Hoodyを持っていくかなと思います。Kami ShirtとかUL Shirtとの比較で言うと、自分はWind Zip Hoodyを標高が低い時に着てたんですけど、代謝がめっちゃいいんで、防風生地を使っている腕の外側がちょっと汗で張り付いちゃう時があって、そういう時は袖をまくったら対処はできるんですけど、やっぱりKami ShirtとかUL Shirtの方が、汗かいた時の腕の快適性は高かったんで、低い標高の時はシャツで過ごすかなっていう印象です。

夏目 なるほど、そうだよね。

苑田 それはもう僕も全く同意です。

前原 だから季節で言うと、夏で標高が低い場合はKami ShirtやUL Shirtで、標高が上がってきたらWind Zip Hoodyみたいな使い分けになるかな。

苑田 僕もやっぱり蒸れを感じてて、腕に張り付きを感じてしまうんで。まくれるんで、そこは解消できるんすけど、そうじゃない時もあるかもしれないし、っていうのを考えると、快適性優先でKami Shirtを選ぶかな。低山はKami Shirtを選ぶよっていうのは前から言ってるんですけど、高山になると、UL Shirt持っていくのかWind Zip Hoody持ってくのか、どっちにしようかなって。今年、北アルプスでWind Zip Hoodyを使いたいなって思ってて、まだ使えてないんですけど。

UL All-weatherシリーズとの比較

夏目 安全面で言うと、それこそUL All-weather Jacketとか他社の製品にも選択肢があるけどね。でもWind Zip HoodyやKami Shirtって、それより軽さや蒸れにくさみたいな快適性を重視した製品だから、安全面だけを基準に良し悪しは語れないと思うんだけど、その辺はどう思う?

前原 多分、雨が要素として入ってきたらUL All-weatherのシリーズがまた入ってくる感じで、やっぱりUL All-weatherシリーズの方がプロテクション力はWind Zip Hoodyより絶対高いので、そういう環境になると、どんどんそっちの方に移動していく、選択肢として入ってくる。

夏目 換気量はやっぱりWind Zip Hoodyの方が高いから、強風で寒かったりとか、高山で天候がどう変わるかわからないっていう場合であれば、プロテクションがよりあるUL All-weatherシリーズではなく、Wind Zip Hoodyを選ぶみたいな?

前原 そうですね。その中に雨の要素が入ってくるんだったらUL All-weatherシリーズも持っていきつつ、Wind Zip Hoodyは軽いんで両方持っていくとか、そういうのも全然あります。でも逆に、今まではレインのUL All-weather Jacketがあるからウインドシェルは持っていかない、みたいな感じだったんですけど、その中で、ウインドシェルっていう選択肢が単体でも出てきたな、って。

渡部 僕も、仮に通気素材で換気が良くても、なるべくレインは着たくないんですよね。やっぱりごついじゃないですか。ウインドシェルで動ければ一番いいなっていうのと、さっきの張り付きの話で言うと、どうしても肌に直接触れるとナイロン生地って汗が溜まるんですよね。Kami Shirtの場合はそこで吸湿してくれるから全然不快感がないので、その違いが人によって出てくるのかなって。でも、下に着るのがロングスリーブであれば全然気にならないですけど。その意味でもやっぱりちょっと寒い時、秋とか、標高ちょっと高めっていう時が使い分けになるかな。

Color: Dark olive

Wind Zip Hoodyが有効な場面

夏目 おーじ君は、この面子の中でもかなり装備をカリカリに削っている方じゃない。その中で、これは持っていく、持っていかないっていうのが、もうちょっと明確にあるような気がするんだけど。

苑田 僕も渡部さんが言うように、おそらく使う場面っていうのは秋以降の山になってくるな、っていう感じはしてます。実際のところ、本当は今年の夏に使いたいなと思ってるんですけど、おそらく蒸れるだろうし。でも、秋以降の高山だったり、冬の低山だったり、風が強い状況とかには本当に快適なんだろうなっていうイメージはついてますね。冬は、例えばActive Pulloverに重ねたりするといいんだろうな。

夏目 確かにね。

前原 UL Shirtを冬にウインドシェルとしてあえて使ってるスタッフとかもいるんで、そういう使い方もありそうですね。

夏目 でも、高山だと夏でも寒い時はすごく寒いじゃん。風が強くて天気が悪い時とか。

苑田 そういう場面にはすごい有効かもしれませんね。

夏目 さすがにカンカン照りの時は…。

苑田 きついと思う。夏山は逆に風吹いてほしい。

渡部 そういう状況だと、Kami Shirtはやっぱり汗かくと気化熱で涼しいじゃないですか。Wind Zip Hoodyの場合、やっぱり熱を1回溜めちゃうので暑いっていうのはあります。やっぱりその意味でもプロテクション側なんだと。

苑田 そう思いますね。でも、その中でも助けてくれる要素が、腕まくれるっていうところに結構あるのかな。フードもかぶれるっていうところは、そういうところかなって思います。

前原 逆に、僕は結構、使える幅が広いかなって思ってます。プロテクションだけじゃなくて、暑くても「全部前を開けちゃえばいいや」とか。暑い時期も自転車とか、いろんなシチュエーションで使ってたんですけど、「守備範囲が広いな」というのは、Wind Zip Hoodyの方が感じましたね。薄いから、汗かいてもあんまり気にならなかったり。

夏目 なんかわかる気がするけどね。 快適具合の軍配はKami ShirtやUL Shirtに上がるかもしれないけど、いろんな局面において使える感じではある。

渡部 Kami Shirtって、ちょっと変な道具ですからね。あれを議論に入れると、ちょっと(笑)。

夏目 ある種、ピーキーな道具だからね、Kami Shirtは。

渡部 ピーキーな山に行く人だとその良さがあるので、あんまり一般的な話にならない可能性が(笑)。

苑田 でも、この前2日間、グッダグダになるまでKami Shirtを着てたけど、本当に匂わなかったよ。あんだけ汗かいて何回も乾いて濡れてを繰り返しても、意外と臭わなかった。

渡部 僕、従来のウインドシェルも結構使ってたって言いましたけれども、いろんな道具が軽くなっていく中で、さすがに110グラムぐらいのシェルって結構ごついなって感じることもあって。ただ、軽いやつは肌に張り付くのが、その半分ぐらいの軽さで張り付かないウインドシェルが出てきたと。割と着れる範囲が広くて、普通に道具としていいなっていう部分と、僕はどっちかというとKami Shirtは、下山時のウェアを兼ねているので、山の状況によって持っていく/いかないというよりも、いつもバッグに入れてるんですよね。それを山でもずっと着ていると、下山した時に着たくない状態だったりすることもあるので、選択肢が増えたなって感じですね。

夏目 肌に張り付く試作もあったね。

渡部 例えば製品重量が60gとか50gとかの安くて超軽量な生地のものは、まず汗かく前から張り付いて。

前原 もう、静電気でくっついてんじゃね、くらいの感じですね。

渡部 薄い分、多分プロテクションに特化してると思うんですよ。不快だけど安全だよ、みたいな。ただ、そうなるとやっぱり着たくないですよね。

前原 僕はそもそも3つの生地を使い分けるっていう、ちょっと変態的なところにやっぱり惹かれてますね。前面は防風して背面は通気して抜けます、みたいな感じで、そこも生地を使い分けてる。そこまでこだわり抜いて作ってる、その執念が自分の中では変態的だなと思うんですけど、そこまでやるのはすごい好きだなって。道具として面白いし、機能としても面白いなって。今まで、UL All-weatherシリーズもかなり突き詰めてると思うんですけど、さらに突き詰められたものが出た印象がありますね。こだわりをビシビシ感じてます。

苑田  僕も「山と道がウインドシェルを作るんだったらこうだ」というこだわりがすごい感じられるところと、僕、実は基本的にフーディー好きじゃないんですよ。それは前のPRODUCT FOCUS座談会でも言ったんですけど、僕、首回りの肌が弱いんで、何かまとわりつくと肌荒れすることがあって。だから今、Kami Shirtをよく着てるのはそういう理由で。UL Shirtも、適度に防風性があって適度に通気もするから、「もう、こんないいものないじゃん」と。自分も運動負荷が高い方なので、ある程度ヌケてほしいんで。

気になった点・良かった点

夏目 じゃあ、気になった点と良かった点、たぶんそれぞれあると思うんで、そこを教えてもらえますか。

苑田 気になったのは、前面と腕の生地の防風性が高すぎるな、っていうこと。でもウインドシェルなんだから、やっぱり風をカットしないと意味ないじゃん、っていう話にはなってくると思うんですけど。ただ、もう少し通気があると、背面や脇下のヌケ感をもう少し感じられるんじゃないかな。あそこって98%ぐらい風をカットするって言ってませんでした? そこがすごいけど、自分の中では防ぎすぎだなって。良いところで言うと、僕、フーディーが嫌いだ嫌いだって言うけど、このWind Zip Hoodyはカラー(襟)が立つところ。まとわりつかないカラーになってるのが、僕はすごい気に入ってます。普通、柔らかくて薄い生地って、フードのカラーの部分がへたって肌に当たってくるんですよね。そういうのがない。なので汗が溜まりにくくて、その辺の快適さは、これはもうすごいなって思いましたね。

夏目 そこまで感じる?

苑田 感じます。僕はそこはシビア。

首元には少しハリのある生地を配置。極薄の生地だけでは潰れてしまう首元をこのハリが支え、裏面に防風の生地を使うことで、首元の防風性も保っている。

渡部 僕はウインドシェルっていうカテゴリー自体が好きなんで、そんなに気になるところはないんですけど、やっぱり通気度が高いって言っても、蒸れを感じる人はいるかもしれないな。トレイルランナーとかだとウインドシェル着ないって人がいるので。もしかしてベンチレーションで開けちゃう方が蒸れないっていう人もいるかもしれないですけど、僕個人はそれが気になるっていうのは別にないです。

前原 良い点は、やっぱり超軽量でありながら、通気がコントロールできることかな。昔は他社のも結構使ってきたけど、ウインドシェルって蒸れるから着る機会少なかったんですよね。Wind Zip Hoodyは快適に着用し続けられるシチュエーションが長いのがいい。あと軽いから仮に脱いで荷物になっても気にならないし。気になるのは、僕は冒頭にも話したんですけど、代謝がいいんで、腕の前面に汗をかく時があって、Wind Zip Hoodyはそこが通気しないんで、汗かいたら濡れて張り付いてしまうところが気になりますね。他の場所は汗かいても気にならないんですけど。張り付きそうならパッと袖をまくって対処はできるんですけど。

袖のスナップボタンを外すと袖を一気にまくり上げることができる。

開発に7年かかったわけ

夏目 逆にふたりから夏目と渡部への質問ってない?

前原 正直、ウインドシェルってあんまり必要ないんじゃないかって思ってた部分もあったんですけど、やっぱ必要なんだなと感じた開発の背景を知りたいです。

夏目 UL All-weatherシリーズってミドルレイヤーとしても使えるじゃない。でも、その使い方だと僕の場合だと、TシャツとUL All-weatherの間がなくなっちゃうんだよね。その間を埋めてくれたのがトレイルシャツだったりメリノだったりしたんだけど、より軽量で使えるミドルを作りたいと思った。だから必要じゃないってことは一切なかった。

渡部 僕がウインドシェル好きっていうのは、実はトレイル以上にランニングの時なんです。冬は走り始めが寒くてベースレイヤー1枚では走り出せないです。で、アルファダイレクトみたいなアクティブインサレーションを着ると最初からちょっと暑いんですけど。 だから、まずは冷たい風をブロックして体温が上がるのを待って、体温が上がったら暑くなるっていうのはあるんですけど、ウインドシェルは必需品だと僕は思っていて。 でも、ランニングならすぐ家に帰るから重くてもいいんです。でも、山行く道具って考えたら、やっぱ軽い方がいいなって。 あと、走って体が熱くなって汗かいたら脱ぐけど、運動量が下がると寒くなるのでまた着て、その一連の流れの中で、僕はウインドシェルを必要な道具と思っていて。ハイキングも必ず歩き出しが寒い局面があるから、その時に着るような位置付けで考えてます。

前原 さっき開発に7年かかったとおっしゃってましたけど「できた」って思った瞬間というか、製品として出せるなとなったポイントが知りたいです。

夏目 それは自分の中では明確にあって、自分はこれを選ばないってものは絶対出してはいけないんで、自分が最高だと思って選べるものができたら「できた」ってなる。その理由は他の製品との差別化と、あと防風と換気のバランスと、風を防ぎつつ湿気がヌケる機能性。その上で十分動ける、我慢できる張り付き感になったから、それが自分が『できた』っていう、製品として出すタイミングだと思いました。

渡部 7年も時間がかかったのは、素材開発に難航したところが大きくて。試作で出てた通気度の数字が、中量産の段階に進むと全然そのスペックが出なかったりとか、あるいは異なる問題が発生したりとか。通気度の違う生地を組み合わせてパッケージ化する時に、そもそも違う通気度を狙った範囲にきちんと収めること自体、難易度がすごい高いんですよね。特に軽い生地でやろうとすると難しい。試作でうまくいったのが量産では実現しないかもとか、その辺の確信を得るのに結構時間がかかりましたね。通気度をコーティングで調整しようとすると、本当に季節によってコーティングの乗り具合が変わってしまうんで、もうメーカーからも「コントロール外で調整できません」となり。じゃあ、コーティングじゃなくて、生地の織りの密度だけで仕上げれば比較的安定するのではという話になって。これも、最初からわかっててそうなったわけじゃなくて、試行錯誤の上でそうなりましたね。

夏目 コーティングの通気度がそこまで安定しないっていうのも、最初は知らなかったからね。トラブルから気づいて、調べる中でわかったことだった。

渡部 工業製品とかのイメージで言うと、「この規格でこの通気度プラマイ何%で上げてね」っていうのがあるかと思うんですけれど、実際には上がってきたものを測ってみないとわからないっていうのが、もう長年やっててわかってきましたね。

どんな人におすすめしたいか

夏目 最後に、Wind Zip Hoodyをどんな人におすすめしたいですか。

前原 個人的に、今って業界的にウインドシェル自体が下火になってると思ってて。だから初めて使う方も多いのかなと思うんですけど、「ウインドシェルっていらないよね」って思ってる人にこそ使ってほしいですね。今までのウインドシェルだと、風は防げるけど肌に張り付くとか、不快感の方が強いっていう印象もあったと思うんですけど、それがないので。これまで避けてた人とか、初めて使う人にも、体験としてはすごい変わるので、使ってほしいなと思います。

渡部 通気があるからアクティブな方向けみたいに思われるんですけど、実はもうちょっと対象が広いんじゃないかなって気がしています。本当にアクティブな人だと「暑い」って印象を持たれるかもしれないんですけど、そうじゃなくて、実は意外と普通のハイキングとかにちょうどいいんじゃないかなって。その意味では、広く使ってほしいですね。山と道ってどうしてもシャツとかメリノのフーディーとかのイメージがあって、それで長く歩ける場面ももちろんあると思うんですけれど、ウインドシェルは道具としてはクラシカルなので、受け継がれてきた機能性がやっぱりあって。

苑田 最近はトレイルシャツを着る人も多いけど、山を始めたばかりで、風で一気に体温を奪われる怖さをまだ知らない人には、1枚持っておいてほしい。ウインドシェルって、僕らが山を始めた頃は当たり前にあったじゃないですか。防風性と保温性は山の中でめちゃくちゃ大事。だから店頭でも、これまでの保温性に加えて、風に対応することの大事さを、これまで以上に伝えていきたいなと。

前原 ちなみに夏目さんはどうですか?

夏目 製品ページにもいっぱい書いたけど、やっぱりウルトラライトな道具を作るのが目的なんでね、やっぱりシンプルなもの、UL Shirtみたいに今までないものを作りたいと考えていた。その上で、フード付きで超軽量で色んな場面に対応できるものを目指したんだけど、やっぱり、ウルトラライトに、シンプルに長く歩きたい人に使ってほしいなと思いますね。今回は改めて、4人それぞれがやっぱり感じ方が違うってことが興味深いなと思っていて。みんなそれぞれ、体質とか使ってる環境とかでちょっとずつ違うし、でも繋がれるところは繋がる。そういったことが色々わかったのが面白かったです。お疲れ様でした。

(一同) お疲れ様です!

道具の選び方に、正解はひとつじゃない。この座談会は、山と道鎌倉ではPRODUCT FOCUSの展示やSTORE PROGRAMへと続いていきます。山と道鎌倉・京都で、お待ちしています。

参加スタッフプロフィール

夏目 彰|山と道 代表
2011年に妻とふたりで山と道をはじめる。今も新しいメーカーのあり方を模索中。

渡部隆宏|リサーチャー素材やアウトドア市場など各種のリサーチを担当。山は0泊2日くらいで長く歩くのが好き。たまにロードレースやトレイルランニングレースにも参加している。

苑田 大士(おーじ)|山と道鎌倉店長/山と道HLCアンバサダー
編集に農業に狩猟と多彩。ウルトラライトのスタイルで山を歩いて10年以上。

前原 秀則|山と道HLCアンバサダー/グループリーダー
元理学療法士。ニュージーランドの長いトレイルを歩いて、ウルトラライトハイキングに夢中になった人。